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新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑪ステージ8 変革者

ステージ8 変革者

 魔法使いは、潜在意識の世界を探求し、常識や偏見、間違えた信念から解放されて、真実を理解する力を身につけていきます。そして、そのもっとも深いところで、理想の未来像であるビジョンを直覚します。そのビジョンは、過去から今までの延長上にあるものではなく、全く新しい理想であり、全く独創的で一見突飛なアイデアとなります。魔法使いは、潜在意識の深みで出会えた理想をこの世界で実現したいという強い情熱、使命感を持つようになり、ビジョンの実現に向けて一歩を踏み出すことになります。
 かくして、魔法使いは、変革者へと変容を遂げることになります。
 変革者が掲げるビジョンは、今までの延長上では考えつかないような全く新しい未来像です。それが実現した暁には、けた外れの富と名声、成長をもたらすイノベーションとなる可能性があります。変革者が求めるものは、改善ではなく、まさに革命なのです。
 ただし、変革者が歩もうとする道のりは平坦ではありません。ビジョンの価値を理解できる人は少なく、その実現を信じる人はもっと少なく、すなわち真剣に協力してくれる仲間を得ることは容易ではありません。技術的に乗り越えなければならない壁も多く、時間とお金をかけたからと言って成功する保証はどこにもありません。また、変革者のビジョンを実現するためには、旧来の方法を捨て去る必要があります。それは、創造的破壊であって、新しい創造を実現するためには、古い構造を破壊し、スペースを開ける必要があるのです。旧来の方法に慣れ親しんだ体制側にとっては、変革者の為そうとすることは、自分たちへの攻撃です。旧体制側にとっては、変革者の掲げる夢はたわごとで実現性のないばくちであり、価値のないお遊びなのであって、そんなもののために、今まで築き上げてきた大切なノウハウや技術を捨て去ることは背信行為なのです。結果、旧体制側は、多くの場合、変革者に反対し、邪魔をして、成功を阻止することに血道を上げます。ですので、変革者がプロジェクトを推し進めようとするときには、旧体制という巨大な権力を敵に回さなければならなくなり、すさまじい抵抗と妨害、攻撃を受ける危険性があるのです。
 しかし、変革者は、どのような障害があってもめげることはありません。どのような高い壁であってもあきらめることはありません。強い使命感と情熱を持っており、その強い意志は何物でも変えることはできません。なぜならば、自分が見たビジョンは、まさに天からの授かりものであり、その実現を天が味方してくれると信じているからです。実際に、変革者は運を味方に、極めて困難な革命をやり遂げることできます。変革者は、少ないながらも自分を信じてついてきてくれた協力者と固い絆を結び、そのチーム力をもってどのような難しい課題であっても奇跡的に乗り越えることができます。旧体制側の妨害行為に対してもひるむことはありません。大義名分を掲げ、旧体制側の矛盾と欠点を突き、切り崩して破壊し、空いたスペースに新しい創造を構築していくのです。
 こうして、変革者は、今まで通りの未来ではなく、全く新しい未来を創造することになります。それは、全く新しい商品、全く新しい生産方法、全く新しい技術、全く新しい手法から始まりますが、その影響の波紋は末広がりに広がり、経済のみならず社会や文化、世界のあり方にまで、不可逆的な変化をもたらすことになります。変革者は、改善者ではなくイノベーターであり、まさに世界に進化をもたらすのです。
 しかし、一方で、その変化は急激であり、大規模となります。新しい創造ももたらされますが、その代わりに、古い構造やあり方が破壊され、消え去っていきます。破壊され、消え去るものの中には、その変化に対応できずに、その変化を受け入れられずに、踏み台にされたことをうらみ、新しい成功に嫉妬し、怒りをもって変革者を呪い、復讐のチャンスを狙うかもしれません。もし変革者に、強引さや暴力、大義名分を失う失敗があれば、それをついて増々憎しみの勢力は増すことでしょう。ですので、変革者は、消え去る者たちの痛みをよく理解、共感し、配慮する必要があります。うらみは避けがたいとは言え、できる限り調和的に事を進めるように努力する必要があります。変革者の課題は、第一にそうした踏み台になる者たちへの配慮をすることと言えます。
 また、変革者の得たビジョンは、はじめから完璧で非の打ちどころのない青写真として生み出されたとは限りません。方向性は正しいかもしれませんが、その細部に至っては、多くの修正と調整、新しいアイデアや工夫が必要である場合が大半です。変革者が、自分のビジョンにこだわりすぎると、新しい創意工夫や修正の機能が働かずに、間違えた変化を起こしてしまう恐れもあります。イノベーションの力は強烈であり、間違えたイノベーションは、多くの人たちに不幸、最悪の場合は死をもたらします。ですので、不注意による過ちを犯さないような注意深さと努力が必要なのです。自分のバイアスや間違いを正すための最善の方法は、対話です。3人寄れば文殊の知恵という魔法は、真実です。変革者は、自分のビジョンを、信頼のおける仲間とともに検討していく必要があります。チームの対話力を通して、ビジョンをより完成度の高い正解へと磨き上げていくのです。その際、指摘を攻撃と感じて怒る狭量さや、人の意見に耳を傾けられない頑固さは、慎まなければなりません。大義は、世界に幸福をもたらすことであって、自己満足ではないのです。変革者にとっての2つ目の課題は、自分の中の狭量なエゴを乗り越え、仲間を信頼し、対話の魔法の力を信じて、チームとして事に当たっていくことだと言えましょう。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑩ステージ7 魔法使い

