カテゴリー別アーカイブ: 06.人材教育の理論・情報

分離感について⑤ 「分離感と施策」

 人事諸制度には、さまざまな施策があるが、分離感の視点で見直してみると、本来の意図とは違った効果や副作用が見えてくる。たとえば、能力主義、成果賃金制度について。両施策は、本来、従業員の働きに見合った正当な報酬を提供することによって、従業員のモチベーションを高めようとする試みである。しかし、分離感の視点からみると、成果賃金制度は、従業員の一体感を壊し、分離感を高め、結果的に生産性を低下させる強烈な副作用がある。他者よりも仕事をしていることを証明することを通して自分の評価が決まるので、他者は、協力者というよりはライバルとなる。協力と競争は2者択一であり、一般的に言われているように両方を上手になんて器用なまねはできない。いったん競争が始まれば、関係性は、親愛から警戒へ、分かち合いから取引へ、協力から戦いへ、信頼から裏切りへと大きく変容していく。結果的に、組織の中で、より多くの隠し事、うそ、ごまかし、陰謀、策略がまかり通り、より小賢しく悪辣なやり方が勝利する質の悪い狂気の風土となる。従業員は、不信、怒り、孤独、疎外感、など多くのストレスを抱えるようになり、結果的に生産性に悪影響を及ぼすだけではなく、社会から糾弾されるようなトラブルを起こすなど、組織的な機能不全に陥るのだ。

 一方、幸運にも一体感をはぐくむことができた会社は、奇跡的ともいえる成長を遂げる実績を次々と上げている。(続く)

 

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分離感について①「分離感とは」

分離感について②「分離感の状態」

分離感について③「分離感の状態」その2

分離感について④「分離感と生産性」

分離感について⑤「分離感と施策」

分離感について⑥「分離感と施策」その2

分離感について⑦「分離感は幻想」

分離感について⑧「自然本来の社会性」

分離感について⑨「人と組織の新しい可能性」

 

<関連プログラム>

リーダーシップ研修”To be a Hero”

コミュニケーション研修”アドベンチャー トゥ エンカウンター”

分離感について④ 「分離感と生産性」

 分離感を生産性の視点から考えてみよう。結論から言えることは、分離感と生産性は反比例の関係にある。分離感が強まれば強まるほど生産性は低下する。

 2つのチームがあるとする。かたやお互いに反目しており、隠し事とうそ、策略と陰謀、”人の不幸は蜜の味”という感じ方を持ったメンバー同士がお互いに悪意を向け合う中、警戒し、攻撃と防衛、競争に終始しながら共通の目的に向けて仕事をするチーム。

 かたや、お互いに気のおけない仲間であり、深い関心と理解があるので、うそや隠し事は察知されて闇のつけいる隙がなく、今ここで起こっているあらゆることについて深い理解と共感があるので、本当に必要な適切な対応がいつでも取れる体制にある。もし問題が起こったとしても、3人寄れば文殊の知恵が機能しており、話合いによってクリエイティブで最も効果的な解決法に導かれていくチーム。

 そのような2つのチームの生産性を考えた場合。前者が不利であることは誰でもわかる。分離感は、強ければ強いほど生産性を低下させるのだ。(続く)

 

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分離感について③ 「分離感の状態」その2

(引き続き 2.分離感の状態)

②日常生活の状態

 社会的に常識とされている人と人との間の距離感の状態。表立って戦い合っているわけでもなく、かといって、肉親のように親しく感じているわけでもなく、お互いに、社会的な関係を維持できる関係性の状態である。自分と他人の境界線は、比較的はっきりとしており、自分と他人の関係性は、協力関係というよりはむしろ取引関係である。自分対他人を比較的平和的に体験できる場であり、自我の成長の場ともなる。しかし、分離感の反映である疎外感や孤独感は絶えることなく、主要な社会性の特徴の一つとなる。

 

