カテゴリー別アーカイブ: ④リーダーシップ論

ネガティブケイパビリティ ①ネガティブケイパビリティとは

1.ネガティブケイパビリティとは
私たちは、いつの間にか「すぐ答えを出せる人」が優秀だと思い込むようになりました。

迷わない人。
即決できる人。
何でも説明できる人。

問題が起きたら、即解決。
不安があれば、すぐ安心材料を探す。
わからないことがあれば、検索して、結論を得る。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。
けれど、人間の人生には、「すぐに答えを出さない方がいい問い」があります。

たとえば、
なぜ、あの人はあんな態度を取ったのか?
この苦しみには意味があるのか?
本当にこの道でいいのか?
自分とは何者なのか?

こうした問いに、拙速な答えを与えると、かえって本質を見失うことがあります。

そこで大切になるのが、「ネガティブ・ケイパビリティ」という力です。

ネガティブ・ケイパビリティとは、19世紀の詩人、ジョン・キーツが残した言葉です。

簡単に言えば、

「不確かさや曖昧さの中に、耐えながら留まる力」

のこと。

シェークスピアのような偉大な表現者たちは、こうした力を持っていたと言われています。
それは、芸術家や哲学者だけでなく、人生を深く生きる人たちに共通する力なのかもしれません。

すぐに白黒つけない。
理解しきれないものを、無理に理解した気にならない。
不安を、即座に消そうとしない。

それは、消極的な諦めではありません。

むしろ、「わからなさ」と誠実に向き合う勇気です。

2.現代社会は「待てない」

今の時代は、とにかくスピードが求められます。

すぐ結果。
すぐ成果。
すぐ説明。
すぐ正解。

SNSでは、一瞬で意見を求められ、
ニュースには即断が飛び交い、
人間関係ですら、「わかりやすさ」が優先される。

でも、本当に大切なものほど、時間がかかるのです。

信頼も。
成長も。
悲しみの癒えも。
人の理解も。

発酵するように、ゆっくり深まっていく。

ネガティブ・ケイパビリティとは、その「熟成を待てる力」なのかもしれません。

3.弱さを認めることから始まる
ネガティブ・ケイパビリティの難しさは、「自分の無力さ」に触れるところにあります。

答えが出せない。
うまくいかない。
理解できない。
変えられない。

そんな自分を受け入れるのは、簡単ではありません。
しかも現代社会では、
「早く答えて」
「結論は?」
「つまり何が言いたいの?」
と、答えを急かされる場面が少なくありません。

だから人は、焦って答えを作ります。

誰かを悪者にしたり、
単純な理屈に飛びついたり、
「わかったつもり」になったりする。

でも、本当の成熟は、「わからないままでいられること」の中から生まれることがあります。

4.「問い」を持ち続ける人
人生には、答えよりも、問いの方が大切な時があります。

「どう生きるか」
「何を大切にするか」
「人を愛するとは何か」

これらは、一度答えを出して終わるものではありません。

むしろ、問い続けることで、人は深くなっていく。

ネガティブ・ケイパビリティとは、
問いを急いで閉じない力とも言えるでしょう。

5.不完全なまま、人生に向き合う
勇者とは、完璧な人ではありません。

不安を抱えながらも、
傷つきながらも、
答えのない現実に向き合おうとする人です。

人生に訪れる出来事や人は、礼儀正しいお客様ばかりとは限りません。
時には、足を引っ張り、牙をむき、罠に陥れようとすることだって少なくありません。
人生は、まさに、向かい風の中を進む如しです。

それでも、自分を見捨てずに進もうとする。
それでも、あきらめずに立ち上がり、一歩踏み出す。
そこに、人間の尊さがあるのだと思います。

時に、すぐに答えが出ない眠れない夜があります。
何を信じればいいのかわからない絶望の時があります。

でも、そんな時間は、無意味ではありません。

曖昧さに耐え、
不安を抱え、
それでも人生から目を逸らさない。

その力は、静かだけれど、とても強い。

ネガティブ・ケイパビリティとは、
「答えを急がない勇気」なのかもしれません。

チームビルディング ③開示ステップを乗り越えるために

開示ステップを乗り越えるためのポイント

①階層をフラットに、権威権力は極力抑えめに
 風通しの良い風土は、平等で対等な人間関係から生まれます。ですので、オープンな風土を目指すのであれば、階層をフラットにすることが大切です。

