カテゴリー別アーカイブ: 06.人材教育の理論・情報

任天堂が世界ベストカンパニー

任天堂が世界ベストカンパニー

                                      IBTimes2009年10月05日

 
 2009年の「世界ベストカンパニー」ランキングが、米誌「ビジネスウィーク」から発表され、1位は任天堂となった。

 このランキングは販売高が100億ドル(約8900億円)以上で、しかもその収入の4分の1以上を海外市場から得ているグローバル企業が対象。成長性や付加価値を基に算出している。任天堂は過去5年間、売り上げは平均36%増、付加価値は38%増。

 以下ランキング
1位 任天堂(日本)
2位 グーグル(米国)
3位 アップル(米国)
4位 斗山重工(韓国)
5位 現代重工(韓国)

 米紙「ビジネスウィーク」で任天堂が世界ベストカンパニーの1位にランクされました。日本にもまだまだこんなに素敵な会社があるんだと誇らしく思いますね。

 任天堂は、もともとは花札から始まったカードゲームの会社であり、経営topが、このままでは会社の将来がないと考えて、さまざまな多角化を試みた時期がありました。タクシー会社、インスタント食品事業、ラブホテル事業など、本当にいろんな事業に果敢に挑戦し、見事に失敗し、それでもあきらめずにベンチャー精神を発揮した結果、電子ゲームのヒットにであい、その後破竹の勢いで業績を伸ばしてきたのです。成長の背景には、人を大切にする社風もあるといわれており、私が注目する会社でもあります。

 私もつい最近、とうとうWii-fitを買ってしまいました。やはり、シンプルで楽しく、体に良さそうなゲームでしたよ。

 こうした時代をリードする素敵な会社は、これからも文化を大切にして、大きく活躍してほしいなぁと思います。

失敗について byカリール・ジブラン

人を鎖にたとえて、一番弱い環の強さがその鎖の強さだとよく言われる。

けれど、それは真実の半分でしかない。

一番強い環の強さも、やはり鎖の強さなのだ。

一番ちっぽけな行いで人を計るのは、

あぶくの弱さを大海の力だと信じるようなものだ。

失敗したからと人を裁くのは、

移り変わるからと、季節を責めるようなものだ。

「預言者」カリール・ジブランより抜粋

 

友情とは byカリール・ジブラン

友情には、魂を深めること以外の目的があってはならない。

愛が、自身の秘密を解き明かす以外のことを求めるなら、

それは愛ではなく、網を投げているにすぎない。

そして、そんな網にかかるものは、ろくなものではない。

『預言者』カリール・ジブランより抜粋

人生への絶望感 脳卒中誘発?

   人生への絶望感 脳卒中誘発 (朝日新聞 2009年9月1日)

 【ワシントン=勝田敏彦】人生に絶望する気持ちがあると、頸動脈(けいどうみゃく)に病変が起き、脳卒中や心臓病を起こす危険が高いことが米ミネソタ大の研究でわかった。米心臓協会の医学誌「ストローク」の最新号に論文が掲載された。

 研究チームは、循環器病にかかったことがない中高年女性559人を対象とした研究で、人生に対して前向きかどうかを質問。この回答と、超音波検査で測った頸動脈の壁の厚みのデータを分析した。

 頸動脈は脳に血液を送る血管。動脈硬化で壁が厚くなると、脳卒中などの原因となる血栓ができやすくなる。

 分析の結果、人生に最も前向きな集団と、最も絶望感が強い集団とでは、壁の厚みに0.06ミリの差があった。研究チームは「この差は、臨床的に重要である可能性があり、絶望感が強い集団は将来、心臓病や脳卒中になる危険が高い」と分析している。

 絶望感と頸動脈の壁の厚みとの間の生理学的な関係ははっきりしていないが、研究チームは、絶望感が強い人にはカウンセリングなどを勧めている。

 

 人生に対して悲観的である人たちは、前向きである人たちに比べて、動脈硬化で頸動脈の血管壁が厚くなり、0.06ミリの差があったとのこと、この差は、脳卒中や心臓病などの危険性を高めるとのことです。

