マズローの欲求理論⑥ B動機の経営事例

<B動機による経営の事例>

【リストラなしの年輪経営「伊那食品工業」】

伊那食品工業は、長野県伊那市の寒天メーカーであり、半世紀にわたって増収増益を遂げている。

その原動力となったのは、会社を導いた現会長の塚越寛氏による経営管理である。創業当初伊那食品工業は、半年で大赤字を出し、非常に危険な状況に陥っていた。塚越氏は、親会社から危機を乗り越えるために社長代行として経営に参画した。

 会社を強くするためには何が必要か?何が会社の存続を保証してくれるのか?経営者として塚越氏はずっと考え、出てきた結果が、「社員のやる気を引き出すこと」であった。機械は、どんなに頑張っても能力以上の仕事はしないが、人は本気になれば、3倍の仕事をする上に、工夫をこらして新しい未来を開くと考えたのだ。

 それでは、社員のやる気を引き出すためには何が必要か?塚越氏は、「これはおれの会社だ」と思ってもらえる会社作りをすることだと確信した。とはいえ、単に成果型の賃金にするだとか株式の持ち合いをするという制度的で利害に働きかけるものではない。もっと本音に働きかける方法が必要だ。かといって、冠婚葬祭、飲み会など積極的に開いていこうとすることはしない。負担が大きいからだ。

 塚越氏は、会社を自分の家族だと思ってもらうためにしたことは、情報公開だった。隠し事をすることなく、会社の現状の様々な問題を正直に分かち合ったのだ。信頼は、演出をしたり演技をしたり技巧をこらして作るものではない。正直なコミュニケーションを通してお互いの誤解や疑念、恐怖や不安を解消できれば自然に起こる感情である。そして、確かに信頼関係は難しいが、本当に実現できたらすべてが変わるのだ。

 また、塚越氏は、本当の意味で社員を大切にしようとした。だから、脅して焚きつけて働かそうとなんか夢にも思わない。逆に、安心して喜んで働いていける環境をつくろうとするのだ。だから、伊那食品工業はリストラはないし、今後もするつもりはない。また、人事制度は、純粋な年功序列である。やる気になってもらうための演出は特別するわけではないが、社員の不安や恐怖を引き受けて、社員を本気で守るのだ。社員を大切にするという経営の言葉は、淡い期待とともに、幾度も幾度も失望を呼んできた言葉でもある。しかし、本当にそれを貫いて信頼を勝ち取った会社は偉大である。そして偉大な成長を遂げるのだ。

 現在伊那食品工業は、国内マーケットシェアーが80%を達成。世界においても15%である。半世紀にわたって着実に増収増益を遂げる軌跡を持成し遂げている。そんな伊那食品の実績を見て、トヨタグループ、帝人など名だたる大企業が同社に学びに来ている。まさに、伊那食品は、新しい理想を切り開く未来企業なのだ。(続く)

 

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