 組織として、仕事を進めていく上では、どうしても指示命令系統の権威が必要であり、また、報酬や昇進の能力評価システムなどの権力が必要となりますが、そうした権威や権力も、指示命令の情報を可能な限り開示したり、評価プロセスをオープンにしたり、評価プロセス以外の要素が入り込まないようにフェアーにするなどして、必要以上の力を集めないようにさせることが大切です。

②情報の質と量は、リーダーと末端が同じとなるよう公開する
 情報の質と量は、権威の裏付けとなる要素の一つとなるので、より大きな権威を欲しがる管理者は、時に公開せずに、自分の都合の良い時と内容で開示していくことがありますが、それは決してオープンな風土を作る上では効果的ではありません。

 そもそも、「何か良いアイデアを出してくれ」とチームメンバーにお願いしたとしても、情報の質と量が立場によって違っていたら、フェアーな話し合いはできません。より創造的で高い問題解決力のあるチームにするためには、より的を得たパワフルなアイデアをたくさん出すためにも、情報公開が必要となります。

③正直さ、オープンさには勇気が必要、一歩踏み出す勇気こそがリーダーの役割
 正直であることには勇気が必要です。特に、自分の弱み、失敗、欠点をオープンにしていくことは、相手に見下され嘲笑されるリスクを伴うので、大きな勇気が必要です。しかし、そうした勇気をメンバーに期待するべきではありません。リーダーにとって必要な美徳は、頭の良さでも技巧でもなく、勇気です。勇気こそが、新しい境地を開くカギとなり、それを担うものは、まさにリーダーなのではないでしょうか。

 リーダーの勇気ある一歩、自分の弱みを正直に語るというシンプルですが難しいことが、チームのぎくしゃくした関係性を振り払い、良き協力関係を引き出すきっかけになった事例には、枚挙に暇がありません。

 見下されたくない、嘲笑されたくないという思いは、メンバーの誰しもが持っている恐れです。その恐れが払しょくされない限り、ぎこちなさや堅苦しさ、うそやごまかしが消えることはありません。しかし、一旦、リーダーの自己開示、特に自分の弱さや欠点についての開示がなされると、そうした懸念は払しょくされて、メンバーの発言の自由度は、より大きくなるります。

 リーダーの欠点を非難しない姿勢、弱点を含んだありのままの人間性を尊重する姿勢が明確になることは、メンバーに大きな勇気を与えます。メンバーは、過度に緊張することなく、ようやく本来の自分らしい力を発揮できるようになるのです。

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チームビルディング ②受容ステップを乗り越えるために

受容ステップを乗り越えるためのポイント
①まずは自尊心を持つ
 自尊心は、人間関係に良くも悪くも強烈な影響を与えます。自尊心とは、傲慢さや自惚れを言うのではなく、ありのままの自分を尊重し愛する心情を言います。ありのままですから、優れた自分もそうでない自分も、そのすべてをありのままに許し、受け入れる必要があります。自分には、欠点があることを受け入れ、それを正面から言い訳せずに受け止め、よりよく成長していくことができる能力を自尊心というのです。

 逆に傲慢さは、自分の中の愚かさ、弱さ、醜さを許すことができません。そのようなものは私にはないと主張し、悪いの他人だと転嫁します。それは、自信に由来する言動ではなく、むしろ、劣等感や恐れに由来するものであり、決して自尊心とは言えないものなのです。

 リーダーの自尊心の在り方は、チームメンバーに強烈に影響を与えます。自尊心の低いリーダーは、自分の欠点や弱さを嫌い、攻撃し、無きものにしようとするように、他人の欠点や弱さも嫌い、攻撃し、無きものにしようとします。

 常に強い不安があり、保守的でリスクのあるチャレンジを好まず、部下にも逸脱や冒険には厳しい態度を取ります。時に、やたらに挑戦や変化を求める場合もありますが、自分の気の弱さ、臆病さにあがらいたいがための反動であり、喜びや愛に基づくものではなく恐怖や不安に基づくものなので、時に無謀だったり、的外れで独りよがりだったり、時にメンバーに限度を超えた重い負担を強いるものだったりします。