 自分で自分の人生をどう思おうが、それこそ個々人の自由であり、人にとやかく言われる筋合いのものではないのですが、こういうデータを見ると、過度な悲観は気をつけなければならないと思いますね。

 基本的に、人生は、決して甘くはないものであって、それを心配しようと思ったらいくらでも心配することもできますが、そんな不安と恐怖の罠にはまって憂鬱となることは、やはり慎まなければならないと私自身は自戒しています。

 どんなに悩んでも未来のことは分からないものは分からないのです。人生とはそういうものであって、だからこそ不安でもありますが、だからこそ面白くもあるのです。

 人生は、ある意味でサスペンスとロマンの冒険でもあります。待ち受けているものがどんなものであれ、きっと何とかなっていくものですよ。せっかくならば、その冒険を思い切り大胆に楽しめるようにしたいものですね。

体験学習とは? 9.体験学習の留意点とポリシー

9.体験学習の留意点とポリシー

 体験学習は、Tグループをベースにして応用した学習方法です。
 現実的に長期の研修ができない企業や組織の事情を背景に、もっと短時間で効果的な方法をという現場のニーズに応える形で、主に、Tグループにおける午後一番で実施される構造化された実習を元にしたGセッションを中心として構成しなおし実施するようになったプログラムが、体験学習へと発展していったのです。
 体験学習は、単なる知識による学習ではなく、体験を通して人の内面に触れ合う、ハートに響く学習方法でもあります。そのあり方によっては、人の人生に大きな影響を与えるような素晴らしい気づきや学びを提供することもできますが、反面、人の心に関わることでもあり、前述の歴史上の失敗もあり、その運営には、非常に慎重な姿勢と注意深さが必要であると考えております。私どもでは、南山短期大学前副学長の星野欣生先生に以前私が教えていただいた哲学をもとに、体験学習の運営上の留意点とポリシーを以下のように考えております。

1.ともに学ぶ
・ファシリテーターは、権力者ではなく、学習者とともに学ぶ存在であり、学習の援助者、促進者である。
・参加メンバーの言動、気持ち、あり方は、参加メンバーが主体的に自由に決定するのであって、ファシリテーターは、その主体性と自由を尊重すべきで、決して強制したり、支配しようとしてはならない。
・主役(主体)は、参加メンバーであって、ファシリテーターではない。

2.操作しない
・気づかせたいことに向けて誘導したり、罠にかけるようなことはしない。
・作為、不自然さ、小細工などは、最終的にメンバーに伝わることが多く、共感されない。

3.評価しない 
・評価は、前提として”あるべきモデル(正解、価値)”を基準としているので、評価することは、結果的にそのモデルを相手に押し付けることにつながってしまうが、体験学習の場合は、体験を通してメンバーが自由にあり方を探求する場であるので、押し付けはすべきではない。
・期待や評価をすることは、結果的にメンバーを支配することにつながってしまい、メンバーの自分らしいあり方を探求する可能性をつぶしてしまう。
・「答や正解はファシリテーターサイドが持っている」という思い込みは、厳に慎むべきである。人間関係のことは分からないことが多く、だからこそ謙虚に体験から学ぶ必要があると言えよう。

4.個性の尊重
・メンバーの個性は最大限尊重すべきであって、決して虐待したり、粗末に扱うべきではない。
・違いは、好ましいことであって、矯正すべきものではない。
・体験学習のねらいは、個性的で自分らしい生き方を後押しすることであって、画一的な生き方や態度を教え込むことではない。

【体験学習とは シリーズ】

1.体験学習とは

2.体験学習の学習プロセス

3.体験学習の効果

4.体験学習の原点

5.Tグループの誕生

6.日本におけるラボラトリーメソッド

7.Tグループの実際

8.私のTグループ体験

9.体験学習の留意点とポリシー

10.体験学習のお勧め

体験学習とは? 8.私のTグループ体験

8.私のTグループ体験

 Tグループは、構造はとってもシンプルですが、その中で起こるドラマ、気づき、学びの深さと価値の高さなど、なかなか言葉では表現しづらい非常に印象的なプログラムとなることが多い方法です。ここでは、Tグループの実際をご理解いただくひとつの参考として、私自身が体験したTグループの体験を記して行きたいと思います。あくまでも個人の体験で、一般論ではありませんが、Tグループの特徴と効果を知る手がかりとしていただければ幸いです。