ステージ7 魔法使い

 達人は、心技体を鍛え、道を究めて、普通の人にはまねできない奇跡を実現できる力を身につけます。しかし、それだけ高いスキルをもってしても、人生に起こるもろもろの問題のすべてを解決することはできない現実に直面します。今のやり方では頭打ちであり、これ以上の問題には対処できないことを痛感するのです。また、達人は、道を究める上で、目で見て手で触れるものだけが全てではないことに気づき始めます。運などの非科学的で論理的に把握できない要素が結果に大きな影響を与えていることや物質的なものの背景にあるエネルギー的なもの、より精妙で分かりづらく、つかみどころのないものにこそ、大切な秘密が隠されれいることに気づき、直面している停滞感を打開するための突破口がそこにあるような気がして、見えない世界を探求し始めます。
 かくして、達人は、魔法使いへと変容を遂げることになります。
 魔法使いが探求しようとする世界は、とてつもなく深くて広い領域です。
 物理学の世界では、私たちが目で見て認識できる素粒子は、宇宙全体の4.9%に過ぎず、26.8%が暗黒物質(ダークマター)と呼ばれる未知の物質によって、68.3%がダークエネルギーと呼ばれる未知のエネルギーによって占められていると考えられています。物理学的な見地からは、私たちが世界だと認識している世界は、全宇宙の5%程度ですが、真実は、その大半が、現在私たちでは認識できない謎にみちているということになります。
 このような視点から考えると、私たち人間は、科学技術も進化していろんなことを知っているように思いこんでいるけれども、宇宙的な視点からすると、幼稚園児にもなっていない状況なのかもしれません。なにしろ、宇宙の95%以上の存在が、分からないのですから。
 物理学の視点に立つと、私たちが生きる基盤としている考え方や生き方、常識や政治も盤石なものだとは言い切れません。なぜならば、全宇宙の5%弱に過ぎない知識を基盤に構築されているからです。そこには、もしかしたら、大きな勘違いや思い込み、間違いがあるのかもしれません。全てを知っているつもりでいても、それは井の中の蛙であって、狭い了見の間違えた思想をもとに、裁いたり、批判したり、攻撃しあっているのかもしれません。
 魔法使いは、そうした常識の詭弁や間違いに気づくことで、常識を疑い、その支配から抜け出すとともに、常識では推し量れない領域の存在を知り、探求を始めます。魔法使いの周囲の人たちは、魔法使いが、妙なことを口走ったり、変なことに興味を持ち、やり始めたりすることを危うんで、常識を取り戻すように忠告しますが、魔法使いは、そのような指摘をものともしません。常識や権威の主張よりも自分の気づきの方が正しいという確信を持っているからです。
 魔法使いが求めることは、なぜこの世には苦しみがあるのか?なぜ病が起こるのか?死の意味とは?幸せとは?感情とは?人間関係とは?病を治す方法とは?よりよく生きる方法とは?など、常識や従来の科学では答えることができない問いに対する答えを求め、技術を得ることです。魔法使いは、邪を祓い、痛みを癒し、幸せをもたらしたいのです。
 魔法使いは、顕在意識ではたどり着けない答えを潜在意識の世界に求めて、心理学、カウンセリング技法、人間関係、チームと組織の活性化手法、などの科学的な専門書のみならず、さまざまな宗教書、宗教芸術、宗教の行法なども熟読し、自分の気づきと照らし合わせながら、理解を深めていきます。探求を通して出会うさまざまなご縁に導かれて、多くの師匠、先輩と出会い、多くの気づきや理解を深めます。呼吸法、瞑想法、ヨガ、太極拳などさまざまな手法を試み、相性の合う方法を修行し体得していきます。
 魔法使いが探求しようとしている世界には、日常の常識では認識することができない秘密がたくさん存在しています。そして、その秘密は、聴く耳がある人にしかささやかれません。準備が整った人にしか真実は開示されないのです。魔法の世界の探求を潜水に例えると、ダイバーは自分が潜れる部分しか見えません。浅くしか潜れないダイバーは、浅い部分しか見えません。自分が見ている領域を世界のすべてだと思い込みますが、実は、もっともっと深い部分にもっともっと大きな謎が隠されています。そして、その底の深さは、無限大。尽きることのない可能性がまどろんでいるのです。
 魔法使いは、徐々に今まで身につけてきた思い込みや誤解、間違えた信念を解きほぐし、真実に触れて理解を進めていきます。そして、その理解の度合い、修行の進み具合に応じて、世界の真実や秘密が開示されて、魔法の力を身に着けていきます。魔法の力と言っても、呪文を使うなどの特殊なものだけとは限りません。
 人の話を真剣に聴くことによって、人の痛みを癒し元気をとりもどす。
 やさしさや思いやりをもって人と接することでチームの雰囲気を変える。
 自分が変わることで、相手を変える。
 草花の美しさにしばし足を止めて、花を舞う蝶に機嫌よく挨拶する。
 世話をし、面倒を見ることで、人を病や死の危機から救い出す。
 唄い、ともに踊ることで、分離を乗り越え、共感の喜びをもたらす。
 コミュニケーションを改善し、愛を取り戻すことで、組織をよみがえらせる。
 3人寄れば文殊の知恵が起こり、話し合うことで正解に近づく。
 名づけ、物語ることで、人を勇気づける。
 いずれも、特殊な呪文や行法はありませんが、目に見えない力を使って人を癒し、元気づけたり勇気づけたりすることであって、まさに魔法の力と言えます。魔法使いは、目に見えない力の背景にある仕組みやダイナミズムの理解を深め、それらを上手に改善し、幸福をもたらす技法を習得していくのです。
 しかし、一方で、魔法使いは、自分の力不足で成果を出せない事や調子が悪い時にはうまく力を発揮できないこと、好不調の差が大きいことを苦にして、焦ってしまうこともあります。本来であれば、自分の成長の度合いに応じて開示される能力でもあるので、自分の未熟さを受け入れ、自分の可能性を信じてゆっくりと克服していくべき課題なのですが、時に、今結果を出せないことが原因で名声や評判を傷つけることを恐れてしまい、薬物などの他の力を使って手っ取り早く乗り越えようとしたり、トリックを仕掛けてだまそうとしたり、自己正当化の理論を信じ込ませようと洗脳しようとしたりする誘惑に負けることがあります。それは、甘い誘惑なのですが、安易な道であり、自分の真の成長を阻害すると同時に悪徳に身を染めてしまう罠でもあります。ですので、他への依存の誘惑を断ち切り、自分を信じて独立自尊を貫くことこそが魔法使いの一番目の課題と言えます。
 また、魔法使いの願いは、自他の幸福をもたらすことですが、その幸福が、敵を倒して勝利することであったり、誰かを陥れると言った、利己的で誰かを苦しませたり危害を加えようとする願望である場合もあります。魔法使いが、その願望を聞き入れて、その願いに自分の魔法の力で加担する場合は、それは黒魔術となり、邪悪な方法に身を染めることになってしまいます。魔法の世界には、天使もいれば悪魔もいます。どちらを選ぶかは、2者択一であり、魔法使いは、自分の意志の力を使って、どちらを選ぶのかを決めなければなりません。天使は決して勧誘しませんが、悪魔の誘惑は強力です。それは、くもの巣を張り巡らせてわなを仕掛け、巧妙に近づき、アメとムチでしばり、恫喝し、操作や陰謀で陥れます。自信を打ち砕き自尊心を損なわせた後に、甘い救いの手を差し伸べて支配し、搾取します。悪魔の誘惑は、死の恐怖に匹敵するくらいの強力な力を持っており、それを拒否して乗り越えるためには、大志と勇気と誠実さが必要なのです。この分水嶺で道を踏み外し、悪に転落する魔法使いも決して少なくありません。彼ら彼女らは、能力がなかったわけではありません。ただ、自尊心と勇気が欠如していただけなのです。魔法の世界を探求しようとこころざす者の2つ目の課題は、そうした罠があることを十分に理解して、大義や志に向けて、健全なる自尊心を胸に、注意深く罠を避け、どんな時でも自分が信じる良心に従って善を選ぶ勇気を持つことなのだと言えましょう。
 魔法使いにとっての3つ目の課題は、宇宙(神、サムシンググレイト)との連携を強化していくことです。魔法の力は、自分のエゴが生み出しているわけではありません。自分という狭い枠組みの中から生み出される力は、けっして宇宙をつかさどる偉大なる力にはかないません。魔法使いは、宇宙を信じ、自分を超えるものに対して尊敬の念を持ち、頭を下げ、手を合わせて感謝する謙虚さが必要です。そこには、人間関係と同様に、礼儀とマナーが存在します。それもただの形だけのものではなく、真剣さや誠実さと言った心の在り方も必要になるのです。
 ただ、宇宙や神、サムシンググレイトと自分との関係性は、直接的なものでなければなりません。その間をとりもつ介在者を入れてはいけないということです。宇宙を実感することは容易ではありません。その秘密は、深い深い海の底に存在しているのであって、水辺をうろついている現状では、なかなか手が届きません。神は偉大であり、自分のような者が直接かかわるなんておこがましいという思い込みや畏怖もあります。ですので、その間を取り持つことができる誰かに介在してもらい、神の代理人になってもらおうとするのです。介在者は、司祭のような人だけとは限りません。権威のある本、仏像、言葉、絵、などなど、代理人としての役割を担うと感じれるものであれば、どんなものでも介在者となりえます。しかし、それらは、決して神そのものではないことを忘れてはいけません。それは偶像崇拝の罠であって、それに救いを求めるということは、自分自身を信じる気概や直接に神とかかわることができる可能性を放棄してしまうということ、すなわち、人が生きる上で最も大切な使命を放棄してしまうという重大な間違いを犯してしまう事につながります。決して司祭や本、仏像を大切にしてはいけないということを言っているわけではありません。行を進める方法の一つとして活用することは、むしろ役に立つことだと言えますが、それらを神として信仰することは間違いにつながるということを忘れるべきではありません。
 宇宙を構成する物質と、人の肉体を構成する物質は同じものです。ですので、人と宇宙は本質的には同じものです。ただ、一滴の海水と海は本質的に同じものとはいえ、その偉大さには絶大な違いがあるのと同じように、人と宇宙は同じものとはいえその偉大さには絶大な違いがあります。だからと言って、全く縁がないものではありません。むしろ、本質的には人は宇宙であり、人は、直接的に宇宙を自分だと感じ取ることができる能力をまどろませているのです。だから、その可能性を放棄してはいけません。自分の中にまどろむ力を信じて、他に依存することなく、独立自尊の精神を忘れずに魔法の世界と向き合うことが大切なのだと言えましょう。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑨ステージ6 達人

ステージ6 達人

 戦士は、目の前に立ちはだかる障害や壁にひるむことなく、自分の能力を高めることを通して強くなり、乗り越えます。しかし、戦士が強くなればなるほど、内面の悩みが多くなり、問題も多発します。新たに現れる敵もますます強くなり、外面の問題への対処を迫られます。また、問題解決能力が高まり、不確実でリスクが伴う戦いや挑戦に対しても勝利できるようになると、周囲の期待もより大きくなり、さらなる能力と責任を担う必要に迫られるようになります。戦士は、内面を見つめることによって人間的に成長を遂げ、さらに問題解決のスキル、職務遂行能力、専門的な技術をより高く磨くことを通して、多発するさまざまな問題に立ち向かうことになります。
 かくして、戦士は、達人へと変容を遂げることになります。
 達人が成長するプロセスは、決して甘いものではありません。乗り越えなければならない壁も決して低くはありません。学問に王道が無いように、達人への近道はありません。達人が学ばなければならないことは、内外ともに無限であり、それも、数々の試練を通して体験的に学ばなければならないものであり、大きな苦痛も伴います。それは、まさに、過酷な道、試練なのです。
 内面的には、心の中の平和とセルフリーダーシップを取り戻すことによって、過度な緊張から解放されて、リラックスと集中のスキルを身につけます。リラックスは、弱いことでもだらしないことでもありません。それは最強最善のスキルであり、最も目的にかなった行動を、最も効果的なタイミングで、最も効率よく、最も最適な力で実行し、驚くような成果を出すことができます。
 但し、このリラックスのスキルを体得することは、容易ではありません。自分の中の平和を取り戻すためには、自分の中に存在している痛みや苦しみ、憎悪や悲嘆を癒やしていく必要があります。しかし、そうした痛みをもった小さな自分のパーツの数は無限であり、海を満たす水滴の数ほどあるのです。瞑想や内観を通して、自分の中の問題と向き合い、癒し、痛みのエネルギーを少しずつ開放していきます。しかし、それはカメの歩みのようにゆっくりであり、成果を出すためには根気と粘り強さが必要です。また、目に見える効果を実感できないので、こんなことを続けても何の役にも立たないのではないかという迷いが生まれますが、それを乗り越えるだけの強い信頼と意志が必要です。さらに、自分の中の痛みを見つめて行くことは、決して楽しいことではありません。体験した時と同じだけの痛みを再体験することも多く、その苦しさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。
 達人は、このような過酷な試練の登山道を歩みます。着実に、一歩ずつ、時に疲労困憊し、倒れても、しばし休み、再び立ち上がり、前を向いて歩んでいきます。たとえ牛歩の歩みでも、着実な一歩は、目に見えないほどの着実な成長と変化をもたらします。数週間、数か月、数年という根気強い努力を続けることによって、達人は、ゆっくりと成長し、ゆっくりと変化していきます。次第に、苦痛と絶望は穏やかになり、気高く精妙なエネルギーに気づく感受性を取り戻し、みずみずしい生命の力強さと喜びを取り戻しながら、達人は、徐々に、リラックスと集中のスキルを体得し始めます。そして、うまくいくかどうかが分からない課題に対して、単なる成功を超えて、人の期待をはるかに超えるような驚くべき成功を成し遂げることができるのです。
 外面的には、自分が取り組む課題、芸術、仕事、芸道、武道、などのスキル高めるための方法をあらゆる角度から探求し、成長の計画を立てて、忠実に実践し、スキルを磨いていきます。徐々に腕を上げ、自分独自の方法を編み出し、誰も真似できない高度な専門性とスキルを身につけ、創造的で美しく、常人には真似できない達人の境地に至ります。
 但し、達人の境地に至る事は、容易ではありません。そのためには、身体的には、整った体と姿勢、鍛えられた筋力、強く揺るがない体幹、しなやかで無駄のない美しい身のこなしが必要です。前述のリラックスと集中のスキルで磨かれた穏やかでパワフルな心も必要です。さらに、掃除などの人目につかない下積みの地道な仕事を続け完ぺきにこなす基礎力、気の遠くなるほどの繰り返し練習、人知れず重ねた努力、道を究めようとする情熱を通して磨き抜かれた技術も必要です。こうした心技体を体得することは、ラクダが針の穴を通るくらいに困難です。
 達人は、このような過酷な試練の登山道を歩みます。達人は、着実に、一歩ずつ、時に疲労困憊し、倒れても、しばし休み、再び立ち上がり、前を向いて歩んでいきます。たとえ牛歩の歩みでも、着実な一歩は、目に見えないほどの着実な成長と変化をもたらします。数週間、数か月、数年という根気強い努力を続けることによって、達人は、ゆっくりと成長し、ゆっくりと変化していきます。次第に、自分独自の独特な手法や方法を編み出して奇跡を生み出す力を発揮できるようになります。その成功の秘訣は、独創的かつ特殊で秘伝的です。達人の真似をしたからと言って、同じように成功はできません。それは、余人をもって代えがたい、達人にしかできないことなのです。
 達人の作品は、どれも驚くべきものであり、依頼者は、期待以上の成果を手にすることができて、その作品に魅了され喜びます。こうして達人は、多くのファンに慕われるようになり、高い人望と絶大なる信頼が寄せられることになるのです。
 達人は、そのような修行のプロセスを通して、頼もしいパートナーや友人たちと出会うこともあります。その友人たちは、傷ついた子供や放浪者のころに出会った友人たちとは異なり、単なる遊び友達ではなく、仕事上の心強いパートナーとなります。達人は、新しい仲間、ソウルメイトたちと困難が多い修行の道を助け合って歩み、難しい仕事を協力し合って成功させていくことになります。こうして、達人は、表面的ではない深い信頼関係、絆を育む力を得ることもできるのです。達人が作り上げるチームは、まさに最強のチームであり、高度な専門家集団です。達人は、頼もしい仲間とともに、リーダーシップを発揮して、見事に困難なプロジェクトを成功に導いていくのです。
 しかし、一方で、達人は、一本気であり、わき目もふらずに一つのことを究めるので、視野が狭くなりがちです。もっと別の視点から見たならば、より良い解決策が見つかる可能性があるのに、自分の視野の狭さが邪魔をしてして、立ち位置を変えることに抵抗します。一芸を究めることは大切であり、それが差別化をもたらす源泉となりますが、その技だけで今後のあらゆる問題を解決できるとは限りません。技の陳腐化を防ぐためには、多様な視点からの探索と技術革新が必要であり、そのためにも、いわゆる“あそび”が必要なのです。一本気すぎて他を排除するのではなく、一見無関係に思えることであっても興味を持ち、見聞を広げる余裕が大事です。
 また、達人は、あまりにも真剣で、その意味で仕事の鬼であり、仕事ばかりに集中します。それは決して技を磨くという意味では悪いことではないのですが、睡眠時間や食事の時間、楽しい家族との対話、余暇の時間をないがしろにして仕事だけに取り組むことは、決して健康的とは言えません。それは仕事中毒であり、仕事に人生を依存している状態でもあります。バランスの良い生き方こそが、より高度な技につながることを鑑みても、ワークホリックではなく、人生の多様な側面を楽しむということはとても大切なことでしょう。
 以上のことから、達人にとっての課題は、遊び心を忘れず見聞を広げること、そして、バランスの良い生活を楽しむことと言えます。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑧ステージ5 戦士

