月別アーカイブ: 2005年7月

大学生の自信力

2005年7月5日の朝日新聞朝刊で、大学生の「自信力」に関する記事が掲載されていました。
記事によると、慶応大学の河地和子教授が約2千人の大学生を対象とした調査で、他国の中学生よりも自信がないことが分かったとのことです。
調査は、03年4月~05年3月、首都圏9校の大学生2104人を対象にアンケートを実施したもので、判定は、ローゼンバーグの「自尊感情測定テスト」を用いたとのことです。
河地教授は、00年~02年、日本、アメリカ、スウエーデン、中国の中学生にも同様の調査をしており、今回そのデータと比較するため、自己を肯定的にとらえている答えをした割合を足した数値を「自信力」として、「自分を肯定的・積極的に受け入れる自尊感情」が、各国比較でどのようになっているのかを分析しています。
その結果、日本の中学生の自信力は、4カ国の中で、最低であり、日本の大学生の自信力は、日本の中学生には勝るものの、他国の中学生には及ばず、最高値を示したスウェーデンのおよそ62%程度にとどまったことが報告されています。

この調査は、平凡社新書から『自信力が学生を変える』が出版されており、そこに詳細が書かれているとのことで、私も早速取り寄せて一通り読ませいていただきました。

本の中では、学生の生の声も掲載されており、自分自身を表現する言葉として「投げやり」「自分が嫌い」「優柔不断」「中途半端」「自分が許せない」「何事も長続きしない」「自分はたいしたことない人間」など、大変痛々しい言葉が綴られていました。

本の中で、「自信力」は、生活や人生にとっても大きな影響を及ぼす要素であり、最近話題になるうつ病は、「自己評価が低い人に起こりやすいことが臨床上知られており」、自信力を高めることは、心の健康と言う観点からも重要であると訴えられております。

そう考えると、日本の若者の「自信力」の低さは、放っておけない問題であるように思えます。

この問題に対する改善策として、82%の学生が「教員が学生と授業外でもコミュニケーションをとる」をあげており、河地教授は、対策として、教員に対して、①学生参加型・ワークショップを取り入れた授業、②学生が外部社会と接触する機会や場の提供、などを提言されています。

まさに、教育の役割は大きく、その担当者の責任は重いといえましょう。

本件の調査分析は、『自信力が学生を変える』(著者 河地和子 平凡社新書出版)に掲載されております。本は、力作であり、現代の大学生の本当の意識を見事に再現しており、また、河地教授の大学生に対する愛情と教育問題に対する熱い思いが伝わってきました。
現在、文部科学省で教育改革が進められていますが、まさにこのような本を参考にして、日本の若者の自信力を育むことをテーマとする改革にすべきではないかと感じております。

いろいろな新人フォローアップ研修

 2005年7月10日の朝日新聞朝刊に、新入社員フォロー研修についての記事が掲載されていました。
 記事によると、厚生労働省の04年調査では入社3年以内にやめる若者は、大卒で35%。高卒で49%、03年調査ではフリーターは217万人、ニートは52万人と増加しており、企業においても離職問題に対する対策がとられているとのことで、各社の施策を紹介しています。
<ワタミフードサービス>
 福祉作業所や病院で、ボランティア体験を採用している。「接客サービスの原点である思いやりの心を学んでほしい(渡辺美樹社長)」というねらいの元で実施されているが、「ボランティア体験で初めて気づくことも多く、発見をきっかけに成長していく(社長室広報担当)」と報告されています。

<田崎真珠>
配属後、3ヶ月間にわたって、同性の先輩社員が1対1で指導し、毎日日誌を交換する政策を実施している。同社では、1年以内に辞める新入社員は約1割にとどまっている。

<JR東海ツアーズ>
窓口業務にあたる新人に先輩社員がつき、月ごとに業務の到達度を点検する「レベルチェックノート」を交換している。人事課では、「先輩の技術を見て『盗んで覚える』と言うだけではうまくいかない。ノートの交換で、弱点を知り、集中的に補強できる」効果があると言う。

