学習する組織

近年『学習する組織(Learning Organization)』と言う理論、考え方が、経営学において脚光をあびております。もともとは、1970年代にハーバード大学のクリス・アージリスと言う組織心理学者によって唱えられていた概念であり、現在では、マサチューセッツ工科大学のピーターセンゲ教授が中心となり、世界的に向けて広く知られるようになって来ました。

ちなみに、予断ですが、クリス・アージリスは、私の大学時代の卒論のテーマの一人でもありました。当時は、この概念は今ほどメジャーではなく、時代の変遷とともに、進化し、重要度が増してきたのだろうと思います。

今回は、『学習する組織 「5つの能力」』(ピーター・センゲ他著 日本経済新聞社出版)と言う名著から、学習する組織についてご紹介します。

学習する組織とは、『学習と成長意思をもった人間に、成長の機会を与えながら、自らも学習し、進化する組織』と言う意味であり、学習する組織の中では、『個人は、単なる労働力ではなく、主体性と成長への意思をもった自由な人間である。また、この個人は互いに信頼し合い、目標を共有し、協働する。その組織や決して孤立した一匹狼的な個人の集団ではなく、また、個人の主体性が未成熟な馴れ合い、もたれ合いの組織でもない。個人が学習の機会を与えられ、互いに学びあうことによって、組織も学習・成長していく。そうしたプロセスを通じてチーム力、組織力が高まり、新しい知や価値観が創造されていく』ことになります。

学習する組織を実現していくためには、具体的には、以下の5つの学習領域があり、それらの訓練を通して、学習する組織へと変容することが出来るとされています。

1.システム思考

さまざまな出来事は、単なる“原因→結果”と言う線的なつながりで理解できるものではなく、相互にかかわりあう複雑なシステムが背景にあり、そのシステムの構造と変化のパターンを捉え、理解していく必要がある。そのシステムには、それを観察する自分自身も構成要素のひとつとして含まれており、問題解決に当たっては、自らも問題にかかわりあう一員として主体的に働きかけていくことになる。

2.自己実現

一人ひとりが主体的に成長を遂げていくことを支援することであり、構成員一人ひとりの継続的な学習によって、学習する組織は成り立つという考え方。

3.メンタルモデル

メンタルモデルとは、思い込みや偏見と言った、心の中に固定化されたイメージや仮説を言います。メンタルモデルは、認知や反応パターンに大きく影響を与えるので、個々人の中に閉ざされているメンタルモデルに光を当てて、検証し、必要に応じて改善していくことが、本質的な変化とまったく新しい行動を生み出す基本となる。

4.共有ヴィジョン

組織のメンバー全員が持つ、共通の方向性、目標、理想、ヴィジョンである。このヴィジョンを創造し定着するためには、個々人が自由にヴィジョンについて話し合えるオープンな環境やネットワークが必要となる。

5.チーム学習

チームであることは、個人の能力を凌駕すると言う考え方に基づいて、チームであるために必要な要素を学んでいく必要性を訴えている。チーム力を高めるために、具体的には、ダイアローグやスキルフル・ディスカッションと呼ばれる質の高いコミュニケーションのあり方が提示されている。

 

私どもは、以上のいずれも、新しい時代の組織を考えるにあたって、非常に参考になる指針だと思っております。

弊社にとってもこの考え方は、基軸となっているもののひとつであり、大切にしていきたいし、さらに探求していきたいと考えております。

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