マズローの欲求理論⑧ 「B動機の生き方」

 従って、D動機の人生は、その目的を遂げることはできない。人生に自ら解決不可能な無理難題を課し、それが満たされない苦しみに追い立てられて必死に頑張り、そして、皮肉なことに、当初は願ってもいなかった生気を亡くしたいびつな廃墟と底知れない孤独を得るのだ。

 確かに、D動機は、生き抜く上で大切な動機である。実際のところ、我々は天使に囲まれて生きているわけではない。防衛力のない存在は、単なるお人よしのおばかさんとみなされるだろう。しかし、人は、D動機に支配される必要はない。恐怖や不安に支配されて逃げ惑うだけの人生を送る必要はないのだ。

 人には、D動機とは全く性質の異なる情熱を持っている。恐怖からではなく、喜びから生まれてくる情熱。騒がしく落ち着かない良く吠える子犬のような心からではなく、気高く穏やかで不動の理想から生きようとする態度。引きこもり、防衛し、攻撃する強い分離感を持った孤独ではなく、開き、受け入れ、思いやる強い親密さを持った一体感。外部の脅威に対する反応としての動機ではなく、自分自身の魂の本質からやってくる動機。それは、まさにBeing(実存)からやってくるB(実存)動機である。

 B動機は、D動機の過不足を気にしない。D動機が満足されていようがされていまいが、その意向に全く反応せずに淡々と機能することができる。D動機の騒々しい騒音に比べれば、はるかに小さく穏やかでそよ風のように静かであるけれども、その調べは常に流れている。そう、聴く耳を持ち、そっと耳を澄ませばだれでもどこでも聞こえてくる美しい呼び声なのだ。(続く)

 

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マズローの欲求理論⑤「B動機の経営」

マズローの欲求理論⑥「B動機の経営事例」

マズローの欲求理論⑦「D動機の生き方」

マズローの欲求理論⑧「B動機の生き方」

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マズローの欲求理論⑦ D動機の生き方

 D動機によるものとB動機によるものとでは、人生は大きく異なる。

 D動機による人生は、基本的に戦いである。死の恐怖から逃れることがテーマとなるので、自分に脅威を与えるあらゆるものとの戦い、勝ち抜くことが必要となるのである。

 人にとって、最も恐怖を感じる脅威は、飢餓である。だから、飢えないように何としても食糧を確保しなければならない。しかも、今食べる食糧だけではなく、明日の食糧も確保しておく必要がある。さらに、未来永劫まったく飢えに苦しむ必要のないくらいの食糧の在庫がほしい。現代においてそんな欲求を満たすものはお金である。お金があればいつでも必要なだけ食料を確保できるし、お金は永遠に腐らない。だから、お金がほしい。だから、いやな仕事でも命令に従い頑張って働いて稼がなければならない。自分や自分が愛する者たちを飢えの恐怖から守るためにはお金が必要なのだ。しかも、今日明日の食いぶちだけではなく、未来永劫飢えることのないほどのお金が必要であり、その必要とする量は、多ければ多いほどよく、際限はない。しかし、どんなに仕事をしてたくさんのお金を貯金することができても安心と満足を得ることはできない。たとえ、運よく世界中の富を独占することができたとしても、安心と満足を得ることはできない。なぜならば、D動機は、死の恐怖から逃れることが目的であるが、死の可能性はなくすことができないからだ。