 また、チャレンジによって失敗したらそれを成功へのステップとは見ずに、落胆し、嘆き、責任追及をしがちです。

 逆に、自尊心の高いリーダーは、基本的に前向きであり、明るく健康的で楽しい雰囲気をもたらします。ありのままの自分を愛せるように他者の弱さにもおおらかで、多様性を尊重すると同時に、リスクのあるチャレンジも奨励し、たとえ失敗しても、成功へのステップを一歩進めることが出来た側面を尊重し、その勇気をたたえます。

 どちらのリーダーが良いチームを作れるのかは、自明のことでしょう。そもそも、自分を大切にできない人は、他人を大切にはできません。自分を愛せない人は、他人を本当の意味で愛することはできません。そもそも、自分すら信用できない人が、どうやってよくわからない他人を信じることができるのでしょうか。

 リーダーとしてチームを導いていくために必要なことは、頭の良さでもテクニックでも超能力でもありません。それは、シンプルに自分に対する愛、他者に対する愛なのだと思います。逆に愛が無ければ、どんなに小細工で取り繕っても真のリーダーにはなりえません。良きリーダーを志すならば、まずは、自尊心を持つこと。自虐で自分を非難攻撃するのではなく、傲慢さで自分の弱さから逃げるのではなく、勇気をもって自分を受け入れること、腹を決めて自分を愛し大切にすることが大切なのだと言えましょう。

②メンバーへの批判心を静め、親しい仲間と思ってみる
 人は、相手の良いところを見出し愛することもできますが、相手の欠点を見つけて非難することもできます。しかし、普段自分の心の中で、無意識的に相手にしていることは、意外なことに後者の非難することではないでしょうか。

 私たちは、基本的に人間関係の中で警戒モードが発動しており、他人の美徳や善性を見るというよりは、相手と距離を置き、相手の弱さや欠点に目が向きがちとなります。それは、自己防衛のために必要なステップでもあり、決して非難すべき態度ではないのですが、チームビルディングの良きリーダーを志そうとしたときには、そのような無意識的に現れる態度は、注意しなければなりません。防衛力や免疫力は必要ですが、だからと言って、相手の良さを全く見れないほどの過剰な警戒は慎まなければなりません。無意識的に起こりがちな相手への批判心を静め、まずは自分から相手を仲間として迎え入れる度量が必要です。

 距離感を縮め、親しみを増そうとする努力を、メンバーに依存するべきではありません。そうした努力には勇気が必要であり、リーダーこそがそうした勇気を担うべきなのだと言えましょう。

③メンバーに関心を持ち、理解を深める努力をする
 人は、実は、自分のことで精一杯で、他人のことに関心を持つことは意外にできていません。時に、警戒心から他者を観察することはありますが、それは、相手の悪意を探っているのであって、相手のすばらしさや可能性に興味を持とうとする関心とは違います。ですから、他人に関心を持つためには、意識的な努力が必要なのです。

 優れたリーダーには、他者に対して意識的に積極的に関心を持つように心がける人がとても多く存在します。彼ら彼女らの手帳には、出会った人の仕事上の記録はもちろん、仕事とは関係のない出身や生年月日、家族、家族の誕生日、趣味、食べ物の好みなど、驚くほど多くの事柄について書かれているものです。そのような情報をもとにクオリティの高いアドバイスや関係性を持つことができるのです。

 チームビルディングのリーダーをこころざすならば、メンバーに積極的に意識的に関心を持つ努力をすること、メンバーノートを作成して、メンバーに関して知りえた情報をしっかりとメモをしておくことをお勧めします。

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チームビルディング ①チームビルディングのステップ

 チームやチームビルディングは、最近の経営学のとても大きなテーマの一つとなっています。その在り方によって業績へのインパクトが良くも悪くもとても大きいからです。

 チームには、不思議な力がありますよね。1+1=2とは限らない、時にはそれ以上の力が発揮されて驚くような結果につながるという魔法の力、奇跡の力ともいえるものがあると思います。

 そもそも、チームの力がチームメンバーの力の総和だとしたら、なでしこジャパンが世界一になれるわけがありません。そこには、チーム力という不思議な力が働いていたからこそ起こった奇跡なのではないでしょうか。