ステージ5 戦士

 求道者は、苦悩を乗り越え、人生の課題を解決するための方法を探求し、ついに解決策を見出すことができます。しかし、実際に解決に乗り出そうとした場合には、いままでの自分を形成していた日常の環境や習慣、考え方ややり方のままでは成功しません。かといって、どのようなあり方や考え方、やり方が通用するのかは見当もつきません。求道者は、住み慣れた故郷を離れ、家族や仲間と別れ、未知なる世界、希望と危険に満ちた全く新しい世界に乗り出す必要があります。放浪者は、手に入れた知識や武器に勇気づけられて、危険を承知で未知なる冒険に乗り出すことになります。
 かくして、求道者は戦士へと変容を遂げることになります。
 戦士は、慣れ親しんだ自分の居心地の良い部屋、習慣、生き方を捨て去り、家族を守るため、ドラゴンを倒すため、夢を実現するため、自分の弱さを克服するための旅に出る覚悟を決めます。
 戦士は、勇気と力と高潔さをもって敵に立ち向かいます。目標を定め、計画を練って、果敢に挑戦して成果を出します。時には自分や仲間を守るために勇敢に戦いを挑みます。戦士は、ただ単に強く手段を択ばない暴君ではなく、気高く高貴な正義の騎士なのです。
 戦士は、多くの戦いや挑戦を経て、どんどん強くなっていきます。どう転ぶかわからない不確実な戦いに挑み、多くの経験を経て戦いを有利に進め、勝利をもたらす力を身に着けていきます。放浪者が先を見通せる事だけしかできなかったのに対して、戦士は、不確実で成功の保証がない課題に取り組み、高い確率で成功をもたらすことができるようになります。すなわち、不確実性への耐性を体得することができるのです。また、困難な逆境にあっても、決してあきらめずに立ち向かう強靭な精神力、粘り強さを体得していきます。さまざまな不安にひるまずに率直に言うべきことを言う自己主張の力、説得し納得を引き出すプレゼンテーションの力を身につけます。
 慣れ親しんだ環境を後にして新しい世界に入ろうとする際には、必ずそれを阻止しようとする力が立ち現れてきます。ヒーローズジャーニーでは、それを「門番」と呼んでいます。門番は、異なる2つの世界の境界にいて、境界を出入りする人を監視し、管理します。旅に出ることを決めた戦士にとって、門番は、最初に出会う敵となります。門番は、故郷を後にしようとする戦士の邪魔をして、旅立ちを阻止しようとするのです。それは、故郷を後にするものを裏切者扱いにする嫉妬深い人であるかもしれませんし、法律のような制度であるかもしれません、逆に、戦士を心配し、戦士が未知に挑戦することを危険視するあまりに、おせっかいをやく親かもしれません。また落とし前をつけろと脅す戦士を搾取する者たちであるかもしれません。さらに、戦士自身の冒険への不安や恐怖である場合もあります。いずれにしても、門番は、何らかの理由、たいていの場合は狭く勝手な了見で、戦士の旅立ちを阻害します。戦士は、まずは、その者たちに対して、上手に立ち向かい、乗り越える必要があるのです。
 戦士は、門番に対して決して逃げることなく立ち向かいます。門番を乗り越えるためのさまざまな作戦を練って、検討し、果敢に出陣するのです。もちろん、面と向かって戦い、門番を倒し、打ち負かすことで乗り越えることもできますが、方法はそれだけではありません。門番が寝ているすきをみて素早く通り過ぎる方法もありますし、荷車の荷物に紛れて通り過ぎる方法もあります、通過を許されている何者かに変装して門番を上手にだます方法もあるでしょう。理想的には、話し合い、門を出る必要性と意義を理解してもらい、旅を応援してくれる仲間になってもらうのが最高です。
 そもそも、門番は、門番としての使命を持っており、戦士にとっては旅を邪魔する障害となる者ですが、決して敵や悪者ではありません。できるだけ門番を傷つけずに脱出できるのに越したことはないのです。戦士は、この門番への対処法を通して、まさに今までに学んだ事柄のテスト、力量を問われることになります。
 いずれにしても、戦士は、こうして、障害から逃げることなく直面し、作戦を練って果敢に挑戦し、見事に高い壁を乗り越えて、戻ることのできない未知なる冒険へと乗り出すことになるのです。
 戦士が恐れるものは、自分自身の弱さ、能力不足です。自分の中にある弱さや能力不足を、何度も何度も練習を繰り返し、克服していきます。敵に勝つなどの具体的な目標を設定し、それを実現する能力を獲得するために学習計画、鍛錬のスケジュールを定め、強い意志で訓練を続け、成長していくのです。それは、自分の中の弱さと戦い、打ち負かそうとするプロセスでもあります。戦士は、自分の中の怠け癖、わがまま、悪の傾向、私利私欲を求める心、移り気、いい加減さに対して、無慈悲で厳しい態度で臨みます。それらを発見するたびに、自分を叱り、責め、否定して打ち負かそうとするのです。
 そうしたストイックな態度は、戦士の急速な成長をもたらします。戦士はあっという間に力をつけて、能力を高めます。以前の自分とは比べ物にならないくらいの力強くたくましい存在になるのです。
 しかし、一方で、自分の中で否定された弱さや欠点は、決して消え去ることはありません。光あるところに影ができるように、弱さや欠点は切り離せない自分の一部であり、どんなに戦士が強くなっても、それらは影のように存在しています。普段は戦士の厳しい態度に打ち負かされて身を潜めますが、戦士の気力が弱まった時や心理的な困難で集中力を失ったときには、心のすきを縫って自己主張し、戦士を増々困惑させる事態を生むことになるのです。戦士は、そうした弱点の反撃に会うたびに、自分の中にある欠点をぬぐえないことに対する罪悪感や恥を感じ、弱点を嫌悪し、恫喝し、破壊しようとします。完璧な戦士になろうとして、正義を貫き、時には自己犠牲の精神で、自分の命をも捨てる覚悟で戦いますが、たとえそれができたからと言って、欠点を克服できたわけではありません。完璧になろうとする試みは、決して成功しません。光があれば影ができるように、長所があれば欠点が生まれてくるのは宿命です。また影は実体ではなく、光の欠如であり、光が強ければ強いほど濃くなります。同様に、戦士が強くなればなるほど、弱さや欠点も強くなり目立つようになるのです。
 こうして、戦士の外面的な成長とは裏腹に、内面では、徐々に葛藤が強まり、苦悩は増していくことになります。この葛藤は、放置しておくと、ますます悪化して、後に大きな問題やトラブルにつながる原因となっていく危険性があります。
 また、内面の葛藤は、外面にも影響を及ぼすようになります。戦士は、自分の内面の弱さを憎み、攻撃するように、他者の弱さや欠点に対しても厳格です。他者の弱さを指摘し、反省を促し、克服する努力をするように忠告します。しかし、他者の弱点や欠点も、自分同様に光あるところの影であり、決して無くなることはありません。攻撃を受けて身をひそめることはあるでしょうが、チャンスを見て反撃をすることもあるでしょう。戦士は、反撃にあえば会うほど、過剰に警戒し防衛するようになり、弱点への攻撃は、ますます無慈悲になり、過酷になります。戦士の攻めが強くなればなるほど相手の防衛と反撃も強まるので、ますます自他の葛藤は強まります。葛藤に勝つために、戦士の忠告は警告になり、次第に恫喝へと変わっていきます。時には、虐待や暴力につながる危険性もあります。そうなると、もはや正義の味方ではなく、暴君であり虐待者、悪への転落者となってしまいます。
 そうした罠にはまることなく、戦士が本質的に強くなるためには、意識的にこの内面と外面の葛藤を解決するよう努力する必要があります。
 戦士に必要な課題のまず一つ目は、何のために弱さと戦うのかについての大義を忘れないようにすることです。弱きを助け強きをくじくという志の下では、弱者に対しての慈悲を忘れることはないでしょう。しかし、大義を失い、私利私欲に走ってしまうと、容易に恐怖や怒りの感情に飲み込まれて、暴君や虐待者になってしまうことでしょう。
 2つ目の課題は自制心を持つことです。自制心とは、自分を律すること、自分の内面の多様性を統合するリーダーシップを言います。自制心は、弱点を決して否定しません。かといって、放置もしません。暴れ馬に手綱をつけて静め上手に乗りこなすのです。自分にとっての障害を見境なく敵と見立てて戦うのではなく、上手に向き合い、コントロールするすべ=自制心を学び取ることが大切です。
 3つ目の課題は、受け入れる度量を身につけることです。まずは、自分や他者の欠点、弱点は、影のような存在であり、けっして消し去ることはできないことを理解し、それを受け入れることが必要です。自分が恐れるものは自分の影であることを見極めて、恐れから戦いを挑むことを止めることが大切です。恐れてやみくもに剣を振るうのではなく、存在を受け入れ、良く観察して、光を当てていくことが大切なのです。認められた欠点はもはや敵ではありません。光が当たった欠点はもはや障害ではありません。それは、免疫力であり、注意深さであり、健全な防衛力となります。受け入れる度量は、狭量な偏屈さ、頑固さを和らげ、敵を少なくすると同時に、味方を増やし、最終的には戦力の増強につながるのです。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑦ステージ4 求道者

ステージ4 求道者

 放浪者は、成長へのいざない、変容を促す呼びかけを拒否し、現状を維持することを選び、さまざまな困難から逃げまどい、楽しみを求めますが、いつか決して逃げ切れることができないことを悟り、自分の問題に向き合い、その解決策を真剣に探求するようになります。
 かくして、放浪者は、求道者へと変容を遂げることになります。
 求道者は、問題から逃げずに直面する勇気を取り戻し、逆境や困難を乗り越えるためのあらゆる方法を探求していきます。問題の根本的な原因、問題を解決するための方法、苦悩の原因、因果の法則、問題の科学的な分析、心理学、宗教学、など、さまざまな勉強と探求を進めるに従って、この世界に対するより深く正確な知見、自己反省と成長、健全な批判精神と論理的思考力、問題の本質と問題解決に至るための方向性と方法を学ぶことができます。
 求道者が求めることは、問題の原因を知ること、そして、その解決方法を知ること、または手に入れることです。求道者は、逃げまどうことをやめて、立ち止まり、強い意志をもって振り向いて、自分の問題に向き合います。
 「門を叩け、さらば開かれん。」の言葉通り、求道者の道を求める願いが強ければ強いほど、不思議な偶然が起こり、道を開くためのヒントをさまざまなところから得ることができます。どう解決すればよいのかわからなくて悩んでいたが、たまたま立ち寄った本屋さんで見つけた本で突破口を開けた、偶然に出会った見知らぬ人が、いろいろなことを教えてくれるお師匠様になってくれた、やけっぱちになって蹴とばして壊してしまったツボの中から探していた物が見つかった、街を歩いてふと見かけたオーディションに応募したことで思いもよらない未来が開けた、などなど、不思議な共時性というものは、実際に起こるものです。
 しかし、それは、原因が無ければ結果は起こりません。問いがあるからこそ応えがやってくるのです。こうした運命のいたずら、女神の微笑みの幸運と出会うためには、十分な準備が整っている必要があります。放浪者は、自然児、傷ついた子供、放浪者の体験を十分に乗り越え、求道者として問題意識をもって、問題はなぜ起こったのか?どうすればよいのか?を求める強い意志をもったことによって、準備を整えたことになります。そして、自ら汗水たらして行った努力の何十倍もの価値がある宝物、知識や武器、ツールや叡智などのさまざまな形の賢者と出会うのです。
 しかし、一方で、求道者は、柔軟性のなさと疑い深さ、完璧主義、理想主義、狭量による厳格な態度と言った欠点もあります。こうした欠点の度が過ぎると、求道者はせっかくのチャンスを逃してしまうことになります。
 求道者が批判精神や思考力だけに凝り固まり、感受性を失ってしまって、やさしい目や好奇心、聴く耳を失ってしまったら、こうした教えも手にすることはできません。自分に自信がなかったり偶然の幸運を疑って信じられなければ、訪れたチャンスをただの気のせいだと思い込み、目の前の宝を無視してありもしない宝を探し始めることになってしまいます。共時性や幸運は、論理的思考力ではとらえることができない次元の要素であり、この世には分からないことや不思議があることを受け入れる度量が無ければそれを受け止めることはできません。求道者は、自分が十分に準備を整えていることへの自信と、幸運に心を開く信頼感、聴く耳を持つことが大切です。
 求道者が恐れることは、罠にかかること、間違えること、完ぺきではないことです。
 求道者が出会う教えが、全て適切で正しいものとは限りません。そこは玉石混交の世界であり、間違えた教えを真実と勘違いしてしまう罠もあるのです。求道者には、真実とうそを見極める選択眼が必要なのです。
 また、求道者は、完ぺきではないこと、そこに少しでも影があること、間違いがあることを嫌うあまり、問題解決のための求道というよりは、理想主義や完璧主義の隘路にはまり、完璧な方法や、非の打ち所がない仕組みを求めることもあります。目的が問題解決から求道そのものに切り替わってしまうのです。理想を追求するあまり、次から次へと指導者や教えを巡り歩き、ジプシーを繰り広げることもあります。そうした探求が、最終的な問題解決につながる可能性もありますが、時には、放浪者と同じように、本質的で見たくない問題から逃れるための言い訳となっている可能性もあります。あくまでも目的は探求ではなく問題解決であることを忘れてはいけません。  
 求道者にとっての課題は、人生に対する自信と信頼の回復、偶然の出会いやヒント、ひらめきを大切にしてないがしろにしないこと、うそを見極める目と論理性、そして行き過ぎた理想主義や完ぺき主義を乗り越えることになります。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑥ステージ3 放浪者

ステージ3 放浪者

 傷ついた子供は、自分を害するさまざまな出来事に傷つきますが、それらの出来事は、未熟な今の在り方を指摘し、より高い成長を促すメッセージでもあり、そのピンチをチャンスとしてとらえ、自らの成長に向けての努力をする必要があります。しかし、多くの場合、今まで慣れ親しんでいたあり方、考え方、習慣、態度を変えたくない気持ちが強く、現状を維持することに固執して、新しいチャレンジをすることを拒否します。
 しかしながら、未熟な現在のありようを続ける限り、痛みを伴う体験=変容を促すメッセージはとめどもなく起こり続けることになり、傷ついた子供は、そうした痛みから逃れるためのあらゆる方法を探ります。
 かくして、傷ついた子供は、放浪者へと変容を遂げることになります。
 放浪者は、恐怖や苦悩から逃れるためのありとあらゆる方法を探していきます。助けてくれる人、機関、知識、科学、宗教、気晴らし、束の間の楽しみ、趣味、悩みを共有して相談できる友人、などなど、痛みや苦しみ、内面の傷の疼きから逃れるためのさまざまな方法を研究しながら見聞を広げ、まともにぶつかりあわずに上手にかわす方法、たとえ投げ飛ばされても上手に受け身をとって怪我をしない方法、ディフェンスの技術を身に着け、次第にたくましくなります。友人と友情をはぐくむ方法や、時には逃げることも大切だということ、困難の中でもリラックスをして楽しめる自分なりの方法などを学びます。
 放浪者が求めることは、困難から逃れること、今の自分の在り方や日常の習慣を維持して変えないこと、執着している何かを失わないことです。不満や問題があることは知っていても、放浪者にとって日常は、これ以上の危険性のないそれなりに安心できる場所であり、居心地の良い領域なのです。また、自分に降りかかった課題に取り組むためには、全く新しい希望と危険が待ち受けている未知の世界に踏み出さなければならないことを知っており、自分がそこでやっていける自信がなく、怖気づいているのです。
 しかし、この世に変わらないものなど存在しません。今の自分の在り方も日常の習慣や生活も、時間の流れとともに変わっていくものであり、成長を促すメッセージは、良いこと悪いことの両面からさまざまな形で次々に訪れて来ます。放浪者は、この変化への呼びかけを拒絶し、変わらないことを選ぼうとしてあがきますが、決してその望みはかなえられることはありません。
 放浪者は、さまよい逃げまどいながらも、明るさを忘れず、束の間ではありながらも楽しさや喜びを求めます。仲間ともに語り合い、気晴らしのゲームを楽しみ、ちょっとした冒険を繰り広げながら、次第に子供っぽさから卒業し大人の流儀を身にまとうようになります。周囲の人たちにとって、放浪者は、痛みを分かち合える気のいいやつであり、助け合える良き友です。苦しみの中にあっても明るさを忘れず、楽しく明るさをもたらし、場を盛り上げてくれる仲間なのです。
 しかし、一方で、放浪者は、そうした狭く小さな世界の中の限定された安定の中から出ようとしません。自分の中に課題があることを知っていながら、その問題を先送りしてばかりで直面しようとしません。問題を乗り越えるための努力をする代わりにそのような野暮な努力を冷笑します。真実に向き合う代わりに嘘をついて誤魔化します。苦しみに直面する代わりに気を紛らわせるための束の間の楽しさに依存します。友情を大切にする一方で気に入らない人や嫉妬を覚える人には関係改善の努力をせずに冷淡に突き放します。間違いを正そうとする代わりに仲間外れになることを恐れて悪行につきあいます。仲間受けを良くするために蛮勇をみせて虚勢をはることはありますが、基本的には失敗を怖がって挑戦をしようとしません。放浪者は、放浪を通してさまざまな知識や技術を磨き、多くのことができるようになりますが、それは、あくまでも限定的なもの、先が見通せて確実に解決ができることが保証されている問題への対処法であり、広い世界の中の不確実な事柄には対処できません。放浪者は、本質的により大きな可能性を持った存在なのであって、そのような狭く限定された力にとどまり続けることはできません。どんなにごまかしても、成長への課題や高い壁は消えることはありません。どんなに打ち消しても、自分の内面で芽生えた理想や夢は打ち消すことはできません。長い目で見た場合には、いつかは心地よい日常、自分にとっての楽園を後にして冒険に出る必要があるのです。
 放浪者にとっての課題は、自分自身の可能性を信じること、執着を手放すこと、夢を持つこと、そして、ちょっとした挑戦をすることと言えます。ただし、大それた挑戦やリスクテイキングは必要ありません。ちょっとした勇気が大切なのです。行ったことのない所に行ってみる、食べたことのない食べ物を食べてみる、着たことのない色の服を着てみる、難しそうな本を読んでみる、正直になってあやまってみる、自分の弱みを言ってみる、相手に愛を伝えてみる、などなど、大きなことをすることに意味があるのではなく、ちょっと勇気が必要なことを丁寧に挑戦し、じっくりと味わってみる、そんな身の丈に合った挑戦が意義ある成長に結びつくことになります。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ⑤ステージ2 傷ついた子供