 人にとって、次に恐怖を感じる脅威は、敵である。自分も必死になって富を確保しようとしているから、確保できていない他人の恐怖と怒りはよくわかる。だから、周囲の人を見たときに、その人たちの好意や善意よりも、自分の富を奪おうとする悪意の可能性に目を奪われてしまうのだ。D動機の人にとって、この世は生存競争、弱肉強食の社会である。分離感が強く、自分は、常に脅威にさらされており、敵に囲まれており、孤独であると感じている。自分や自分が愛する者たちは、悪者たちの悪意にさらされており、自分自身を守るため、愛する者を守るためには、悪者たちを攻撃し、痛い目にあわせて撃退し、奪われたものを奪い返さなければならないと考えている。やらなければやられるのだ。こうして、D動機の人たちは、どんどん防衛的になり、どんどん攻撃的になっていく。彼らにとっての成長とは、まさに、武器と防具の強化を意味するのだ。強化すべき防衛力は、強ければ強いほどよく、際限がない。しかし、たとえ、運よく世界中でかなう者のないほどの強さを得ることができたとしても、安心と満足を得ることはできない。なぜならば、D動機は、死の恐怖から逃れることが目的であるが、死の可能性はなくすことができないからだ。

 D動機の生き方は、自分と愛する者を守るために、必死になって防衛し、必死になって努力し、必死になって攻撃して、必死になって獲得する。しかし、D動機の生き方は、その必死の努力の割には、実る果実は美味しくも豊かでもない。

 D動機(恐怖や不安)によって、どんなに必死になって頑張っても、安心と喜びは得ることはできない。なぜならば、恐怖や不安の可能性はいたるところにあり、無にすることはできないからだ。恐怖から逃れようとして外部を取り込もうと頑張るが、決して恐怖から解放されることがないので、外部から取り込もうとする渇望は際限なく起こってくるが、その欲求は永遠に満たされることはない。むしろ振り返ると、埃かぶった使われることのないとてつもなく大きくいびつな廃墟を発見することとなる。

 恐怖から逃れようとして自他の境界を厚くし、内部を守ろうと頑張るが、決して恐怖から解放されることがないので、自他の壁を厚くしようとする渇望は際限なく起こってくるが、その欲求は永遠に満たされることはない。むしろ、振り返ると底知れない孤独と寂しさにおぼれそうな自分を発見することとなる。

(続く)

 

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明日から連休に入ります

明日から弊社も連休を取らせていただきます。お休みは、来週5日までです。連休中は、ゆっくりと英気を養い、新しいことなどに挑戦しようと思っております。当ブログも、連休をいただいて、再開は6日の予定です。

ところで、最近連載のマズローの欲求論シリーズに関しまして、書き始めはそれほどの覚悟で始めたわけではないのですが、しだいに大掛かりの文章になってきました。実は、書きたいことはまだままありますので、連休後もマズローシリーズを続けていきたいと思っています。どうぞご期待くださいませ。

では、みなさん、良い連休を!

マズローの欲求理論⑥ B動機の経営事例

<B動機による経営の事例>

【リストラなしの年輪経営「伊那食品工業」】

伊那食品工業は、長野県伊那市の寒天メーカーであり、半世紀にわたって増収増益を遂げている。

その原動力となったのは、会社を導いた現会長の塚越寛氏による経営管理である。創業当初伊那食品工業は、半年で大赤字を出し、非常に危険な状況に陥っていた。塚越氏は、親会社から危機を乗り越えるために社長代行として経営に参画した。

 会社を強くするためには何が必要か?何が会社の存続を保証してくれるのか?経営者として塚越氏はずっと考え、出てきた結果が、「社員のやる気を引き出すこと」であった。機械は、どんなに頑張っても能力以上の仕事はしないが、人は本気になれば、3倍の仕事をする上に、工夫をこらして新しい未来を開くと考えたのだ。

 それでは、社員のやる気を引き出すためには何が必要か?塚越氏は、「これはおれの会社だ」と思ってもらえる会社作りをすることだと確信した。とはいえ、単に成果型の賃金にするだとか株式の持ち合いをするという制度的で利害に働きかけるものではない。もっと本音に働きかける方法が必要だ。かといって、冠婚葬祭、飲み会など積極的に開いていこうとすることはしない。負担が大きいからだ。