 このシリーズでは、この奇跡の力をどう引き出すかについて、私どもの考え方をご紹介したいと思います。

チームビルディングのステップ

 ばらばらの個人の集まりに過ぎないチームを、目的に向けて協力し合い、潜在化していた大きな力を引き出して最善の結果に導いていく一連のプロセスをチームビルディングと言います。心理的安全性に基づく良いチームを作るためには、以下の4つのステップが必要です。

第1ステップ 受容  

 メンバー同士が、お互いを仲間として受け入れるプロセスです。このプロセスが成功すると、メンバーのチームへの参加度合い(コミットメント)を高めると同時にメンバ同士がお互いに深く関心を持ち、相互理解を深めオープンマインドとなり、ハイパフォーマンスの原点となる信頼関係につなげていくことができます。

 逆に、本プロセスがないがしろにされたり未解決である場合には、メンバー間の緊張と懸念、不信感が強まり、メンバー同士を仲間というよりは警戒すべき他人、または敵と認識し、今後のあらゆる工程で防衛的、警戒的な態度を引き起こし、さらに深刻かつ感情的で容赦のない葛藤を生み出す可能性があります。

第2ステップ 開示

 メンバー個人に内在しているデータや情報、感情や考えを表出し、聴きあうことによって、情報とエネルギーがチーム内で交流しあうステップです。

 情報や感情が個々人の中に潜在化しているときには何も変化が起こりませんが、一旦交流が始まると、チームの潜在能力と可能性が顕在化し、さまざまな創造性や問題解決に向けての効果的なプロセスが動き始めることになります。

 逆に、このステップが未解決の場合には、メンバーの見せかけだけのふるまい、慎重で自己防衛的な態度、巧妙なサボタージュ、お役所体質などと言った問題を引き起こす可能性があります。

第3ステップ 目標設定

 協力し合う目的、理想とするビジョン、達成したい目標を明確にするステップです。このステップを通して、個々人のチームに参加する動機が表明され、単にチームのタスク目標だけではなく、実現したい価値や理念、理想やポリシーも含めたチームのビジョンとして統合されていくことになります。

 目標設定が成功した場合は、チームメンバーのモチベーションが高まり、主体的かつ積極的なチーム活動への参画を促し、結果的に高いチーム成果を引き出すことになります。

 逆に、未解消の場合は、相互不信を招き、相互に距離を置き無関心を装うか、分離感を強めると同時に競争心が強まり、不要な葛藤を生み出す可能性が出てきます。

第4ステップ 組織化

 お互いの個性、能力、可能性についての相互理解が深まり、特徴に応じて役割分担がなされると同時に、仕事の進め方や問題解決の方法が有機的に統合され、ブラッシュアップされていくステップです。

 このステップの課題を乗り越えると、リーダーシップ機能は特定のリーダーのみに依存するというよりは、個性に応じて分かち担われるようになります。メンバー間の信頼関係や絆は強まり、お互いに頼もしい仲間と感じる相互依存の関係性へとチームは成長を遂げていきます。本音ベースの質の高いコミュニケーションが実現しており、問題解決に至るひらめきやアイデアの質も高まり、結果的にチームの力は形成初期とは比較にならないほど強くなります。

 逆に、このステップが未解消の場合は、強い依存心や主体性、責任感のなさを引き起こすか、反対に強い権力志向や権力闘争を巻き起こす可能性があります。

 

チームビルディングのポイント ~受容と開示の重要性~

 チームを作る際に、私たちは、いきなり「目標設定と役割分担」を設定しがちですが、前提となる「受容、開示」のステップがクリアーされていない限りは、目標や計画がどのように洗練されたものであっても機能しません。

 チームが目標に向けて一丸となって協力体制をとるためには、「受容、開示」のステップが不可欠なのです。

 ちなみに受容と開示のステップは、容易ではありません。受容と開示ができない背景には、懸念(不安や恐怖、誤解)がありますが、懸念は、持ってしかるべきものであり、そう簡単に解除することはできません。私たちは天使に囲まれて生きているわけではありませんので、攻撃を受けたり傷つけられたりするリスクがあります。ですので、身を守る防衛力を持つ必要があります。また逆に、不用意に相手を傷つけたり相手に不快にさせないような注意深さも必要なのです。懸念は、そうした防衛力や注意深さの源泉ともなるので、決して不必要なものではありません。