 実は、私は、もともとは人嫌いであり、どちらかと言うと引きこもりがちな性格でした。
「自分は、本性がばれたらきっと嫌われる」「人は、意地悪でいやなやつだ」「弱肉強食の世の中、人間関係の本質は戦いである」…
自分の本性がどんなことかも分からずに、そのような考えを心の奥深くに秘めながら、本音を隠して演技をし、強がりながら生きていたように思います。

 そのような私でも、さまざまな体験を経て、心に深く根ざしていた呪いともいえるネガティブな信念が融け、少しずつ生きやすく、楽になってきたように思えます。
 きっかけとなった出来事や人とのご縁、気づきは、たくさんあり、どれも大切な宝物なのですが、決定的だった体験の一つが、まさにTグループでした。

 私が受けたTグループは、南山短期大学人間関係研究センターの主催するプログラムであり、1990年の夏に木曾御嶽山のふもとの大自然の中にある研修所で、5泊6日にわたって実施されました。ファシリテーターは、南山短期大学の山口真人先生他1名、参加者は、ファシリテーターやスタッフも含めて10名でした。

 初日の第一回目のTセッションの際、ファシリテーターから全体のねらいと方法論がざっくりと説明されたあと、「では始めましょう」と放り出されるように開始してから、誰も何も話さず、身じろぎ一つできないような沈黙がしばらく続きました。沈黙の中で、何ともいえない不安感と恐怖を感じていたことを良く覚えています。最初のうちは、そのような懸念は、私だけではなくメンバー全員が感じていたようで、緊張しており、固くぎこちない不器用で手探りの対話が途切れ途切れでなされていました。

 しかし、回を重ねていくうちに、次第に肩の力が抜け始め、落ち着いて自分の心や場に関心を向けることができるようになっていきます。それと同時に、話す話題や内容は、”今ここ”で感じていることなので、自分の内面で体験している出来事と、他のメンバー同士で話されている内容が一致するようになってきて、その場で起こっていることが、誤解無く、とても良くわかるようになってきます。

 そのような状況になってからでしょうか、突如私は、「私は、今ここで、何も演技をしていないし、うそをついていない」ことに気づいたのです。今までは、「何かうそをついたり演技をしたりしないと、本当の自分がばれて、嫌われてしまう」という不思議な思い込みがあり、全くの無防備で警戒の無い本音で素の自分を出すことなど、人前ではありえなかったのですが、そのときは、何の意図も無く、何の構えも無く、自然に素の状態でいる自分を発見したのです。

 ささやかなことかもしれませんが、私にとっては人生がひっくり返るような出来事でした。なぜなら、素のままの自分は、嫌なやつではなかったし、メンバーからも受け入れてもらっており、そのメンバーの気持ちにうそが無いことが本当に分かったからです。

 何と、自然でありのままでいる自分は、決して捨てたものではなかったのです。

 そのような気づきが起こった時、私の心の中で、暖かい感動が起こり、とってもうれしく、元気が湧き起こってくるのを実感したのです。

 その回をきっかけに、私のTセッションは、とっても自由で開放的で基本的には恐怖や不安を感じない、信頼のおける楽しい場に変わっていきました。

 そうこうしているうちに、不思議な体験もするようになりました。

 研修も終盤になった頃、あるセッションで、それまで活発だったメンバー同士の対話が、ピタッと止まったことがありました。その後も、誰も何も話さない沈黙が続いたのです。ただ、Tグループ当初に起こった長い沈黙の緊張感や不安感とは別に、何かこう安心できる、やさしい何かに包まれて、このままでいいんだという思いがやってきたとき、どこからともなく笑い声が立ち上がり、みんな楽しそうにこの状況を笑い楽しんだのです。