 塚越氏は、会社を自分の家族だと思ってもらうためにしたことは、情報公開だった。隠し事をすることなく、会社の現状の様々な問題を正直に分かち合ったのだ。信頼は、演出をしたり演技をしたり技巧をこらして作るものではない。正直なコミュニケーションを通してお互いの誤解や疑念、恐怖や不安を解消できれば自然に起こる感情である。そして、確かに信頼関係は難しいが、本当に実現できたらすべてが変わるのだ。

 また、塚越氏は、本当の意味で社員を大切にしようとした。だから、脅して焚きつけて働かそうとなんか夢にも思わない。逆に、安心して喜んで働いていける環境をつくろうとするのだ。だから、伊那食品工業はリストラはないし、今後もするつもりはない。また、人事制度は、純粋な年功序列である。やる気になってもらうための演出は特別するわけではないが、社員の不安や恐怖を引き受けて、社員を本気で守るのだ。社員を大切にするという経営の言葉は、淡い期待とともに、幾度も幾度も失望を呼んできた言葉でもある。しかし、本当にそれを貫いて信頼を勝ち取った会社は偉大である。そして偉大な成長を遂げるのだ。

 現在伊那食品工業は、国内マーケットシェアーが80%を達成。世界においても15%である。半世紀にわたって着実に増収増益を遂げる軌跡を持成し遂げている。そんな伊那食品の実績を見て、トヨタグループ、帝人など名だたる大企業が同社に学びに来ている。まさに、伊那食品は、新しい理想を切り開く未来企業なのだ。(続く)

 

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マズローの欲求理論⑤ 「B動機の経営」

 ところで、経営の目的は、存続と成長ではない。それは手段であって目的ではない。経営の目的は、こころざしにある。創業の精神、大義、社会貢献への思い、哲学、気高い理想にある。企業経営者は、このことを決して忘れてはいけない。経営の目的は、株主に文句を言われないことでも、シェアーを伸ばすことでも、コストを削減し利益を絞り出すことでもない。それらは、方便であって本質ではない。本当のところ経営の目的は、経営理念なのだ。

 陰気な皮肉屋の「理想や理念では飯は食えない」という言葉に惑わされてはいけない。青臭い理想こそが未来を拓くイノベーションの源となる。

 「戦争の真っただ中にあって、夢だの希望だの浮ついた甘いことを考えるなんて、間抜けでいかれた青二才だ」と言うトゲトゲしく不機嫌な頑固者の言葉に惑わされてはいけない。実のところ、経営が存続していくためには、未来の奇跡が必要である。現状の枠組みの中で5年後10年後もうまくやれると言う考えは幻想である。未来において新機軸となる新商品、新市場の開拓、全く新しい協力関係、多くの感動の創出が起こらなければ、現状以上の売り上げは確保できない。そして、未来に起こるイノベーションは、現在において予測することは全く不可能である。なぜならそれは現在のあらゆる想定を超えているからだ。そんな奇跡を生み出すためには、恐怖から逃げ惑うD動機の萎縮し攻撃的で孤独、感受性の鈍いハートには不可能である。それは、理想に向けて陽気で元気で前向きで他者への深い関心と愛を持った感受性豊かなメンタリティにこそ可能なのだ。

 B動機による経営にシフトすることは、経営者にとって勇気が必要である。D動機による支配体制を敷いている分には経営者は楽である。あめとムチによって容易にコントロールできる上に、命じたことは確実にやり遂げることを見込めるので、簡単に未来を予測できる。だから、仕事の基軸は、どなること、脅すこと、弱みに付け込むことであり、それは、巧妙に計画し考えれば誰でもできうる。

 一方、B動機によるマネジメントを展開しようとする経営者は、勇気と度量が必要である。人間主義的で温かく働きやすい環境を造るために多大なエネルギーと投資が必要であると同時に、そのようにしたからと言って成功の保証はない。従業員はそれを意気に感じて一生懸命に働いてくれる保証はないし、新商品を生み出すマジックを見せてくれる確証は全くない。効果は、現れるとも現れないとも言えないうえに、それが表れるとしても長期的である。だから、経営者は投資効果の責任を問われ、口うるさい利害団体からの攻撃の矢面に立たされる。高いストレスの中にありながら、気高い精神性を維持し、愛を持って従業員の可能性を信じきる必要がある。まさに、戦いの最前線で戦う武将と部下をいつくしむ仏の両面を持つ必要があるのだ。