 ただ、リスクがあるからと言って固く身を守り心を閉じてしまうのは決して良策とは言えません、可能であれば心を開いて豊かな関係性を育んでいきたいという願いはだれしもが持っていると思います。

 私たちは、自己防衛と自己開示と言う全くベクトルの異なる矛盾した力を同時に使いながら人間関係を育まなければなりません。だからこそ、人間関係は難しいのだと思います。ただし、不可能ではありません。人には高い次元で両方の力を統合することができる能力があります。

 不安や恐怖は、必要ですが、決してそれに支配されてはいけません。それらは乗り越えるものであり、踏み台にして成長していくためのステップなのです。

 自己防衛と自己開示を高い次元で統合した状態こそが、心理的安全性と呼ばれる状態なのだと思います。そして、心理的安全性が確保されることによって、チームの偉大なる可能性を引き出すための準備が整い、本来の力を発揮することができるようになるのです。

 古来、有能なリーダーは、この受容と開示のステップ、つまり懸念(恐怖や不安、誤解)を解消するステップを意識するとせざるとに関わらず、上手に対処し、十分にクリアーすることによって強力なチームを作ってきました。優れたチームを作るためには、受容と開示のステップ、すなわち人間関係に必ず存在している恐怖や不安を意識的に乗り越えていく必要があります。

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時代を導くリーダーとなる

人には、全く性質の異なる2つの動機がある。
一つは、『自分には、何かが欠けている。欠けているものを手に入れなければ苦痛であり、恐怖であり危機である。 だから何としてでも獲得しなければならない。』と言う信念に基づく欲求だ。
それは、不安と恐怖にたきつけられる渇望であり、欠乏動機と呼ばれる。

もう一つは、『自分には充分な力と価値がある。自分の素晴らしさを表現したい。未知なることに挑戦したい。』 と言う信念に基づく欲求だ。
恐怖の束縛から自由となった人に訪れる情熱であり、人本来のまさに魂の欲求、実存動機と呼ばれる。

多くのマネジメントは欠乏動機を利用してきた。
欠乏動機による管理とは、あめとムチによる管理とも言える。
恐怖心に働きかけるリーダーシップは、やろうと思えばだれにでもできる簡単な方法であり、
一旦行い始めると確実に効くこと、安定的であり将来の予測を立てやすいと言う強みがある。
しかし、反面、メンバーのモチベーションは低下し、
防衛的かつ攻撃的風土を助長するので、官僚主義が跋扈し、生産性や成長性は、必ず頭打ちとなる。

多くのリーダーは、厳しい競争にさらされており、不安と恐怖の中にいる。
強力な圧力が常にかけられており、心無い攻撃により、心身ともに満身創痍だ。
だから、その多くが、自尊心の糸が切れると、いとも簡単に恐怖心に首を垂れることになる。
『自分は、みじめで孤独な力ないダメ人間だ。自分もそうであるように、他人もそうだ。 自分は被害者であり、こんなに苦しんでいるのだから自分を守るためなら、人を傷つけても許される』 と信じ込み、恫喝を使うことに躊躇がなくなる。
自らが恐怖の代理人となるのだ。
あめとムチを使い始めた当初は、目覚ましい効果が出るので、どんどんその傾向を強めるが、 遅かれ早かれ、必ず頭打ちとなり、結果的には、自ら奮った力によって滅ぼされることになる。

しかし、その困難を乗り越えて、実存動機を哲学とするリーダーも存在する。
実存動機によるリーダーシップとは、人を大切にして、人の持っている素晴らしい潜在性と可能性を信じ、 引き出そうとするリーダーシップだ。

実存動機を哲学とするリーダーの歩む道は平坦ではない。
人を大切にしたからと言って、相手がそれに応えてくれる保証はない。
そうしたからと言って、誰にも褒められるわけでも応援されるわけでもない。
むしろ、皮肉屋から冷笑されることもあるだろう。
実存のリーダーには、そんな痛み、不信感を乗り越える勇気が必要だ。

また、人の心からのやる気と能力は、本質的に不安定だ。
良い時は奇跡的な成果を出すが、悪い時は、永く無力だ。
実存のリーダーには、そんな浮き沈みをものともしない強い忍耐力と信念が必要だ。