③共感の状態

 他者に強い親しみを感じ、気持ちを分かち合うことができる状態である。もはや、”自”は、”他”と異なるものというよりは、本質的には同じものと感じる。”他人”のいたみは”自分”のいたみであり、”他人”の喜びは”自分”の喜びである。人間関係において、相互の感情や意向など、ノンバーバルの領域について、共感的にはっきりとわかるので、そこには、うそやごまかし、隠し事の入る余地はない。関係の中で起こっている様々なあらゆることが、オープンとなり、受け入れられ、誤解なくありのままに理解される。そのような関係性の中では、隠し事、演技、うそ、ごまかしで自分を演出する必要はまったくない。自分は、他人から、ありのままを受け入れられ、すべてをそのまま愛される。愛されるために自分を変える必要が全く無いのだ。他者に対しても同様であり、自分は他者の中で起こっていることを、客観的にではなく、体験的に理解できる。他者の悲しみを自分の悲しみとして体験し、他者の喜びを自分の喜びとして体験する。そのような体験にケチをつけて、”本来ならばこうあるべきだ”などと説教しようなどとは思いもよらない。そのような体験をそのまま受け入れて誤解なく理解し、そのままを心から愛することができるのだ。このような共感の状態において、人は初めて自分らしさを自由に謳歌し表現することができる。そのような関係性に一体化した自分自身を初めて心から幸せと感じることができるのだ。(続き)

 

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分離感について② 「分離感の状態」

 分離感は、境界の性質とその状態の2つの視点から特徴を捉えることが出来る。

1.境界の性質
 自他の境界は、時と場合に応じて変化する。自分と大変親和的で自分が受け入れやすい対象に対しては、境界線は柔軟であいまいになる。例えば、自分の大好きな食べ物は、自分の口の中に受け入れ、ついには自分の体と同化し、自分の一部になる。自分の大好きな人とは”もらい泣き”のような共感が起こり、自他の感情の共鳴と相互理解が起こる。
 逆に、自分と親和しない受け入れづらい対象に対しては、境界線は固くはっきりと浮き上がり、まるで戦争当事国同士の国境線の様に緊張と対立が起こる。

2.分離感の状態

①戦いの状態

 ”他”に対して脅威や反感を感じ、”自”を守ろうとする状態であり、”自分”が、”他”の脅威にさらされて萎縮し弱い犠牲者のように感じる。自他の境界線は厚くなり、固く、高い壁ができた状態となる。個の状態になると、基本的に”他”は、どんな存在であれ、潜在的な敵であり、どんなフレンドリーな装いをしていてもいつかは攻撃に回る信用のならない拒絶すべきよそ者となる。だから、他からの働きかけは、どんなにそれに愛があるように見えようが、それは何かを奪おうとしている操作や攻撃に感じ、あらゆる働きかけにプレッシャーを感じる。結果、人間関係は、競争とサバイバル、戦闘と防衛の関係となる。(続く)

 

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分離感について① 「分離感とは」

 分離感とは、他者と私が分離しているという感覚である。人は、多かれ少なかれ、誰もが分離感を持っている。それがなければ、自分を認識できないからだ。

 「私は、背が高い」と認識するためには、背の低い他人が必要であり、

 「私は、強い」と認識するためには、弱い他人が必要であり、

 「私は、正義である」と認識するためには、悪である他人が必要であり、

 「私は、私である」と認識するためには、私ではない他人が必要である。

 分離感は、寂しさの原点でもあるが、自己認識の原点でもある。さまざまな悲しみの原点でもあるが、個としての成長の原点でもある。ネガティブとポジティブ、裏腹な性格を持つ分離感。やっかいではあるが、絶対に避けるわけにはいかない分離感について、考察を進めていきたい。分離感にはどんな特徴があり、どのようにかかわればいいのか?そんなテーマに挑戦していきたい。

 (続き)

 

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不確定なことを受け入れる

「不確定なことに導かれることは良いことなんです。

貴方は不確定なことを受け入れることができますか?