 しかし、厳しいB動機の経営を貫く会社には、大きな飛躍の可能性がやってくる。以下、消費者に感動を提供し、本当に社会貢献を実現し、イノベーションと創造性のもとで大きく成長を遂げてきた勇気ある経営を紹介しよう。(続く)

 

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マズローの欲求理論④ 「D動機の経営」

 現実の現状を観察すると、世界中のありとあらゆる経営や組織が、D動機を基盤としていることが分かる。弱肉強食、適者生存という世界観のもとで、存続と成長を勝ち取ろうとする経営の目的自体が、D動機そのものである。

 D動機による経営は、収益性の確保と規模の拡大に邁進する。それこそがサバイバルを保証するからである。危機感に駆り立てられて、経営は、どんどん規模を拡大し、コストを削減し、利益を最大化しようとする。そうして、許される限り際限のないほど経営規模は拡大していく。しかし、どんなに規模が拡大し利益を確保しても、安心と喜びを得ることはできない。なぜならば、D動機の目的は死の恐怖から逃れることであるが、滅亡の可能性はどんなに消そうとしても無にすることはできないからだ。D動機に支配された経営は、生存競争の中で、際限無い防衛と攻撃に走り、必死になって規模と利益の拡大に猛進し、結果的に強欲の掠奪者となる。危機にさらされている被害者のつもりであったにもかかわらずいつの間にか周囲にダメージを与える加害者となってしまう。折からの環境意識の高揚、度重なる企業の不祥事を背景にして、多くの消費者が、この加害者に対して嫌気がさしている。強欲で高圧的で乱暴なふるまいにうんざりしているのだ。だから、迂闊にもそうした強欲を露骨に表してしまった企業や組織は、株価が下がり、大衆からの支持を大きく減らしている。さらに、D動機を徹底してした場合は、単に生産性の低下や評価の下落をもたらすだけではなく、とてつもない不祥事や事故を引き起こすことにつながる。懲罰人事を徹底していたかつてのJR西日本が引き起こした尼崎脱線事故、安全よりも利益を優先していたかつての三菱自動車工業が起したリコール隠し問題。D動機に焚きつけられて成長を遂げてきた経営は、皮肉なことに成長を遂げたエネルギーであるD動機で滅びるのだ。

 もちろんD動機は大切な動機であり、否定すべきではない。生活の安定、安全の確保、適度な防衛力がない存在は、ただのお人よしのおバカさんである。しかし、だからと言って、全面的にD動機に依存し、その奴隷となるべきではない。人は、パンのみにて生きるにあらず。人は、逃げるために生きるわけではない。人は、幸せのために生きるのだ。(続く) 

 

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マズローの欲求理論③ 「動機づけのマネジメント」

 経営管理の視点からこの欲求理論を考えた場合、D動機とB動機のそれぞれのマネジメントの特徴を整理すると、以下のとおりである。

 

<D動機によるマネジメントの特徴>

1.強み

・コントロールしやすい

 恐怖と不安による動機付けなので、経営の意図に確実に従うことを期待できる。

・見通しが立ちやすい

 命じたことに関して、ある程度確実に成果を期待できる。

・計画を立てやすい

 したがって、将来の計画を立てやすい。

 

2.弱み

・低いモチベーション

 脅されてすることで、生きがいと情熱を感じることはあり得ない。

・官僚主義的体質

 言われたことしかやらない。保身が優先事項であり、官僚主義的となる。

・低い生産性

 結果、生産性は頭打ちで、低調にとどまる。

 