さらに、人の可能性にかけるということは、将来の見通しも立ちづらいと言うことだ。
実存動機による成長は、まさにイノベーションによる成長だ。
まったく新しい商品の開発、新しい顧客との出会いによる、ある意味で奇跡による成長だ。
しかし、奇跡は、コントロールはできない。
奇跡を、事前に予測することはできない。
だから、未来の計画を立てることができない。
本質的に、実存動機は、管理とは相性が合わないのだ。

しかし、ひとたび実存動機が機能し始めた組織には、奇跡が起こる。
メンバーのハートは鼓動し始め、目の輝きが明らかに変わる。
分離感が癒され、心が開かれ、情熱と叡智が交流を始める。
現状の課題と問題点が、偏見によるゆがみを経ることなく、その真実が分かり、対処される。
今までは想像もしなかったような全く新しいアイデアや工夫が、 日常のあらゆる仕事の場面で創造され、実践されて、あっという間に現実が変わっていく。
結果的に、生産性と創造性は、想像を超えて高まり、奇跡的な成長を遂げていくことになる。

今、時代は大きく変わろうとしている。
むき出しのエゴイズムは、消費者から嫌われ、高い意識の経営が評価され、株価を上げる時代となっている。
強欲な資本主義から、高い意識の資本主義へと、静かに、ゆっくりと変わろうとしている。

そのような中で、求められるリーダーシップは、まさに、実存動機を哲学とするリーダーシップだ。
しかし、あめとムチによる欠乏動機のリーダーシップではなく、人間本来の可能性を引き出す実存動機のリーダーシップ という理想を担える存在は、そう多くはない。

その数少ない存在の中の一人は、あなただ。

被害者意識に甘えて、強い分離感に身を任せてはいけない。
勝つべきものは、相手ではなく、自分自身なのだ。

皆がそうだからと言って、絶望に身を染めてはいけない。
一隅を照らす光となるのだ。

あなたには、泥沼に落ちようとしている仲間を救い出す責任がある。
知っているなら、あきらめても手を緩めてもいけない。
真に仲間を守る戦士になるのだ。

あなたは、断じて欠点だらけの無力な存在ではない。
あなたの潜在性と可能性は、今の想像をはるかに超えて大きい。
その可能性を信じてみよう。
自分にするように、仲間の可能性も信じてみよう。
奇跡への一歩はそこから始まるのだから。

システム思考の特徴

<システム思考の特徴>

・悪者を決め付けない

システム思考の特徴は、問題の原因を安直に特定しないことと言えます。

システム思考では、問題は、その原因として一直線に特定することはできずに、複雑なシステム行動の結果としてあらわれていると考えており、その複雑なシステムを丁寧に紐解き、ありのままを理解することが最も大切なことと考えているのです。ですから、全員参加で、現状のシステムの仕組みを分析することを徹底的に行っていくのです。

 

・すべてを明らかにする

複雑なシステムを構築する要素は、その構成員の心理状態をも含まれています。ですから、普段は潜在化して表には出ていない様々な感情や思い(込み)、考え方などが明らかにされていくことになります。もちろん内面をオープンにしていくためには、信頼関係の構築が必要となりますが、そのような関係性のない状況で強引に開示されていくわけではなく、コミュニケーションを通して、お互いに内面をオープンにすることを許すことができる風土の元で、顕在化のプロセスはゆっくりと進んでいくことになります。

また、システム思考においては、不可侵の領域や治外法権領域を作ることはできません。ですから、問題解決に当たって、ありのままを明らかにしていくこと、部門や階層を越えた全社的な問題解決を図ろうとする試みであることを、事前に経営トップと合意し、許可や協力を取り付けておく必要があります。

 

  • 全員参加型

一部の特定のエリートによる問題解決ではなく、関わるすべての人が参加することが望まれる問題解決法です。組織内のシステムの現状やダイナミックスを明確にしていくためには、システム思考による問題解決を図る場合には、あらゆる階層から、あらゆる機能から、できれば全員が、少なくとも立場や機能を代表する人が参加する必要があります。

 

  • メンタルモデルの解除

表面化している問題は、たいていの場合、システム全体の問題(限界)によるものと言えますが、システムの問題は、たいていの場合、それが構築されたときのメンバーのメタルモデルと呼ばれる思い込みや勘違い、狭い意味での信念、世界観が元になっていることが多いといえます。その意味では、問題解決の本質は、その古くて機能しづらくなっている過去の世界観や信念体系、メンタルモデルを解除して、より現状に即したより持続的成長が可能となる自然で健康的なシステムに移行することといえましょう。