 私もみなと同じく、誰も何も面白い話をしていないのに、楽しく、同じように笑って全員の楽しんでいる様子を眺めていました。

 その時、ある女性メンバーの笑顔を見た時、私の胸の中に、楽しい感情とは別の何かの感情が流れ込んできてその気持ちで胸がいっぱいになったのです。

 最初は、その気持ちが何なのかが分からずに、「この気持ちは、なんだっけ?」と注目すると、「さびしいって気持ちだ!」と気づきました。「こんなにみんな楽しい雰囲気の中で、しかも彼女も笑ってるし、寂しいわけがない。単なる勘違いだよ。」という考えが起こりましたが、その刹那、唐突に「○○さん、さびしそうだね。」と発言してしまいました。

 私の発言の後で、チーム全員が楽しい雰囲気に水を差されたようにシーンとなってしまいました。言ってしまった後で、「何てこと口走ってしまったんだろう!」「何の根拠もないのに、単にそう勘違いしただけなのに!雰囲気ぶち壊しだ!」。「そんなことないですよ、なんでそう思ったのですか?」って聞かれるだろうし、「この始末どうしよう・・・」などと、とても窮地に追い込まれたような気持になったことを良く覚えています。

 しかし、しばしの沈黙の後で、私が名指したメンバーは、

「わかりました?」

「実は、私だけ浮いているような気がして、とても寂しかったんです。」と発言したのです。

 私はとても驚きました。「そんなことない」と言われると確信していたので、彼女が本当にそういう気持ちになっていたことを知って、本当に驚いたのです。

 なんと、私が胸で感じた寂しさは、勘違いではなく本当のことだったのです。

 この体験は、言葉で言うと「人の気持ちが分かる」という何ともそっけない言葉になるのですが、そのときの私の心境は、衝撃的でした。人の気持ちが本当に共感できるものであることを生まれて初めて知ることができたのです。まさに、豊かな社会的感受性と言えるのでしょうか、Tグループのめざすテーマを体感した瞬間でもありました。

 また、何よりも驚いたのは、そのような状況になったとき、人間関係は、戦いではなく、暖かく優しくやわらかく私を包み込んでくれるものであり、つまらなくうっとうしくわずらわしいものではなく、躍動的で生き生きとしており、この上なく興味深く、私に生きる元気を与えてくれる尊いものであると実感したことでした。

 もし、本当に人が人の体験を共有できるとしたならば、もはや相手は他人ではありません。いま世界で起こっている、うそ、偽り、搾取、暴力、戦争なども、起こりうるはずがありません。だって、相手の痛みは自分の痛みとして体験するのですから。この体験を通して、私は、人間関係には、もしかしたら世界をかえ得る底知れない可能性があるということに気づいたのです。

 これは、今まで私の生き方をある意味規定していた否定的な信念とは完全に相容れない体験であり、世界観がひっくり返る危険な体験でもありましたが、しかし、私は、そのような信念よりも、今感じている喜びや実感のほうが、絶対的に真実に近いことを直観しておりました。理由は分かりませんが、何か、本当のこと、人間関係の真相に触れることができたと言う確信が起こり、私の心の奥深くで、世界が変わったのです。

 そのような体験を経て、私自身は、現在は、コンサルタント会社を立ち上げ、ラボラトリーメソッドによる気づきや学びを支援する教育をライフワークとしています。ですから、Tグループでの体験は、今の私の原点のひとつでもあり、私の人生を導いてくれた、とても大切で価値あるものだと言えるのです。

【体験学習とは シリーズ】

1.体験学習とは

2.体験学習の学習プロセス

3.体験学習の効果

4.体験学習の原点

5.Tグループの誕生

6.日本におけるラボラトリーメソッド

7.Tグループの実際

8.私のTグループ体験

9.体験学習の留意点とポリシー

10.体験学習のお勧め

体験学習とは? 7.Tグループの実際

7.Tグループの実際

Tグループは、「人間関係スキルの向上、個人の人間的成長、グループスキルの向上」などを目的として開催される集中セッションであり、通常5泊6日程度の合宿で開催されることが多いといえます。
 下図は、私が受講したTグループの実際のスケジュールです。Tグループタイムスケジュール