ステージ2 傷ついた子供

 天真爛漫な自然児ですが、いつまでもそのままのあり方ではいられません。内面に自己中心的で周囲への配慮が欠けたわがままなあり方がある限り、周囲からの指摘や注意、叱責を受けることになります。人との一体感を喜び、無条件で愛し愛されることを期待する自然児は、相手と自分が分離して心理的な距離が生まれたことや叱責されてありのままの自分が否定されたことに驚き、孤独感を感じショックを受けますが、そのような事態を拒否や無視をし続けることもできずに、楽園の在り方から好むと好まざるとにかかわらず放り出されて、自分の欠点を補い、自立への道を歩むことになります。
 こうして、自然児は、この世の暴力、裁き、コントロール、恐怖、恫喝、怒り、悲嘆の洗礼を受けて、傷ついた子供へと変容を遂げることになります。
 傷ついた子供は、やさしくない、思いやりのない、愛のない態度、暴力、嘲笑、差別、酷い扱いを受けることによって、この世の現実を学ぶことになります。自然児が、困難に直面した時に、泣いたり微笑んだりして人を操ろうとするのに対して、傷ついた子供は、その方法にも限界があることや本質的問題解決にならないことを悟り、自立する必要があることを感じて、自立心を養うことができます。また、傷ついた子供は、痛みの体験を通して、自分の内面を反省し、成長につなげていく力を養います。さらに、傷ついた子供は、痛みを知ることを通して、他者の痛みもわかるようになります。痛みをもたらすものに対抗しようとする正義感とともに痛みを持った者への共感を学び、やさしく強くなるのです。
 傷ついた子供が求めるものは、再び心からの安心と安定を感じること、再び楽園に戻ることです。しかし、残念ながら、現実が楽園ではない以上、その望みはかなえられることはありません。どこを探しても楽園はこの世には見つけられないのだという確信、絶対の正義はないのだという気づき、依存ではなく自分で作らなければならないのだという覚悟を得るまでは、希望のない探求が続きます。
 傷ついた子供は、自分で自分の面倒を見ることを通して、人の世話をする力を養い、人の面倒を見ることができるようになります。自分同様に傷ついた弱いものをみると、湧き上がる正義感に基づいて、弱い者たちを守り、よく面倒を見ることがあります。傷ついた子供は、自分よりもっと弱い者たちに対する救済者、やさしい兄、姉なのです。時に、悪や権力に立ち向かい、反撃する反逆者となることもあります。傷ついた子供は、弱い者たちのために立ち上がる勇者でもあるのです。
 しかし、一方で、傷ついた子供は、自分に起こる障害やトラブル、痛みが、起こるべきではなかったことであり、それが起こってしまったことによって自分は被害を受けた被害者であると認識しています。悪いのは自分ではなく相手や出来事の方で、変えるべきは自分ではなく相手であると考えるのです。それは、多くの場合傷つきなくないという思いから、または、自分が正しいと言う先入観からやってくる誤解であって、真実ではありません。しかし、一旦出来上がった被害者意識の考え方、自己憐憫、ゆがんだ自己イメージの枠組みは、その後の人生にも長期にわたって影響を与えることになります。
 こうした考えは、ヒーローズジャーニーの視点から見ると、必ずしも妥当とは言えません。どのような英雄譚であっても、苦労や痛みのないものはありません。この世で生きる限りは、どのような人であっても困難や痛み、苦悩はつきものなのだということを意味するのだろうと思います。ですから、体験する困難は、起こるべきではなかった不運な事故なのではなく、成長のための必然だったとも考えられることができます。たとえ耐えられない苦痛であっても、起こった出来事には必ず前向きな意義が隠されている。だから、そこからの教訓や気づき、学びを得て、成長につなげることが大切なのだと言えるのです。
 また、傷ついた子供は、不快な出来事、嫌味で嫌いな人たち、苦悩や困難に出会うと、不平や不満がたくさん沸き起こってきて、時には人に愚痴をこぼしたり、反撃に出たり、落ち込んだりします。まれに、度が外れた危険な暴力に打って出たり、自傷行為など極めて危険な行為に及ぶ場合もあります。そうした態度は行動は、被害者意識や正義感から起こるものではありますが、そのような正義感は、多くの場合、自分勝手な狭い了見で解釈された誤解や思い込みであり、自分は正しく妥当だと思っても、他者の共感や賛同を得られることはなく、トラブルを引き起こす原因となります。
 また、ヒーローズジャーニーの視点からも、いつまでもそのような態度でいることは慎んだ方がよいということになります。なぜならば、不平不満、愚痴ばかりを言うだけで一生を費やす英雄の人生など存在しないからです。何につけ、人のせいにして文句ばかり言っているのでは、成長することはできません。人は、無意識でいると、自分で気は気づかないうちに自己防衛機構が働き、自分を顧みずに自分は正しくて相手が間違えている悪であると決めつけて文句を言いがちになりますが、それは自己防衛プログラムの自動反応のなせる業であって、決して真実ではないし自分らしい本来の在り方ではありません。自分らしく楽しく幸せな生き方を志すならば、起こる出来事を良くも悪くも受け止めること、どんなことが人生の中で起こっても、それは起こるべくして起こったことと歓迎し、受け止めることが大切なのだと言えます。
 傷ついた子供が、最も恐れることは、虐待されることと搾取されることです。そして、そうした自分では解決が難しい事態や困難に出会った時に対処する方法は、他者に助けを求めること、もしくは、相手に追従することです。誰かにこの窮地を救ってくれるように助けを求めるか、虐待者に対してその要求に追従することによって難を逃れようとします。しかし、助けを求めるにしても自分の窮地や弱みを正直に語る勇気が無ければ難しいし、虐待者の要望に答えたからと言って難を逃れられるとは限りません。もっと酷い要求を突き付けてくる可能性だってあるのです。そこで必要なことは、追従するのではなく勇気をもって断ることなのだと言えましょう。
 傷ついた子供にとっての課題は、困難を受け入れること、自分の弱さを受け入れること、謙虚であること、心を開いて自分の弱みを正直に告白する勇気を持つこと、そして、虐待に対してNoと言える力を養うことです。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ④ステージ1 自然児

ステージ1 自然児

 自然の恵みと家族の庇護、世話を受けながら生きる純粋無垢で素朴な子供です。まさにダイヤモンドの原石であり、途方もない可能性に満ちています。
 自然児は、周囲の思いやり、配慮や庇護、世話を受けることによって、自己信頼や他者への信頼の気持ち、愛し、愛される方法。そして楽観性を育むことができます。
 自然児が求めるものは、安全であり続けること、安心であり続けることです。自然児は、弱く傷つきやすい存在であり、生きていくためには周囲の庇護や面倒、配慮が必要なのです。自然児は自分がそうした弱さを持つ特別な存在なので、周囲から面倒を見られ庇護を受けることが当然であると認識しており、周囲の配慮が自分の期待よりも低かった場合は、見捨てられる不安や被害者意識が惹起されて、火が付いたように泣き、怒ります。親の庇護や恵まれた環境が、いかに特別なもので、楽園であり、ありがたく感謝すべきものであるのかがまだ分かっていないのです。
 自然児は、純真な心と、元気いっぱいであふれんばかりの生命力に満ちており、とても魅力的です。相手に対して無条件の関心と愛でかかわり、相手の言うことを一生懸命に聴いて吸収し、自分のものとしていきます。周囲の人たちは、そうした自然児の天性の明るさや無条件の愛に癒され、元気を取り戻します。自然児は、その存在そのものが太陽なのです。
 しかし、一方で、自然児は、自分は特別な存在で、無条件に愛されること、庇護や配慮や面倒を見てもらうことは当たり前で、いつまでも満たされるべきものであるという自分中心の極めて利己的な枠組みを持っており、時に、わがままで、周囲への配慮に欠けるところもあります。
 また、痛みや困難、悪意、人生の苦労については、その存在を知らないか、または体験しても起こるべきことではないと考えており、それを拒否するか、無視しがちです。「闇なんか存在しない」「この世には良い人しかいない」「闇があっても私には関係ない」と考えています。
 自然児が最も恐れることは、見捨てられることです。自分には力が無いと思い込んでいる自然児にとって、見捨てられることはすなわち死を意味します。ですので、それを避けるために、泣き、怒り、時に笑顔や甘えで相手に関心を向けてもらい、面倒を見てもらえる方法を学びます。
 自然児にとっての課題は、依存からの脱却と感謝の心です。一つ目には、他者や周囲に期待するのではなく、自分で自分の面倒を見れるように自立する力を身につけること。そして、二つ目には、自分の面倒を見てくれる周囲の愛や配慮を、当然のことと思うのではなく、そこには相手の努力と犠牲があることを理解し、感謝することが必要です。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス

 ヒーローズジャーニーは、神々の神話のエッセンスをまとめたものですが、この英雄譚は、人の生き方の参考にもなります。過酷な世界の中で生を受け、困難に立ち向かいながら生きる人の生き方も、また英雄の生き方ととてもよく似ているからです。ここでは、ヒーローズジャーニーの考え方をもとにして、それを人の人生にあてはめた場合の生き方を探求していきましょう。ここでは、ヒーローズジャーニーの考え方をもとにして、人が変容し、成長していくプロセスを独自に12のステージに編成しなおして解説しています。

ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
ステージ キャラクター 概要
ステージ1 自然児 人の闇の側面(痛み、悪意など)の存在を知らないか拒否、無視する
ステージ2 傷ついた子供 人生の困難の犠牲者となる
ステージ3 放浪者 困難や痛みから逃げまどい、すべき課題を先延ばしにする
ステージ4 求道者 困難の突破口を探し求め、可能性と出会う
ステージ5 戦士 可能性を求めて慣れ親しんだ日常から抜け出す覚悟を決める
ステージ6 達人 成功の保証がない不確実で危険な課題でも成功に導く
ステージ7 魔法使い 今までにはない自分独自の全く新しい方法を編み出す
ステージ8 変革者 不可能を可能にする
ステージ9 勇者 最大の試練を乗り越え、宝を得る
ステージ10 覇王 宝の新しい可能性を巡って新しい体制を作る
ステージ11 仙人 さまざまなしがらみから解放されて自由となり、本来の自分になる
ステージ12 賢者 自分が学んだことを後輩へと伝えていく

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え

 

 

新刊“To be a Hero”の内容紹介 ②ヒーローズジャーニー

 本シリーズでは、新刊“To be a Hero”の一部の内容をご紹介しています。今回の投稿は、第4章「勇者への冒険」の第1節「ヒーローズジャーニーの理論」です。

<以下、電子(Kindle)書籍“To be a Hero”一第4章「勇者への冒険」第1節「ヒーローズジャーニーの理論」より抜粋>

 アメリカの哲学者ジョセフ・キャンベル(1904 – 1987)は、ネイティブ・インデアンの神話を皮切りとして、幼少期から世界中の神話に興味を持ち、読破していきました。世界中の多くの神話を研究した結果、どの神話にも共通する一連のパターンがあることに気づきました。場所も時代も異なる無数のバリエーションがある神話の中で、いくつかの共通する同じストーリーの英雄伝説が繰り返し語られていることに気づいたのです。キャンベルは、その共通する一連のテーマや流れを『ヒーローズジャーニー(英雄の旅)』と名づけました。
 このヒーローズジャーニーの考え方は、その後、多くの文化面に影響を与えることになります。ジョージルーカス監督が、「スターウォーズ」を製作する際に、このヒーローズジャーニーを活用したことは有名な事実です。現代ではスターウォーズだけではなく、多くの物語、映画が、この理論に影響を受けていると言われています。
 また、ヒーローズジャーニーの考え方は、文化面のみならず、心理学やキャリア教育にも活用されるようになりました。神々が勇気をもって未知の世界に挑戦し、多くの試練を経て成長していく姿は、人が苦悩を乗り越えてたくましく生きる人生ととてもよく似ており、人のキャリアや人生のひな形にもなると考えられています。この困難が多い世界の中で生きる生き方の指針と考えると、とても参考になることが多いと考えられているのです。現在では、心理学やキャリア教育においても、このヒーローズジャーニーは、人の人生を肯定的に前向きにに考えていくための有効なツールとして、多くの場で活用されるようになってきています。
 本章では、このヒーローズジャーニーの理論を紹介していきたいと思います。ヒーローズジャーニーの考え方を参考にしながら、自分らしくたくましく幸せに生きる生き方を探求していきましょう。

1.ヒーローズジャーニーの理論

 ヒーローズジャーニーの創作者であるキャンベル博士は、「千の顔を持つ英雄(上下)」(人文書院)において、その理論を展開しています。千の顔を持つ英雄の中では、神々が日常から旅立ち、試練を経てに故郷に戻ってくるプロセスを17のステップで整理しています。その後、ハリウッドの脚本家、ストーリー開発の一人者と言われるクリストファー・ボグラーが「神話の法則」(ストーリアーツ&サイエンス研究所)を出版し、より簡素で分かりやすい12のステップの流れを発表しました。ここでは、ボグラーのヒーローズジャーニーの理論をご紹介していきましょう。

 

①ヒーローズジャーニーの全体像

 ボグラーの「神話の法則」で紹介されているヒーローズジャーニーの全体像、一覧は、以下の通りです。

ヒーローズジャーニーの全体像
ステージ
第一幕
出立、離別
(英雄の決断)
ステージ1 日常の世界
ステージ2 冒険への誘い
ステージ3 冒険への拒絶
ステージ4 賢者との出会い
ステージ5 第一関門突破
第二幕
試練、通過儀礼
(英雄の行動)
ステージ6 試練、仲間、敵対者
ステージ7 最も危険な場所への接近
ステージ8 最大の試練
ステージ9 報酬
第三幕
帰還
(行動の結果)
ステージ10 帰路
ステージ11 復活
ステージ12 宝をもって帰還

 ヒーローズジャーニーでは、数々の神話には、以上のような共通するテーマや流れがあると考えられています。
 日常で普通に暮らしていた英雄は、旅に出る意志を固め、二度と戻れない旅に出ます(第一幕 出立、離別)。
 故郷を後にした英雄は、仲間と出会い、敵と戦うなど、数々の試練を通して成長し、最大の試練で勝利を得ます(第二幕 試練、通過儀礼)。
 そして、故郷に帰還し、故郷に宝を持ち帰る(第三幕 帰還)のです。
 以上の大きな流れの中で展開される12のステージに関して、以下、その詳細を解説していきましょう。

 

②ヒーローズジャーニーの12のステージ

ステージ1 日常の世界

 旅立つ前のヒーローの日常です。しばしば、日常のヒーローは、問題の多い環境の中で、欠乏や困難の中で苦労している欠点の多いキャラクターとして描かれます。

 

ステージ2 冒険への誘い

 助けを求められる、ひらめく、天命を受ける、事故にあう、投獄される、などなど、良くも悪くも、外的もしくは内的な出来事によって、日常の習慣のままではいられない立場に追いやられてしまいます。それらの出来事は、今までのやり方や知識、現在のリソースでは解決することができません。ヒーローは、何らかの形で、全く新しい挑戦を試みなければならなくなるのです。

 

ステージ3 冒険への拒絶

 全く新しい冒険に出る必要性に迫られたヒーローですが、ヒーローの周囲の人たちは、そうした必要は全く感じていません。むしろ、ヒーローの気づきや危機意識は、突飛であり、笑いものの対象となります。周囲の人の価値観とヒーローの価値観に解離が起こるのです。ヒーローは、自分の気づきの方が間違えているかもしれないと感じ、周りの人から嘲笑されたり非難されることを恐れ、または、それなりに安定している日常の生活を失うことを恐れ、または、未知なる冒険に不安を感じ、一歩踏み出すことを躊躇します。このままではいけないという必要性は理解しながらも、だからと言ってそこまでのリスクを背負うことが正しいのかどうかを迷うのです。

 

ステージ4 賢者

 新しい旅に出ることをためらうヒーローに、助言をし、さまざまな準備を整えさせて、旅に出る勇気を与えてくれる賢者が現れます。賢者は、神、師匠、親、などの人として現れる場合もあれば、強力な武器、剣、魔法の道具、本、知識、等の形で現れる場合もあります。ヒーローは、そうした助けを得て、自分の気づきへの信頼を回復し、人の言うことではなく自分が受け止めた使命、危機意識、希望と夢、価値を選ぶ決断をし、腹を決めます。
 賢者は、いつもヒーローにとってやさしく慈悲深い存在として現れるとは限りません。時には、自分が気づいた脅威によって身内が傷つけられたり、大きな事故が起こったりなど、ネガティブな事件がその役割を果たすこともあります。時に、ヒーローは、そうしたショックを通して、自分の気づきや危機感が、周囲の人たちの言うような勘違いではなく、間違いない真実であることを確信し、迷いを断ち、冒険に出る覚悟を決めるのです。

 

ステージ5 第一関門突破

 旅に出る覚悟を決めたヒーローが、現在のなじみのある日常を捨てて、新しい未知な世界に入ろうとする時に、第一関門となる障害が出現します。異なる世界をつなぐゲートには、必ず難攻不落の門と門番がいるのです。ヒーローは、戦ったり、取引をしたり、出し抜いたりして、なんとか関門を突破し、全く未知なる新しい世界に一歩足を踏み出すことになります。関門の守護者は、ヒーローの障害にはなりますが、悪人ではなく、必ずしも乱暴に戦い、倒さなければならない存在というわけではありません。むしろ、やり方によっては、協力者、味方になってくれて、後々助けてくれる可能性もあるのです。ヒーローは、上手にこれを乗り越えるための器量が問われることになります。