<B動機によるマネジメントの特徴>

1.強み

・高いモチベーション

 人の本音の喜びに働きかけるので、情熱と強い意欲を引き起こす。

・クリエイティブとイノベーション

 新商品の開発、新規販路の開拓、新機軸の誕生など、過去からの延長ではない全く新しイノベーションを創造する。

・健康でエネルギッシュ

 総じてネガティブなストレスは低く、健康であり、元気である。結果、高い生産性や創造性を生み出すことにつながる。

 

2.弱み

・不安定

 いつも好調とは限らない。好不調の波は決して小さくない。

・見通しが立ちづらい

 見込みとはまったく異なる方向性、イノベーション、失敗(成功のもととなる)、出会い、創造などが起こり、それを予測することは不可能であり、計画を立てづらい。

・成功の保証がない

 人を大切にして、人間主義的なマネジメントを貫いたからと言って、必ず成功するという保証はない。

(続く)

 

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マズローの欲求理論② 「B動機」

一方、マズローは、人間の欲求は、D動機だけではなく、D動機とは全く性質の異なる欲求も存在すると主張した。D動機は、本質的には死の恐怖から逃れるために起こる様々な欲求であることに対して、それは、恐怖や不安からではなく、自分の本当の本音、魂の本質からたち起こってくる欲求であることからBeingの頭文字をとってB動機(実存動機)と名付けた。

B動機は、前提として「自分自身は充分である。自分自身は価値に値する。自分自身は今ここで満足であり幸せである。」という自己認識に立っている人が、「素晴らしい自分自身を表現したい。自分の理想を実現したい。自分らしく生きたい。自分にとって意義のあることにチャレンジしたい。」というハートの奥底からやってくる力強い喜びや意欲によって突き動かされる情熱でもある。

マズローは、B動機に該当する欲求を「自己実現の欲求」と名付けた。自己実現の欲求は、明らかにD動機の様々な欲求とは異なる。それは怖いからするのではなく、本当にそうしたいからするのだ。また、下位の欲求が満足されることによって発現されるタイプの欲求でもない。自我の欲求が満足できたからと言って自己実現の欲求が発現されるわけではない。逆に、死の恐怖にさらされているからと言って自己実現の欲求が起こらないわけではない。自己実現の欲求は、D動機の満足不満足と言うよりはむしろ、D動機の束縛から自由になった人、恐怖や不安に強く支配されることから解放されたハートにやってくるのだ。

だから、恐怖や不安の真っただ中でも自己実現の欲求は起こる。

取り残された人を救うために、自分の命を顧みずに炎に飛び込む消防士、

子供たちの命を救うために、自らの命をかけて戦う戦士、

聖なるものとの出会いを求めて無一文で出家し修行する僧、

貧乏のどん底にあって最高の芸術を生み出すアーティスト、

痛みを知っているからこそ思いやりとやさしさを忘れないホームレス、

自己実現の欲求は、今の人の現状とは関係なくやってくる。その人の外部の状況というよりは、その人の内面のあり方、生き方、哲学とかかわるのだ。(続く)

 

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マズローの欲求理論① 「D動機」

 A.マズローは、欲求階層説という理論を発表し、そのなかで、人間の欲求は、低次から高次へと階層をなしており、低次の欲求が満足されると、1階層上の欲求が発現してくると言う仮説を提示した。

 もっとも基盤となる低次の欲求は、『生理的欲求』であり、生き残りたいというサバイバルの欲求である。おもに、食欲、性欲、睡眠欲などにかかわる欲求といえる。

 生理的欲求が満たされたならば、次に発現してくる欲求が『安全欲求』である。単に生き残るだけではなく、生存が保証されたい、安定的に安全でありたいという欲求で、衣食住の安定とかかわる欲求である。

 安全欲求が満たされたならば、次に発現してくる欲求が『社会的欲求』である。社会の一員でありたい、仲間外れにされたくないという欲求である。

 社会的欲求が満たされたならば、次に発現してくる欲求が『自我の欲求』である。単に社会の一員であるだけではなく、社会の中でひとかどの人間になりたい、他の人たちよりも尊敬を集める人間でありたいという欲求である。