主催:南山短期大学 人間関係研究センター
日時:1990年9月14日~19日
場所:御岳名古屋市市民休暇村

 プログラムは、主に、Tセッションと呼ばれる80分にわたる集中セッションが、休憩を挟んで1日4回程度繰り返され、6日間全体で、おおよそ14回程度開催されます。
 Tセッションでは、椅子だけが人数分円形に並べられており、ファシリテーターとメンバーは、自由に着席します。
討議内容は、何も決められておらず、すべてがその場で起こったことを元に進められていきます。学習の素材は、「いまここ」であり、今ここで起こっていることがらや人間関係、ダイナミックスを個々人が言語化して、お互いに対話することを通して理解を深めていく展開となるのです。ですから、そこで話し合われる内容は、過去の出来事や末来の対策ではなく、まさに、今ここにいるメンバーに対して感じていること、自分の気持ち、気づきが話し合われることになります。

 主に、昼食後の午後一番には、Gセッション(全体会)と呼ばれるセッションが実施されることがあります。Gセッションとは、Tセッションとは違った状況の中で、プロセスへの理解を促進するために実施されるセッションで、あらかじめ構造化された実習やツールを使用して自分について、自他の影響関係について学ぶことになります。実習は、たいていよく工夫されており、刺激的で、楽しいことが多く、グループで起こっている人間関係やダイナミックスが浮き彫りになり、探求しやすくなることが多いといえましょう。

【体験学習とは シリーズ】

1.体験学習とは

2.体験学習の学習プロセス

3.体験学習の効果

4.体験学習の原点

5.Tグループの誕生

6.日本におけるラボラトリーメソッド

7.Tグループの実際

8.私のTグループ体験

9.体験学習の留意点とポリシー

10.体験学習のお勧め

体験学習とは? 6.日本におけるラボラトリーメソッド

6.日本におけるラボラトリーメソッド

 日本におけるTグループは、1958年に清里において開催された2週間にわたるワークショプが、初めてのものとされています。
 このワークショップは、世界キリスト教協議会主催の「教会における集団生活指導者研修会」というテーマの研修会であり、アメリカ、カナダのトレーナーのもとに開催され、成功し、さらにその後、1960年に第二回目のTグループが開催され、多大の成果を収め、ラボラトリー方式による教育方法が極めて効果的であること、革新的で今後の教育にとって価値が高いことが強く認識されることになりました。
 それらの研修の成功を受けて、1962年4月に立教大学内の一機関として「キリスト教教育研究所(通称 JICE(ジャイス):Japan Institute of Christian Education of Rikkyo University)」が設立されました。
 日本におけるTグループやラボラトリーメソッドによる教育技法は、このJICEの活動が中心となって広まっていくことになったのです。
その時のJICEのリーダーは、柳原光先生であり、私もご指導をいただいた先生です。
柳原先生は、気高くフェアーであり、不正には厳しく、また人間には優しく、自らがクリスチャンでいらっしゃったので、背景にキリスト教の人間哲学をしっかりと基盤に置かれてプログラムを運営されていました。
 私自身は、組織宗教には縁が無く、クリスチャンではないのですが、人間関係の本質は愛であること、人間存在の価値は途方も無く大きいこと、といった哲学を柳原先生の生き方やラボラトリーのプログラムから教えていただきました。残念ながら柳原先生は1994年1月にご逝去されていますが、先生から教えていただいたことは今の私にとって貴重な宝であり、先生の哲学は、今でも私自身の仕事の根底に流れています。

 さて、当初、そのようないきさつで、日本におけるTグループは、キリスト教の聖職者の方々を対象として立ち上がってきたのですが、その後、産業界においても、従来にない学習方法であることや、行動変容を促す実践的な方法であることが注目され、企業研修などに取り入れられて、大きなムーブメントを巻き起こすことになりました。
 しかし、大きなブームの中で、一部コンサルタントや業者などにおいて、ラボラトリーメソッドの原点となっている哲学である「人間尊重」の人間観や「共に学ぶ」教育観が欠如した、時には、洗脳的な操作や支配が横行し、STや自己啓発セミナーなど、社会問題ともなったのです。
 この問題は、現在でも続いており、このようなメソッドを安易に利用したコンサルタントやセミナー会社、業者で、問題視されているところも少なくありません。