<三井住友カード>
新人が独自のビジネスプランや改善案を提案する「チャレンジテーマ発表会」を実施している。
テーマ選びから情報収集など半年間準備して、役員や経営スタッフ50人が並ぶ行動で、スクリーンを使ってプレゼンテーションをするとのこと。
体験した新人は、「目標を定め自主的に仕事をする楽しさを実感した。一人前として評価してもらえ、自信もついた」と感想を述べている。

事例を見ると、やはり、新入社員とのコミュニケーションを積極的にとっていくことが重要なポイントであるように思えます。
人員削減で、職場も忙しく、また、IT化が進み、以前ほど会話が少なくなっている状況であり、放っておくと、新人は孤立し、いたたまれなくなってしまいます。若者の離職の理由についてよく「自分のやりたいことができない」と言った積極的な理由が取り上げられていますが、アンケート調査などを調べると、実際は、ハードな仕事と人間関係の問題にぶつかり、耐え切れなくて辞めていく状況が多いようです。

企業サイドでも、やはり、新入社員に対して、育てていく、関わっていく労力を惜しまずに、積極的に施策を打っていく必要があるのだろうと思います。

また、新入社員も安易に辞めてしまうべきではありません。いろいろな考え方があろうかと思いますが、私どもでは、企業人としてのキャリアに対して、
3年までは修行、
6年までは1人前、
9年まではプロを目指すべきと考えております。
また、そのために大事にすべきことは、
3年までは忍耐、
6年までは謙虚さ、
9年までは自分らしさを磨くべきと考えております。
ですから、入社3年間は、大切にすべきスピリットは、「Never Give Up」の精神であると声を大にしていいたいと思っております。
石の上にも3年と言われますが、まさにその通りであると思います。
縁あって入社した会社なのですから、粘り強く、夢の実現を信じて頑張ってもらいたいと願っております。

認知症と悲観主義の関係

2005年4月17日 Medical News Today.comにおいて、認知症と悲観主義傾向に関する調査研究の記事が掲載されました。

 この研究は、アメリカ・ミネソタ州メイヨークリニックのYonas Geda博士と同僚医師によるもので、研究の結果「悲観傾向や不安傾向の強い人は、30年から40年後に認知症となる危険性が30%~40%高まる」ことが分かりました。

 この研究は、1962年~1965年に、メイヨークリニックでの研究計画の一部として実施されたミネソタ多面的 パーソナリティ インベントリーを受けた50,000人から、Olmsted郡(ミネソタ)に住んでいるおよそ3,500の個人のサンプルを抽出し、医療データ収集や聞き取り調査を行い、どのようなタイプの性格や認知傾向が、認知症と関わっているのかを分析することを目的に実施されたものです。
 この研究の結果、「精神医学上の問題を持っているわけではないが、性格が悲観主義傾向にある人は、数十年後に認知症となる確率が30%高くなり、悲観傾向に加え、強い不安感を持っている人たちは、認知症となる危険性が、40%も高くなっていた。」ことが分かりました。

 Geda博士は、「この研究は、集団レヴェルの調査であり、それを個人レヴェルにそのまま適応できない」として「このように研究を解釈することに用心深くなければならない」としていますが、認知症が、性格や認知傾向と関わる可能性を示唆する大変貴重な研究と言えましょう。

 弊社では、自己効力感や認知傾向が、組織や個人のパフォーマンスに大きく影響を及ぼしていると考えており、健全でたくましい自己信頼感や人生に対する信頼、ありのままに認識する力の育成に取り組んでおりますが、悲観傾向や過度な不安が、単に生産性や創造性ではなく、認知症といった健康や生命にもかかわるような病気とつながっている可能性があると言うことは、衝撃的です。

 認知症の原因は、今の医学では、まだ分からないことが多く、いずれの理論も仮説として理解する必要があると思いますが、やはり、過度に悲観的になったり、不安にどっぷりと浸かってしまうことは、注意する必要があると言えましょう。やはり、明るく楽しく人生を謳歌することが、認知症の予防にもつながることは間違いないと言えましょう。
 人生において起こる事柄は、決して喜ばしいことばかりとは限りませんが、私たちは、断じて無力ではありません。闇の暗さに気が遠くなるときもありますが、光あってこその闇であり、また、光に勝る闇はありません。
 健康のため、豊かで幸せな人生のために、大いに前向きに生きようではありませんか。

