“リッツカールトンが大切にする「サービスを超える瞬間」”(高野登 著 かんき出版)を読みました。
リッツカールトンは、世界的に高い評価を常に獲得しているホテルであり、時に神秘的とまで言われる顧客満足を提供していると言われています。
本書は、リッツカールトン日本支社長を務める高野登さんによって書かれたものであり、そのすばらしさの秘訣が、わかりやすい文書で惜しみなく書かれており、新しい時代の経営哲学、マネジメントスタイル、会社のあり方などを学ぶ上で大変参考になる本だと思いました。
今回は、特に私が参考になった部分を抜粋して、ご紹介したいと思います。
○従業員満足から始める経営哲学
リッツカールトンでは、従業員を”内部顧客”と呼び、お客様としてお互いを理解し、尊敬してもてなすと言ったサービス哲学があるとのことです。
ちなみに、”リッツカールトンで学んだ「仕事でいちばん大事なこと」”(林田正光 あさ出版)によると、年に数回、全世界のリッツカールトンで「従業員満足度調査」が実施されるとのこと、無記名のアンケートで、毎回変わる80から90項目の設問に答えることになっており、従業員は正直に心境を回答していきます。アンケート結果は、すべてアメリカの本社に送られて、ホテルごとやセクションごとの満足度一覧が明らかになり、その結果によって、セクションマネージャーが、コミュニケーションやリーダーシップの問題を指摘され、改善命令を受けることになるそうです。
弊社でも、従業員満足が新しい経営哲学の骨子のひとつと考えておりますが、その点、リッツカールトンはそれをすでに実践し、定着させていることになり、進化した会社のすばらしい事例といえましょう。
○コミュニケーションからすべてが始まる
リッツカールトンでは、「紳士淑女にお仕えする我々も紳士淑女です」と言うモットーがあり、お客様と同じ目線で、積極的にコミュニケーションをとっていこうとする風土が根付いているとのこと、通常は、「失礼にはならないだろうか」などの懸念で、自分から進んでお客様に声を掛けることが苦手とする人が多いのですが、そのようなことでは、お客様との間に壁を作ってしまい、逆にお客様からも「こんなことまで頼んでもいいのだろうか」と言う遠慮を生んでしまうので、安心感の持てる親しさで、かといってなれなれしくなく、程よい距離感の中で声をかけ、信頼関係を築いていけるように心がけているとのことです。
このような人間関係の機微、かかわりを持つときにどうしても生じる懸念を上手に乗り越えていくためのスキルは貴重であり、簡単そうに見えて、とても精妙で繊細な気持ちを取り扱っていくと言った高度なスキルでもあると思います。また、出会いの瞬間の出来事なので、あまり意識的に丁寧には取り扱われることは一般的にはありませんが、この瞬間を雑で乱暴に過ごしたり、背を向けてさりげなく避けていったりすることと、リッツカールトンのようにこの難しさに直面し、逃げずに丁寧に挑戦していくこととでは、やはりお客さんの感じる信頼感はまったく違ってくるでしょう。このスキルは、目立たなく瞬間的であるがゆえに、とっても大切なことであり、今後、他のあらゆるサービス業の差別化につながっていく重要な要素となっていくと思います。
○チームワークの良さが最高のサービスをつくる
コミュニケーションが大事なのは、お客様に対してだけではなく、従業員同士のコミュニケーションがサービスに大きく影響するとのこと、従業員同士の小さな心配りが、「神秘的」とも呼ばれるリッツカールトンのサービスを生み出すとのことです。
○誇りと喜びを持てば意欲が湧く
従業員とお客様の心温まる出来事を「ストーリー・オブ・エクセレンス(別名 ワオ・ストーリー)」と称して週に二回朝礼の中で全従業員に紹介しているそうです。
このような逸話を配信することを通して、リッツカールトンの求めるサービスのあり方を教育すると同時に、従業員に誇りと喜びを感じてもらうことを働きかけているとのことです。
従業員の仕事ぶりを尊敬し、称えるからこそ本当の意欲が湧いて来るのであり、従業員の本気は、きっと最高のサービスをもたらすことにつながるのでしょう。
本には、まだまだすばらしいヒントが書かれているのですが、今後またチャンスを見てご紹介していきたいと思います。
リッツカールトンは、間違いなく進化した新しい時代の企業モデルだと思います。
今後も注目していきたいと思います。