 臨床心理学者カールロジャーズがラボラトリーメソッドを「今世紀最大の最も将来性のある社会的発明」と評したほど、ラボラトリーメソッドには、可能性と効果性を秘めていると言えるのですが、諸刃の刃であり、反面、使い方を間違えると、”人の心”を扱う方法であるだけに、大きな問題を起こしてしまう可能性は否めません。
 歴史的な経緯からも、ラボラトリーメソッドを運営するファシリテーターは、真摯な姿勢と哲学と注意深さが必要といえましょう。

 

【体験学習とは シリーズ】

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3.体験学習の効果

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体験学習とは? 5.Tグループの誕生

5.Tグループの誕生
 Tグループは、1946年夏、コネティカット州ニューブリテン市の州立教育大学で、コネティカット州教育局人種問題委員会とマサチューセッツ工科大学集団力学研究所共催で開催されたワークショップ「公正雇用実施法の正しい理解とその順守を促進する地域社会のリーダー養成」での偶然の出来事に端を発しています。

 当ワークショップの参加者は、ソーシャルワーカー、教育関係者、産業界の人や一般市民で、「人種差別をなくすためにはどのようなことが必要なのか?」についてのテーマのもとで、グループ討議やロールプレイングなどでプログラムが展開してくことになります。
 レヴィンは、そのワークショップがより効果的に運営されるように、他の研究員と共に、スタッフとして参加したのです。

 さて、一日目のプログラムが終わった後、Tグループ誕生の発端となる出来事が起こります。
 初日のプログラム終了後、K.レヴィンの発案で、グループの状況をより正しく認識するためのスタッフミーティングが行なわれました。話し合うメンバーは、もちろんスタッフですが、そのミーティングに興味を持っている数人のワークショップに参加している受講メンバーが、スタッフミーティングに参加することを希望し、傍聴者として参加することを許可されたのです。

 ミーティングでは、当初、ワークショップ中にグループ討議をしているときのメンバーの言動や様子、感情の動き、リーダーシップやコミュニケーション上の出来事に関するさまざまなプロセスの観察報告がなされていました。しかし、観察データの報告の最中に、そのミーティングを傍聴していたワークショップ参加メンバーから、報告されていた観察事実の解釈に対して異議が唱えられたのです。それをきっかけに、観察報告だけではなく、グループ討議の中で起こっていたワークショップ参加者の生の体験や本当に感じたこと、気持ちが開示されるようになり、人間関係のありのままのプロセスについて、さまざまな人から意見が出てきて、結局は、リーダー、調査研究者、メンバー全員が、一堂に会して、3時問にも及ぶ討議となったのです。

 報告された観察事実の解釈の一例を挙げると以下のようになります。

 「午前10時、X夫人はグループリーダーに攻撃を加えた。Y氏はリーダーの弁護につとめた。そのため、X夫人はY氏と激論を戦わすことになった。また他のメンバーの中には、この論争に巻き込まれてどちらかの味方をするはめになった者もいた。他のメンバーは恐怖を感じ、2人の激論を平穏におさめようと努力しているように思われた。しかし、それも激論中の2人からは無視された。10時10分、リーダーは、激論のために忘れられていた話題に注意をひきもどした。X夫人とY氏は、その後の討論でも互いに反駁しあった」。 『人間関係トレーニング』(津村俊充・山口真人編 ナカニシヤ出版)P11より引用

 このような観察報告に対して、グルーブメンバーが体験した感情や心の動き、他者や出来事に対する自分の認識や反応などのデータを率直に出し合って、その場で起こっていた本当のことをオープンにして、全員がありのままに認識することができるようになっていったのです。

 また、それと同時に、以前のグループ討議のことではなく、今ここのスタッフミーティングで起こっているプロセスにも焦点が当たるようになり、今ここで感じているお互いの正直な気持ちが開示されると同時に率直なフィードバックが行われ、コミュニケーションが深まることを通して、メンバー同士の深い相互理解が起こり、想像もしていなかった家族に感じる以上の親密さ、信頼、愛を体験することになります。