貴方の人生に何が起こるのかを知っているべきだと決め込まないで、わからないこと、不確定なことを受け止めるのです。」

 エックハルトトール

社長との距離感が業績を左右する

  社長との心の距離「火星と同じぐらい遠い」  asahi.com 2010年5月16日

 
 社長との間に感じる心の距離は火星と同じぐらい遠い――。人事コンサルティング会社のJTBモチベーションズ(東京都港区)が実施したアンケートで、こんな会社員の心持ちが浮き彫りになった。

 従業員500人以上の会社に勤める全国約500人を対象に、社長との「気持ちの上での距離」を調査。「違う星にいる(4億キロ)」「違う国にいる(1万キロ)」「すぐそば(1メートル)」など八つの選択肢から選んでもらった。一番多かったのは「違う星」で、20.4%。4億キロは、地球と火星が最も離れた時の距離にあたる。

 このほか、「違う都道府県にいる(500キロ)」が20.2%、「違う国」が19.4%と続いた。「一心同体と感じる(0メートル)」を選んだ人は0.2%にすぎなかった。

 社長を遠く感じる理由は、「コミュニケーションが少ない」「こちらの仕事や状況を理解していない」が多かった。距離を遠く感じる人ほど、別の質問で「自分の仕事に対するモチベーションが低い」「会社の業績は悪化」と答える比率が高くなった。

 調査を担当した菊入みゆきさんは「社長が社員とコミュニケーションをとることは、社員のモチベーションや会社の業績の向上につながる有効な手段といえる」と提言している。(山根祐作)

 

 とてもユニークな意識調査ですよね。社長の心理的な距離感が、火星くらいに遠く感じるとは、それはずいぶんと遠いんですね。大声で呼んでも、とてもとても届きません。

 原因は、コミュニケーション不足と無理解無関心。社長さん、社員は、自分たちにどうかかわるのかにはとても敏感で、よく見ているんですよ。火星に追いやられるということは、好かれているというよりは、明らかに嫌われている。でも、それは、社員の性格が悪いからではなくて、社長さんの態度が悪いからだそうです。どうぞどうぞお気を付けくださいませ。

 社長との距離感が大きい人は、モチベーションも低く、会社の業績も悪化しているとのこと。恐ろしいことです。会社の業績は、まさに、コミュニケーションによるところが大きいのですね。調査を担当された菊入さんのおっしゃる通り、コミュニケーションを改善することがやるきと業績アップの秘訣なのだということが改めてわかります。なんだかんだ言っても、経営には、愛と心意気が必要だっていうことですね。

自尊心の重要性⑤(最終回) カマスの教え

魚のカワカマスを使った実験があります。カワカマスと餌になる小魚をガラスで仕切ってしまうと、餌を取ろうとしたカマスが何度もガラスにぶつかってしまい、最終的には、捕食をあきらめてしまうのですが、仕切っていたガラスを取り外した後でも、カマスは、餌に食いつこうとはしなくなるのです。

度重なる不快な痛みを体験すると無力感を感じうつ状態となり、普段できることができなくなるという学習性無力感の典型的な実験です。

このことは、かますだけではなく、私たちにも当てはまることなのではないでしょうか。私たちは、多くの痛みを体験して、どんどん萎縮して、小さく小さく回遊するようになってきたのかもしれません。チャンスが目の前にやってきても、「どうせだめだから」「どうせ罠だから」と思い込んで飛びつくこともせずに、ただ、日常の習慣を繰り返してしまっているのかもしれません。

今、私たちは、「自分はこんなもんだ」と思っている自分は、狭い了見で解釈し思い込んでいる矮小なイメージであり、もしかしたら、もっともっと大きい壮大な存在、地球大、宇宙大のスケールなのかもしれません。本来の姿は、想像をはるかに超えるくらいに明るく、元気で、大胆かつ勇敢で、楽しく、思いやりにあふれ、自由で壮大なのかもしれません。