 マズローは、以上の欲求には、共通した要素があると考えた。それは、それらの欲求が、ある前提を基盤として起こっているということである。その前提とは、「私には、何かが欠けている。欠けている何かを得なければ生存の危機にさらされる。万難を排して欠けている何かを手に入れなければならない。」という自己認識である。そのような特徴から、マズローは、以上の欲求をDeficiency(欠乏)の頭文字をとってD動機(欠乏動機)と名付けた。

 D動機(欠乏動機)とは、生存の危機を起因とした、不安や恐怖に焚きつけられた渇望といえよう。

 一方、マズローは、人間の欲求は、D動機だけではなく、まったD動機とは性質の異なる欲求も存在すると主張した。(続き)

 

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キャリアアドバイザーの今期

J大学で、キャリアアドバイザーを担当しておりますが、おとといから今期が始まりました。

相談に来る学生たちも真剣で、相当危機感を感じているようでした。

就職と就社という言葉があります。

 就社とは、文字通り”社”に就くという意味であり、極端にいえば会社にぶら下がろうとする志向が強いあり方を言います。どちらかといえば、そうしないと不安で怖いから就活を展開している学生たちであり、とにかくどこかに内定を取りたくて前のめりで焦っている様子がよく目につきます。

 就職とは、職に就くという意味であり、自分自身に夢があり、自分の幸せに向けてその道のプロとして主体的にキャリアをはぐくもうと志しているあり方を言います。自分の志を持ち、幸せや夢を実現するのだという強い意志を持ち、前向きで自信がある学生たちが多いといえましょう。

 実は、就社志向の学生と就職志向の学生を並べると、何も言わずに待合室で座っているだけでどちらが魅力的なのかということがはっきりとわかってしまうという恐ろしい現実があります。自信が折れて卑屈になりしょぼくれながらも就職できない恐怖に焚きつけられて焦って活動している学生の雰囲気と、超強気であり夢や幸せに向けて前向きで何を聞かれても怖くないという雰囲気の学生とでは、素人目でもオーラの違いがわかってしまいますよね。そのような点からも、単に内定を取ろうとして焦ることが大切なのではなく、本当の自分の幸せについて真剣に考え、志としてまとめ、大きな夢に向けてその実現のための第一歩として就職活動を展開するのだという心構えがどうしても必要になるのです。

 かく言う私も、就職活動のときは就社志向が強く、どこか大きな会社に勤められれば一生安泰だという願いは強くありましたよ。私だけではなく、たいていの友人たちがそんな思いを持っていたんじゃないかな。だから、今の学生にそれではだめということは大変な酷な言い方だと思いますが、かわいそうだとは思いますが、今の厳しい就活戦線の中では、就社志向は通用しないのです。

 心身ともに追い込まれている状況で、夢だの志だのと言われても、そんな雲をつかむ話に集中できないという思いはよくわかりますが、やはり、そんな夢や志がしっかりしている学生が内定を取っている事実には変わりないのです。ここは、しっかりと腰を据えて、自分の本当の幸せ、志を定め、胸にしっかりととどめて就活戦略を練り直す必要があると思います。

 追い込まれている学生にはなかなか信じることができないと思いますが、人は自分で思っているほどちっぽけな存在でありません。本気を出せば、どんな人でも本当に素晴らしい仕事をする力を持っている。預言者でもない限り、未来の素晴らしい可能性は預言できません。そして、未来の可能性は、今は想像もできないくらい大きく偉大で素晴らしい奇跡が待ち受けているのですから。

 だからこそ、夢を大きく持って、それを実現できる自分の力量と可能性、自分の人生の骨太でたくましく力強いあり方を信じて、超強気で就活戦線に立ち向かってほしいですね。

 がんばれ、4年生!