システム思考

システム思考とは、マサチューセッツ工科大学のピーターセンゲ教授が中心となって提唱されている“Learning Organization(学習する組織)”へと導くためのひとつの原則です。

従来の問題解決技法や考え方では、組織の問題を解決しようとした場合には、まずは、その問題の原因を明らかにし、その本質的な原因を排除するか変えることによって解決を図ろうとするものですが、センゲ教授によると、組織の中で起こっている問題というものは、原因→結果という直線的なかたちで整理して説明しつくせるものは少ないとされており、たいていの場合、複雑にかかわりあったさまざまな要素の相互関係の結果としてあらわれているものであり、その意味で、全体のシステムに焦点を当てて、現状のさまざまな要素の関係性としての現状のシステムを理解して、全体のシステムとしての改善を図っていく必要があるという考え方です。

従来の考え方では、問題を解決していこうと考えた場合には、その問題は、“私”とは異なるやっかいな“対象”として認識されているのですが、システム思考においては、“私”もシステムを構築する一員であるので、“私”も問題を生みだしている一因であり、その意味では、問題と私は分かつことはできないのです。ですから、私が変わることを通して、システムが変わり、全体が変わることを通して問題が解決されている方法と言えます。

従来の問題解決の思考法は、単純化、還元化に基づいており、物事をありのままに見るというよりは、観たいものだけを見る、必要(と思い込んだ)なものだけを観ることによって解決策を練るので、時には、部分的で本質的ではなく、短期的で長期的にはより多くの問題を発生させてしまう、不自然であり現場に即していない、無理があり問題解決行動に賛同を得づらい、などの問題が良く起こっていましたが、システム思考は、複雑で相互に入り組んでいる現実の姿をありのままに紐解き認識していこうとする方法であり、より現状に即した、よりリアリティのある、より自然で効果的な問題解決を促進することができることが多く、もちろん問題解決に参加しようとするメンバーの参加意欲も非常に高くなることが多いのです。

一部エリートによる変革計画に基づく問題解決策ではなく、多くの人に関わってもらい、全員の叡智を出し合って、本当のことを知り、本当に必要な対策を立てることができるシステム思考は、新しい時代、まさに21世紀型の思考法、問題解決方法といえましょう。

学習する組織

近年『学習する組織(Learning Organization)』と言う理論、考え方が、経営学において脚光をあびております。もともとは、1970年代にハーバード大学のクリス・アージリスと言う組織心理学者によって唱えられていた概念であり、現在では、マサチューセッツ工科大学のピーターセンゲ教授が中心となり、世界的に向けて広く知られるようになって来ました。

ちなみに、予断ですが、クリス・アージリスは、私の大学時代の卒論のテーマの一人でもありました。当時は、この概念は今ほどメジャーではなく、時代の変遷とともに、進化し、重要度が増してきたのだろうと思います。

今回は、『学習する組織 「5つの能力」』(ピーター・センゲ他著 日本経済新聞社出版)と言う名著から、学習する組織についてご紹介します。

学習する組織とは、『学習と成長意思をもった人間に、成長の機会を与えながら、自らも学習し、進化する組織』と言う意味であり、学習する組織の中では、『個人は、単なる労働力ではなく、主体性と成長への意思をもった自由な人間である。また、この個人は互いに信頼し合い、目標を共有し、協働する。その組織や決して孤立した一匹狼的な個人の集団ではなく、また、個人の主体性が未成熟な馴れ合い、もたれ合いの組織でもない。個人が学習の機会を与えられ、互いに学びあうことによって、組織も学習・成長していく。そうしたプロセスを通じてチーム力、組織力が高まり、新しい知や価値観が創造されていく』ことになります。

学習する組織を実現していくためには、具体的には、以下の5つの学習領域があり、それらの訓練を通して、学習する組織へと変容することが出来るとされています。

1.システム思考

さまざまな出来事は、単なる“原因→結果”と言う線的なつながりで理解できるものではなく、相互にかかわりあう複雑なシステムが背景にあり、そのシステムの構造と変化のパターンを捉え、理解していく必要がある。そのシステムには、それを観察する自分自身も構成要素のひとつとして含まれており、問題解決に当たっては、自らも問題にかかわりあう一員として主体的に働きかけていくことになる。

