ところで、経営の目的は、存続と成長ではない。それは手段であって目的ではない。経営の目的は、こころざしにある。創業の精神、大義、社会貢献への思い、哲学、気高い理想にある。企業経営者は、このことを決して忘れてはいけない。経営の目的は、株主に文句を言われないことでも、シェアーを伸ばすことでも、コストを削減し利益を絞り出すことでもない。それらは、方便であって本質ではない。本当のところ経営の目的は、経営理念なのだ。
陰気な皮肉屋の「理想や理念では飯は食えない」という言葉に惑わされてはいけない。青臭い理想こそが未来を拓くイノベーションの源となる。
「戦争の真っただ中にあって、夢だの希望だの浮ついた甘いことを考えるなんて、間抜けでいかれた青二才だ」と言うトゲトゲしく不機嫌な頑固者の言葉に惑わされてはいけない。実のところ、経営が存続していくためには、未来の奇跡が必要である。現状の枠組みの中で5年後10年後もうまくやれると言う考えは幻想である。未来において新機軸となる新商品、新市場の開拓、全く新しい協力関係、多くの感動の創出が起こらなければ、現状以上の売り上げは確保できない。そして、未来に起こるイノベーションは、現在において予測することは全く不可能である。なぜならそれは現在のあらゆる想定を超えているからだ。そんな奇跡を生み出すためには、恐怖から逃げ惑うD動機の萎縮し攻撃的で孤独、感受性の鈍いハートには不可能である。それは、理想に向けて陽気で元気で前向きで他者への深い関心と愛を持った感受性豊かなメンタリティにこそ可能なのだ。
B動機による経営にシフトすることは、経営者にとって勇気が必要である。D動機による支配体制を敷いている分には経営者は楽である。あめとムチによって容易にコントロールできる上に、命じたことは確実にやり遂げることを見込めるので、簡単に未来を予測できる。だから、仕事の基軸は、どなること、脅すこと、弱みに付け込むことであり、それは、巧妙に計画し考えれば誰でもできうる。
一方、B動機によるマネジメントを展開しようとする経営者は、勇気と度量が必要である。人間主義的で温かく働きやすい環境を造るために多大なエネルギーと投資が必要であると同時に、そのようにしたからと言って成功の保証はない。従業員はそれを意気に感じて一生懸命に働いてくれる保証はないし、新商品を生み出すマジックを見せてくれる確証は全くない。効果は、現れるとも現れないとも言えないうえに、それが表れるとしても長期的である。だから、経営者は投資効果の責任を問われ、口うるさい利害団体からの攻撃の矢面に立たされる。高いストレスの中にありながら、気高い精神性を維持し、愛を持って従業員の可能性を信じきる必要がある。まさに、戦いの最前線で戦う武将と部下をいつくしむ仏の両面を持つ必要があるのだ。
しかし、厳しいB動機の経営を貫く会社には、大きな飛躍の可能性がやってくる。以下、消費者に感動を提供し、本当に社会貢献を実現し、イノベーションと創造性のもとで大きく成長を遂げてきた勇気ある経営を紹介しよう。(続く)
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