マズローの欲求理論⑦ D動機の生き方

 D動機によるものとB動機によるものとでは、人生は大きく異なる。

 D動機による人生は、基本的に戦いである。死の恐怖から逃れることがテーマとなるので、自分に脅威を与えるあらゆるものとの戦い、勝ち抜くことが必要となるのである。

 人にとって、最も恐怖を感じる脅威は、飢餓である。だから、飢えないように何としても食糧を確保しなければならない。しかも、今食べる食糧だけではなく、明日の食糧も確保しておく必要がある。さらに、未来永劫まったく飢えに苦しむ必要のないくらいの食糧の在庫がほしい。現代においてそんな欲求を満たすものはお金である。お金があればいつでも必要なだけ食料を確保できるし、お金は永遠に腐らない。だから、お金がほしい。だから、いやな仕事でも命令に従い頑張って働いて稼がなければならない。自分や自分が愛する者たちを飢えの恐怖から守るためにはお金が必要なのだ。しかも、今日明日の食いぶちだけではなく、未来永劫飢えることのないほどのお金が必要であり、その必要とする量は、多ければ多いほどよく、際限はない。しかし、どんなに仕事をしてたくさんのお金を貯金することができても安心と満足を得ることはできない。たとえ、運よく世界中の富を独占することができたとしても、安心と満足を得ることはできない。なぜならば、D動機は、死の恐怖から逃れることが目的であるが、死の可能性はなくすことができないからだ。

 人にとって、次に恐怖を感じる脅威は、敵である。自分も必死になって富を確保しようとしているから、確保できていない他人の恐怖と怒りはよくわかる。だから、周囲の人を見たときに、その人たちの好意や善意よりも、自分の富を奪おうとする悪意の可能性に目を奪われてしまうのだ。D動機の人にとって、この世は生存競争、弱肉強食の社会である。分離感が強く、自分は、常に脅威にさらされており、敵に囲まれており、孤独であると感じている。自分や自分が愛する者たちは、悪者たちの悪意にさらされており、自分自身を守るため、愛する者を守るためには、悪者たちを攻撃し、痛い目にあわせて撃退し、奪われたものを奪い返さなければならないと考えている。やらなければやられるのだ。こうして、D動機の人たちは、どんどん防衛的になり、どんどん攻撃的になっていく。彼らにとっての成長とは、まさに、武器と防具の強化を意味するのだ。強化すべき防衛力は、強ければ強いほどよく、際限がない。しかし、たとえ、運よく世界中でかなう者のないほどの強さを得ることができたとしても、安心と満足を得ることはできない。なぜならば、D動機は、死の恐怖から逃れることが目的であるが、死の可能性はなくすことができないからだ。

 D動機の生き方は、自分と愛する者を守るために、必死になって防衛し、必死になって努力し、必死になって攻撃して、必死になって獲得する。しかし、D動機の生き方は、その必死の努力の割には、実る果実は美味しくも豊かでもない。

 D動機(恐怖や不安)によって、どんなに必死になって頑張っても、安心と喜びは得ることはできない。なぜならば、恐怖や不安の可能性はいたるところにあり、無にすることはできないからだ。恐怖から逃れようとして外部を取り込もうと頑張るが、決して恐怖から解放されることがないので、外部から取り込もうとする渇望は際限なく起こってくるが、その欲求は永遠に満たされることはない。むしろ振り返ると、埃かぶった使われることのないとてつもなく大きくいびつな廃墟を発見することとなる。

 恐怖から逃れようとして自他の境界を厚くし、内部を守ろうと頑張るが、決して恐怖から解放されることがないので、自他の壁を厚くしようとする渇望は際限なく起こってくるが、その欲求は永遠に満たされることはない。むしろ、振り返ると底知れない孤独と寂しさにおぼれそうな自分を発見することとなる。

(続く)

 

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