2.自己実現

一人ひとりが主体的に成長を遂げていくことを支援することであり、構成員一人ひとりの継続的な学習によって、学習する組織は成り立つという考え方。

3.メンタルモデル

メンタルモデルとは、思い込みや偏見と言った、心の中に固定化されたイメージや仮説を言います。メンタルモデルは、認知や反応パターンに大きく影響を与えるので、個々人の中に閉ざされているメンタルモデルに光を当てて、検証し、必要に応じて改善していくことが、本質的な変化とまったく新しい行動を生み出す基本となる。

4.共有ヴィジョン

組織のメンバー全員が持つ、共通の方向性、目標、理想、ヴィジョンである。このヴィジョンを創造し定着するためには、個々人が自由にヴィジョンについて話し合えるオープンな環境やネットワークが必要となる。

5.チーム学習

チームであることは、個人の能力を凌駕すると言う考え方に基づいて、チームであるために必要な要素を学んでいく必要性を訴えている。チーム力を高めるために、具体的には、ダイアローグやスキルフル・ディスカッションと呼ばれる質の高いコミュニケーションのあり方が提示されている。

 

私どもは、以上のいずれも、新しい時代の組織を考えるにあたって、非常に参考になる指針だと思っております。

弊社にとってもこの考え方は、基軸となっているもののひとつであり、大切にしていきたいし、さらに探求していきたいと考えております。

夢を語る力③ 「マイルストーンとしての目標」

③マイルストーンとしての目標

 目標とは、ヴィジョンに向けてのマイルストーンであり、中間地点におけるありたい目安です。

 前述のとおり、ヴィジョンが、本当にそうしたい喜びを伴うリアルゴールだとしたら、目標は、たいていの場合は、ヴィジョン実現のための苦労や努力や犠牲という位置づけになることが多いのではないでしょうか。

 しかし、職場の中で、多く見かけるのが、まさにこの目標であり、この目標の向こう側にあるヴィジョンは、背景画として注目されていないのです。

 確かに目標は大切であり、無視することはできませんが、それだけでは、機械的な生命力のない職場ともなりかねません。やはり、リーダーとしては、仕事の意義、大胆な夢、希望と喜びを語る必要もあるのではないでしょうか。

 夢を語るためには、勇気が必要です。実現の確信がなければそうそう語れるものではありません。しかし、勇気こそがリーダーに期待される特性であります。勇気と情熱をもって夢を語っていこうではありませんか。

夢を語る力② 「ヴィジョン」

②リアルゴールとしてのヴィジョン(夢)

 ヴィジョンとは、長期的な目標であり、夢と言い換えることができるかもしれません。古来から、ヴィジョンには不思議な力があると言われており、活きた夢を内面に育み、人に語り、努力を続けた人たちが、魅力的なリーダーとなり、夢を実現してきたのです。

 しかし、このヴィジョンは、それを思い浮かべた時に本当の心からの喜びを感じられるものでなければ機能しません。通常私たちが目標や方針を考えるときには、リアルゴールではなく、途中の手段としての目標に注目しがちです。

 たとえばダイエット目標を設定するときには、「1週間で3キロ減量!」「毎日、ジョギング、腹筋、腕立て伏せ!」「1日2食は、野菜のみ!」「継続は力なり!」「断ビール!」など、思い浮かぶ目標は、苦難と努力と犠牲の連続であり、それを見て心から喜べるものではありません。しかし、こうした喜びを感じられない目標は、ヴィジョンとして機能しないのです。ヴィジョンとは、本音でそうしたい、そうなると心から嬉しいと感じる夢であり、この場合は、「南国で水着を着て泳ぐ楽しむ自分の姿」こそがヴィジョンと言えましょう。

 ヴィジョンは、自分の人生のみならず、職場においても必要です。職場としてどんな未来像を理想とするのか?どんな夢があるのか?何を実現できれば心から嬉しいと感じられるのか?こうした問いに、リーダーとして向き合い、項目をあげて、自分の言葉として語れる必要があります。あなたの職場のヴィジョンはどんな事ですか?