第1章 16人の勇者へようこそ ―二つの軸と一枚の地図
あなたは、どんな勇者ですか?
そう聞かれても、少し困るかもしれません。
勇者という言葉には、「強く、正しく、迷わず前へ進む人」そんなイメージがあるからです。
けれど、現実の人間は、そんなに単純ではありません。
立ち止まる人がいる。
閉じこもる人がいる。
誰にも頼れず、一人で戦おうとする人がいる。
不安のあまり、世界を支配しようとする人もいる。
それでも人は、生きています。
迷いながら、
傷つきながら、
時には自分を守るために閉じながらも、
それでも何かを求めて歩いている。
この地図に登場する「16人の勇者」とは、そんな不完全な人間たちの姿です。
これは、人を分類して裁くための地図ではありません。
「今、自分はどこにいるのか」を静かに見つめ、なぜ今、行き詰まっているのか、そして、どこへ向かおうとしているのか、向かうべきなのかを探求するための地図です。
私は、この地図が、この生きづらい世界をあきらめずに生きようとする同志たちにとっての自己成長に向けての1つのロードマップとして参考にしていただくことを願っています。
1.二つの軸
この地図には、二つの軸があります。まずは、それぞれの意味をご紹介しましょう。
①縦軸
縦軸は、⑴複雑性・不確実性への耐性 と ⑵単純化・構造化欲求 という相反する二つの力のダイナミズムとして描かれます。以下、それぞれの意味をご紹介しましょう。
⑴複雑性・不確実性への耐性
人は、答えの出ない状況に出会うと、不安になります。
世の中には、簡単に白黒をつけられないことがたくさんあります。
正しいのに傷つけてしまうこと。
優しさのつもりが支配になること。
愛しているのに、すれ違ってしまうこと。
複雑性・不確実性への耐性とは、そうした複雑さを抱えたまま、すぐに答えを出さず、世界を見続けられる力を言います。
上に行けば行くほど、受け入れる度量が大きくなります。
⑵単純化・構造化欲求
しかし一方で、人は複雑さに疲れると、世界を単純化したくなります。
「あの人が悪い」
「こうすれば正しい」
「答えは一つだ」
そうした結論は、あくまでも自分の中の仮説であって、真実と言うわけではありませんが、そうやって言い切ってしまう事で、私たちは安心し、その枠組みで生活を続けることができるのです。
単純化・構造化欲求とは、こうした分かりやすいシンプルな答えに飛びついて安心したがる衝動のことです。ただし、あくまでも欲求であって論理化や仮説化のスキルではないのでご注意ください。
下に行けば行くほど欲求は強くなり、上に行けば行くほど、その衝動の束縛から自由になり、より丁寧な観察ができるようになります。
②横軸
横軸は、⑴オープンマインド と ⑵自己防衛欲求 という相反する二つの力のダイナミズムとして描かれます。以下、それぞれの意味をご紹介しましょう。
⑴オープンマインド
人は、心を開いて、他者と豊かな関係性を育む力があります。横軸の一要素は、このオープンマインドの力です。
右に行けば行くほど、心を閉じてひきこもり、左に行けばいくほど心を開いて、他者と共感の関係を育みます。
⑵自己防衛欲求
しかし、一方で、心を開くことはリスクでもあります。
現実は、決して甘い桃源郷ではありません。
傷つけられたり、利用されたり、拒絶されたり、侮辱されたり、…
人間関係の中では、喜びもありますが、一方で多くの痛みも存在します。
だから、人は、自分を守りたいという強い欲求を持つのです。
自己防衛欲求は、当たり前のことであり、排除すべきものではなく持つべき力です。
ただ、ここでの指標は、あくまでも欲求であって、スキルではないのでご注意ください。
右に行けば行くほど、自衛衝動は強くなり、臨戦態勢となり、左に行けば行くほど、その衝動から解放されて自由度が増します。
2.完全な白は存在しない
この地図には、完全な善人も、完全な悪人もいません。
勇者の中にも弱さがあり、暴君の中にも恐れがあり、賢者の中にも不完全さがあります。
人は、一義的な単純な存在ではなく、複雑で多層的・多面的な要素が混ざり合った存在なのです。
そして、その全ての自分に、意味のないものや排除すべき自分はいません。全てが大切でかけがえのないものであり、全てを見捨てるべきではないのです。
拒絶ではなく、受け入れること、ありもしない純粋な理想になろうとすることではなく、自分の複雑性や多面性をそのままで愛することこそが、自己成長に向かう上で、最も大切な態度だと考えています。
ただし、どれも、発展途上の存在であり、その状態に停滞しすぎること、変化がないことは、その人らしい生き方とは言えません。現状がどこで、何が原因で足踏みし、今後どう成長すればよいのかを考え、さなぎが蝶に変容するように、自分自身も進化していくこと、まさに成長への冒険の道こそが、自分らしい生き方と言えましょう。
この地図は、誰かを断定するためではなく、変化の旅を見るための地図なのです。
3.16人の勇者
この地図には、16人の勇者が登場します。
①自然児・隠遁者
②放浪者
③一匹狼
④職人
⑤暴君
⑥戦士
⑦求道者
⑧アーティスト
⑨達人
➉覇王
⑪魔法使い
⑫反逆者
⑬勇者
⑭仙人
⑮変革者
⑯賢者
そして、賢者へ向かう道は、一つではありません。それは、百花百様、人の数ほどのルートがあるのだろうと思います。
ここでは、代表的なルートを以下のように考えています。
⑴力と支配を通る道。①→③→⑤→⑩→⑫→⑬→⑮→⑯
⑵内面を深めていく道。①→②→④→⑦→⑪→⑬→⑭→⑯
⑶現実の中をバランスをとって真っ直ぐ進む道。①→⑥→⑬→⑯
なお、勇者に番号がついてますが、①から⑯への番号は「この順番通りに成長する」という意味でありません。また勇者の序列でもありません。シンプルに「地図を読むための座標」としてナンバリングしましたのでご注意ください。
この16人の勇者の考え方では、どのルートを歩んでいても、⑬勇者を経由します。
⑴ルートで力と支配と自己反逆を経た勇者、
⑵ルートで内側の深みを持つ勇者、
⑶バランスルートを真っ直ぐ来た勇者、
同じ勇者という名前の中に、異なる性格と深みがあるのです。
次回から、16人を一人ずつ紹介していきます。
さて、あなたは今、どんな勇者ですか?