日本企業の従業員満足度

 2005年5月13日の朝日新聞の朝刊に、米国調査会社ギャラップによる「職場への帰属意識や仕事への熱意」に関する意識調査の結果が掲載されていました。

 調査は、2005年の3月に電話番号から無作為に選んだ千人を対象に実施され、03~04年にすでに実施されていた他国の同様の調査データと合わせると、14カ国の仕事や帰属意識に関する意識を比較、分析することができるとのことです。
 
 調査結果によると、日本人の仕事に対する忠誠心や熱意が、
 「非常にある」  9%
 「あまりない」 67%
 「まったくない」24%
となっており、「非常にある」の9%は、調査した14カ国のうち、シンガポールに並んで最低であり、最も高い米国(29%)の3分の1以下だったことが分かりました。

 このデータによると、日本人の多くが、職場に反感や不満を感じており、会社に対する満足度は、世界の中でも最低クラスであると言えましょう。
 
 弊社では、ES(従業員満足)が、企業の成長と存続にとってきわめて重要な要素であると考えております。よく、企業戦略の柱として、多くの企業でCS(顧客満足)を訴えていますが、私どもは、顧客満足主義を主張する大前提として、働く従業員が仕事や職場に満足し、自信と誇りをもって仕事に従事できている必要があると考えているのです。
 だいたい、自分自身の今の仕事に満足していない人が、その仕事を通して他人に満足を提供しようとしても無理があると思いませんか?もしそのような努力をしたとしても、敏感な最近のお客様にとっては、無理がばればれであり、うそっぽいので、決して購買にはつながらないでしょう。

 そのような視点から考えると、今回のこのようなデータは、最近の日本の経営に何か大きな間違いがあることを証明しているのではないでしょうか?
 もちろん、従業員の問題もあるだろうとは思いますが、このような風土を作り上げてしまった経営スタッフの責任は否めません。ある意味、謙虚に、自分たちのマネジメントの方向性、施策、哲学をもう一度見直してみる必要があるのではないでしょうか。

 弊社では、従来のような「あめとムチ」による管理志向は、管理されるほうのうつを生み、生産性や創造性を生み出すことはないと考えております。それが通用したのは、情報がリーダーに集約していた過去の権威主義の時代であり、さまざまなことがオープンとなり、公開される現代では、もはや機能しません。未だに「あめとムチ」で頑張っている組織もあるのでしょうが、それが通用するという信念があるからこそと思いますが、よく現実をご覧になると良いと思います。
 そのような方法で、従業員は、輝いていますか?新しく魅力的なアイデアや商品は、生み出されていますか?ファンになってくれるお客さんは増えていますか?

 現実に、伸びている組織や企業は、決して従業員を虐待しません。尊重し、お互いに理解する努力をいとわずに、ともに協力し合える体制を作る努力を惜しまない会社こそが、飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びているのは、間違いのない事実です。

 もはや、人は、脅されたからといって仕事をするものではないし、にんじんをぶら下げられたからといって、それだけで本気を出すものではありません。人は、パンのみにて生きているわけではないのです。
 「あめとムチ」による管理は、「それが通用するはず」と思っているのは、単なる思い込みであって、現実ではありません。先日のJR西日本の事故にも象徴されるように、その方針を強めれば強めるほど自らの首を絞めることになるでしょう。

 米国では、そのことにとっくに気づいており、最先端の経営学やコンサルタントは、組織における人間性や愛の重要性を説いており、その成果を上げております。
 弱肉強食で、適者生存が謳われる市場至上主義の米国においても、単なる取引や契約ではなく、人の情熱や信頼、愛が組織の存続や成長に絶対不可欠であることを理解し、その対策をとり、パフォーマンスにつなげているのです。

 日本の企業も、いつまでも、旧時代の遺物にしがみついてはいけません。
 今こそ、もともとあった日本のよきスピリットを生かし、信頼と情熱に基づいた、明るさと楽しさと冒険に満ちた経営に切り替えていく必要があります。
 人は、本気を出せば、本当にすごいことができるものです。
 その可能性と潜在性を信じて、人を大切にする、お互いに理解を深め合い、協力し合える体制を作っていこうではありませんか。