 この出来事は、メンバーにとって、人種差別をなくすこと、人間尊重、相互理解や相互信頼ということについて、体験を通した深い理解と学習を促進し、メンバーやスタッフにとって非常に大きなインパクトを与えると同時に、貴重な学習の機会となったのです。

 レヴィンや参加メンバーは、この出来事を通して、人間関係やグループの学習は、既に一般化された知識や概念の学習よりも、”いまここ”の場で起こっているリアルな体験を学習素材に用いる体験学習の方が、はるかに効果的であることに気づいたのです。

 この出来事がヒントになって、レヴィン没後、翌1947年夏、メイン州、ベセルにおいて、前記ワークショップと同じトレーニングスタッフで、3週間のセッションが開催されました。
 このプログラムは、BST(Basic Skil Training)とよばれ、翌年の1948年以降は、NTL(National Training Laboratories)が主催し、”Tグループ”と呼ばれるプログラムとして、開催されるようになりました。

 以後、Tグループは、様々な技法を取り入れて、ラボラトリーメソッドと呼ばれる教育技法として、全世界に広がっていったのです。

<参考文献>
 「TグループQ&A(1990年3月)」 星野欣生 『人間関係』南山短期大学人間関係研究センター刊
 「人間関係トレーニング」 津村俊充・山口真人編 ナカニシヤ出版

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体験学習とは? 4.体験学習の原点

4.体験学習の原点

 体験学習の歴史は、K.レヴィン(Lewin,K,.1890-1947)の活動に端を発しています。
 レヴィンは、社会心理学の偉人であり、小集団の人間関係(コミュニケーション、リーダーシップ、信頼関係など)がそのパフォーマンスに大きな影響を与えているだろうとの考え方をもとに、多くの小集団の実践研究を展開し、グループダイナミクスと呼ばれる小集団の社会心理学の分野を創始しました。

 彼の研究を通して発見された理論や方法は、大変効果的で有用なものが多く、『パーソナリティの力学説』『アクションリサーチ』『力の場の理論』『グループダイナミックス』など、現在でも多くの理論や技術が幅広く活用され、応用されています。
 その技術の中の1つに、Tグループと呼ばれる人間関係を学ぶことを目的とした学習方法があります。

 Tグループは、「人間関係スキルの向上、個人の人間的成長、リーダーシップなどのグループスキルの向上」などを目的として開催される集中セッションであり、通常5泊6日程度の合宿で開催されることが多いといえます。
 プログラムは、主に、Tセッションと呼ばれる80分にわたる集中セッションが、休憩を挟んで1日4~5回程度繰り返される展開となります。
 Tセッションでは、椅子だけが人数分円形に並べられており、ファシリテーターとメンバーは、自由に着席します。実施内容は、何も決められておらず、すべてがその場で起こったことを元に進められていきます。学習の素材は、「いまここ」であり、今ここで起こっている気持ちや人間関係、ダイナミックスを個々人が言語化して、お互いに対話することを通して理解を深めていく展開となるのです。
 主に、昼食後の午後一番には、Gセッションと呼ばれるセッションが実施されることがあります。Gセッションとは、Tセッションとは違った状況の中で、プロセスへの理解を促進するために実施されるセッションで、あらかじめ構造化された実習やツールを使用して自分について、自他の影響関係について学ぶことになります。実習は、たいていよく工夫されており、刺激的で、楽しいことが多く、グループで起こっている人間関係やダイナミックスが浮き彫りになり、とても探求しやすくなることが多いといえましょう。

 体験学習とは、実は、このTグループを応用した学習方法であります。
 現実的に6日程度の日程を研修に使えない企業や組織の事情を背景に、もっと短時間で効果的な方法をということで、主に、Tグループにおける午後一番で実施される構造化された実習を元にしたGセッションだけを集めて実施するようになったものが、体験学習だったのです。

【体験学習とは シリーズ】

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2.体験学習の学習プロセス

3.体験学習の効果

4.体験学習の原点

5.Tグループの誕生

6.日本におけるラボラトリーメソッド

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8.私のTグループ体験

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