私たちは、自分にしろ他人にしろ、萎縮し、恐怖でトゲトゲしくなった、ちっぽけな姿をその人そのものだと思い込んでしまっていないでしょうか。そのような欠点は、そのひとの本質ではありません。傷つき追い込まれた結果として現れてきた一時的な生傷やかさぶたであって、その人そのものの姿ではありません。人は断じて欠点だらけの無力な存在ではありません。人の可能性や潜在性は、今見えているちっぽけな姿とは比べようもないほど大きく、想像をはるかに超えて壮大なのですから。

では、どうすれば、どうすれば、他人の欠点ではなく長所を見て、長所を伸ばすことができるのでしょうか?心理学の真理としてこんな言葉があります。

「他人を変えようとするならまずは自分から」

まずは、自分の欠点ではなく、長所を大切にしませんか。欠点をなじるのではなく、長所を伸ばしていきませんか。自分を大切にしませんか。自分を愛を持って受け入れて尊重しませんか。

自分を大切にできるからこそ、他人も大切にできる。自分を愛せるからこそ、他人も愛せる。自分を信頼できるからこそ、他人も信頼できる。本当のところ、自分の潜在性や可能性は、今の想像をはるかに超えて大きいのですから。自分の人生の力強さ、可能性の大きさを大切にしませんか。そんな生き方をお勧めします。

 

<関連記事>

自尊心の重要性①「自尊心とは」

自尊心の重要性②「自尊心を巡る誤解」

自尊心の重要性③「自尊心とプライドの違い」

自尊心の重要性④「欠点は治らない」

自尊心の重要性⑤「カマスの教え」

 

動画「自尊心の重要性」

 

<関連プログラム>

リーダーシップ研修”To be a Hero”

コミュニケーション研修”アドベンチャー トゥ エンカウンター”

体験型新入社員研修”アトランティックプロジェクト”

 

<関連書籍>

電子書籍『自尊心の重要性』

 

単行本『実践就活マニュアル』

電子書籍版『実践就活マニュアル 第1巻 就活に必要な心構え』

 

<動画「自尊心の重要性」>

①自尊心とその影響

 

②自尊心とプライドの違い

 

③日本における自尊心の現状

 

④自尊心と生き方

 

自尊心の重要性④ 「欠点は治らない」

伝説の打撃コーチと呼ばれる高畠導宏さんは、自分のコーチ体験を踏まえて、「欠点は治らない」と断言されています。彼の指導方針は明確であり、欠点を矯正しようとするのではなく、長所を伸ばそうとするのです。長所を褒め、選手の長所を引き出すことができる的を得た練習方法を工夫し、勇気づけて、ともに練習を繰り返すことで、見違えるように選手が力をつけて、結果的に30人以上のタイトルホルダーを育てることができたのです。

基本的に、人材を育成する方向性として、欠点を矯正するよりも長所を伸ばすこと、自信を砕くのではなく自尊心をはぐくむほうが、結果的に大きな成果につながるといえましょう。影は、目立つので、つつきたくなりますが、日のあたる側面のほうが圧倒的に大きいことを忘れてはいけません。人は、確かに欠点を持っている完ぺきではない存在ですが、断じて無力ではありません。その人の可能性や潜在性は、人の見立てや思い込みよりも、はるかに大きいのです。それをちっぽけにしか見れないのは、リーダーの器量のなさ、自身の勝手な絶望から来る偏見と言えましょう。自分自身に絶望している人は、他人にも可能性よりも絶望を見出します。自分自身を嫌っている人は、他人にも愛すべき長所よりも憎むべき欠点を見出します。リーダーとして、そんな偏見の罠に陥ってはいけません。自分にしろ、他人にしろ、人は、断じて欠点だらけの無力な存在ではありません。影よりの光のほうが圧倒的に大きく、その潜在性と可能性は、想像をはるかに超えて、壮大なのですから。(続く)

 

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自尊心の重要性④「欠点は治らない」

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動画「自尊心の重要性」

 

 

<関連書籍>

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<動画「自尊心の重要性」>

①自尊心とその影響

 

②自尊心とプライドの違い

 

③日本における自尊心の現状

 

④自尊心と生き方