 

ステージ6 試練、仲間、敵対者

 旅に出たヒーローが入り込んだ世界は、多くの場合、故郷の日常の在り方とはかけ離れた世界であり、常識の通用しない全く新しい可能性、または思いもよらない危険に満ちた世界となります。ヒーローは、そのような世界を手探りで探求し、非日常の特別な世界のルールを学び、謎を解き、なじんでいくことになります。旅の途中で、さまざまな試練に出くわしながら、新たな協力者を得たり、敵対者と戦うことを通して旅に必要な友情や信頼を育むスキル、体力や格闘の能力、問題解決のスキルを磨いていきます。

 

ステージ7 最も危険な場所への接近

 ヒーローは、旅のプロセスで、問題の本質を次第に見抜き、その問題を作り上げている最も強く恐ろしい怪物の正体をつきとめたり、根本的に問題を解決するための道具や方法=宝のありかを見出します。敵の親玉の怪物の住む場所や、 宝の隠されている場所は、特別な世界の中でも最も危険な場所です。そこは、ドラゴンの住む恐ろしい洞窟であり、魔王が支配する地獄であり、出口の見えない迷宮です。いわゆる死の土地であり、一歩踏み込めば、命の保証がない、とても危険な場所なのです。
 ヒーローは、それを恐れ、時にそこから来る使者に傷つけられ、逃げまどいながらも、仲間を見つけ、ともに戦い、戦いながらそれの正体と弱点を学び、獲得した知識や力、スキルとともに、その難関に挑戦することになります。作戦を立て、計画を練り、武器と防具をそろえて準備を整え、その最も危険な死地に赴きます。

 

ステージ8 最大の試練

 ヒーローは、最も危険な場所で奈落の底に落とされ、最大の恐怖と向き合い、死の淵を垣間見ることになります。最大の恐怖は、ドラゴンのような外的な存在の場合もあれば、自分の内面に封じ込めて直面することを避けていた傷のような内面の存在の場合もあります。
 この「最大の試練」のステップは、死と再生の通過儀礼でもあります。ヒーローは、最大の敵に攻撃されて、傷つき、倒れ、一度死ぬか、死んだようになります。ヒーローにとって最悪な瞬間、陰鬱とした絶望、最も危ない緊迫した時間となります。しかし、ヒーローは、その絶望の果て、奈落の底で、ドラゴンとは自分の恐怖であることを直覚し、それは幻想であることを見極め、勇気を取り戻して立ち上がり復活します。そして、生まれ変わり、成長した自分になって、敵に打ち勝つのです。
 こうした最悪の試練に出会うことは、ヒーローの宿命でもあります。ドラゴンがいないヒーロー伝説は存在しません。ヒーローは、七難八苦、癒しようがない悲しみ、痛み、憎悪、救いようのない絶望、乗り越えられない壁に出会うことは運命なのです。
 ヒーローは、そうした試練の中で、刃折れ矢尽き、友と離ればなれとなり、力を失います。彼は孤独であり、望みはなく、暗く惨めであり、もはや誰にもこんな自分を見られたく無いと絶望の中で膝を抱えます。
 しかし、夜明け前こそが一番暗いことを決して忘れません。一番苦痛に満ちている瞬間が、一番の幸福への始まりの瞬間であること知っているのです。神は乗り越えられない試練は与えないという真実を信じており、絶望の極みで勇気を奮い立たせて立ち上がります。自分の中にまどろんでいる力、今まではその存在を知らず、気づかず、期待もしていなかった驚くべき可能性に気づき、新しい自分に目覚めるのは、そのような時です。
 そうしてヒーローは、奈落の底で目覚め、再生し、新しい力をまとった新しい自分として反撃に出るのです。

 

ステージ9 報酬

 生死をかけた危機を乗り越え、最大の敵に勝利したヒーローは、探し求め続けていた宝物を手に入れます。宝物は、魔法の剣や霊薬のような物質的なものである場合もあるし、助け出すことができた人との愛と友情などの関係性である場合もあるし、名誉や平和、悟りなど精神的、象徴的なものである場合もあります。
 ヒーローは、愛する者たちのために危険を承知で死地に赴き、最大の障害をのりこえ、勝利を手にすることによって、英雄の称号を得ます。本来の自分の可能性や潜在性が解放されて新しいステージの自分となり、より魅力に富んだ輝かしい存在へと変容を遂げることになるのです。

 

ステージ10 帰路

 最大の試練に勝利を得たヒーローは、宝物を故郷に持ち帰るために、日常の世界に戻ることを決意します。しかし、その帰路は、多くの場合、スムーズではありません。敵の残党が宝物の奪還を目指して追って来るかもしれませんし、最後の死力を振り絞って復讐の戦いを挑んでくるかもしれません。特別な世界の秘密を日常の世界に持ち出すことを快く思わない存在から帰還を邪魔されるかもしれません。日常の世界に行くことができないヒーローの仲間、契約者が、反乱を起こすかもしれませんし、得た宝物を奪おうとする新たな敵が追ってくるかもしれません。
 多くの場合は、帰還の際に、そうした追う者たちから逃れようとする追走劇が展開されていくことになります。追いつ追われつのレースの中で、ヒーローは、学んだ魔法や武器で追跡者を撃退します。時に窮地に追い込まれると、特別な世界で手に入れたものを、追って来る者たちに目くらましとして投げつけでることで、少しずつ身軽になっていきます。特別な世界と日常の世界を分ける境界を潜り抜けるための準備をしていくのです。

 

ステージ11 復活

 追跡者をかわすことができたヒーローは、特異な世界と日常の世界を分ける関門をくぐり、日常の世界へと帰還します。その際、ヒーローは、特異な世界でつけてしまった垢、汚れ、穢れを落とし、浄化されて新しい存在に生まれ変わることになります。
 多くの場合、このみそぎと復活のプロセスは、最大の試練に次ぐ第二の試練ともなります。ヒーローとしての徳性、学びを得られていない場合は、境界を守る門番が、その関門を通ることを許してはくれません。宝物を日常の世界に持ち込む事と引き換えにヒーローの大切なもの、時には命を求められるかもしれません。また、ヒーローが特異の世界になじみすぎてしまい、日常の世界に戻ることを嫌がる可能性もあります。また、ヒーローが手にすることができた宝物の価値を日常の世界の人たちが理解できずに無視するか、もっと悪いことに悪用するかもしれなく、その危険性の方が高いと絶望してしまうかもしれません。さらに、日常の世界の権威が、ヒーローが持ち帰る宝物をほしがって奪いに来るかもしれませんし、逆にその力を警戒して、宝物を破壊、もしくは日常世界で活用ことをあらゆる手を尽くして阻止するかもしれません。それらの試練は、ヒーローが本当に教訓を学び取って成長し、英雄としての資格を得ることができたのかどうかのテストであり、失敗すれば、すなわち日常の世界にとっての死を迎えることになります。
 ヒーローは、こうした試練に対して、冒険で学び獲得した能力と武器によって乗り越えることができます。その勝利は劇的であり、冒険に旅立つ前は勝てなかった相手、圧倒的な力の差から屈服せざるを得なかった敵であっても、成長した勇者として立ち向かい、見事に勝利をおさめます。こうして、ヒーローは、全ての困難を克服して、真の勇者となって、日常世界に生まれ変わることになるのです。

 

ステージ12 宝をもって帰還

 冒険を終えてヒーローは、故郷に戻ってきます。その際、ヒーローは、冒険を通して得ることができた宝物や教訓を持ち帰ります。ヒーローが持ち帰った宝物は、癒しの力を持った魔法の薬、荒廃した土地をよみがえらせる聖杯、王国の復活、友情、支配からの解放、世界に役立つ知識、世界を変える叡智、などさまざまな可能性があります。ヒーローを迎える故郷は、ヒーローが持ち帰る宝物によって、より良いコミュニティとなり、喜びと健康と平和を手にすることができるのです。こうして、ヒーローの一つの冒険が幕を閉じることになります。

新刊“To be a Hero”の内容紹介】
①おわりに
②ヒーローズジャーニー
③ヒーローズジャーニーをもとにした人の成長プロセス
④ステージ1 自然児
⑤ステージ2 傷ついた子供
⑥ステージ3 放浪者
⑦ステージ4 求道者
⑧ステージ5 戦士
⑨ステージ6 達人
⑩ステージ7 魔法使い
⑪ステージ8 変革者
⑫ステージ9 勇者
⑫ステージ10 覇王
⑬ステージ11 仙人
⑭ステージ12 賢者
⑮ヒーローズジャーニーの教え