第19章 勇者としての成長
以上で、16人の勇者、一人ひとりの旅をご紹介してきました。
長い旅にお付き合いくださり、心より感謝申し上げます。
ここまで読まれた皆さまは、おそらくお気づきでしょう。
この本に登場した16人は、どこか遠い世界の英雄ではありません。
私たち一人ひとりの心の中に生きている16の姿なのです。
さて、ここからは、この図表をどう使うのかについてご案内したいと思います。
最終章は、2部に分かれています。第1部は、地図の活用の仕方がテーマで、第2部は地図の歩み方がテーマとなります。
第1部「16人の勇者地図の活用の仕方」
16人の勇者は、性格分析ではありません。人は、16人の勇者の全ての要素を内面に擁しています。今、どこかの勇者が優勢だからと言って、その人にはその勇者の要素だけしか存在しないということはありません。潜在的なレベルで、あらゆる勇者の要素は息づいており、多元的多面的な存在なのです。また、一生その勇者が優勢であり続けるということでもありません。人は変化成長するからです。
16人の勇者マップは、そうした人の成長や変化の道案内、人生と言う旅のガイドマップとして活用いただくことを目的に作成しています。
以下、そうしたガイドマップとして活用する上でのポイント、留意点をご案内します。
①すべての勇者は必要であり、価値に優劣はない。
全ての勇者は、人としてのある側面の勇者としての生き方を表現しているものであり、意味のない生き方は存在しません。
また、それぞれの勇者の価値には優劣はありません。どの勇者もとてもユニークであり、光と影、課題が存在し、とてつもなく魅力的です。
悪の勇者も存在しなければ善の勇者も存在しません。勇者は、一生懸命に成長のプロセスを歩んでいる存在であって、善悪や正誤の1元的見方をあてはめて裁くことはできません。そう言う見方は、冷たく的外れであって、勘違いなのです。
②成長の航路
この地図には、16人の勇者が登場します。
この世界には、ままならないものが二つあります。
一つは、外側の世界であり、一つは内面の世界です。
外面の世界は、時に不条理で、複雑で、思い通りにはいかないことが多く、予想のつかないことがらばかりです。だから、この世は、不安と恐怖でいっぱいです。
また、内面の世界も、自分の思いのままにはなりません。感じたくない感情が沸き起こり、思いつきたくない邪悪な思いがやってきて、時々、とんでもないことを口走ったり、間違いを犯してしまったりします。そして、そういう自分に自信を持てません。
人は、思い通りにならない内面と外面に挟まれて、そのはざまで、荒波の中、せいいっぱいエンジンをかけて、舵を切って人生を歩んでいます。
成長の航路は、もちろん一つではありません。それは、人によって、荒波の嵐の中を、さまざまな方向に向けて活路を見出していくのであり、生き方は百科百様、人の数ほどルートが存在します。
そのどれが正しく、どれが間違いということでもありません。全ての生き方は、広い世界でたった一人の生きざまであり、この長い宇宙の中でたった一回のドラマです。それは、たとえ間違えだらけで無駄だらけのように見えても、とてつもなくユニークであり、かけがえのないものであり、その人生の全てが尊く、図りしれない無限の価値を持つものでもあります。
ですから、生き方や成長のルートには、序列もなければ、優劣もありません。
16人の勇者マップでは、全ての生き方、成長ルートはそのありのままで美しく、個性的であり、大切なものであるという立場をとっています。
どのような成長ルートをたどっても正解であり、間違いということはないのですが、ここでは、代表的な航路が3つあると考えています。
⑴力と支配を通る道。
①自然児・隠遁者→③一匹狼→⑤暴君→⑩覇王→⑫反逆者→⑬勇者→⑮国王→⑯賢者
さまざまな力や技巧、ハイテクや機械技術、テクノロジーを駆使して世界の複雑さや不確実性に立ち向かい、この不条理で矛盾に満ちた先の読めない世界でたくましく未来を拓き、生き抜いていきます。
努力の結果、成功を納めますが、序列や支配の無い豊かであたたかい人間関係を育むことや内面の統率に関しては、未だに苦手であり、心が満たされる満足を得ることができません。部下はたくさん得たけど、友達は一人もできませんでした。
頂点にたどり着いたときに、その矛盾に耐え切れずに、力とテクノロジーの追求の旅を終えます。
今までの自分と向き合い、対峙して、今までの自分の生き方とは全く異なる方向に向けて舵を切り、新たな冒険に踏み出します。
そして、本当の自分、そして本当の関係性を求めて、さらなる成長を遂げていくことになるのです。
⑵内面を深めていく道。
①自然児・隠遁者→②放浪者→④職人→⑦求道者→⑪魔法使い→⑬勇者→⑭仙人→⑯賢者
世界の矛盾や暴力に打ちのめされ、世に言う成功に背を向けて、真実の関係性、真実の自分を求めて探求を進めます。技術を学び、職人技を身につけ、一本の道を深く深く極めていくことで、気付きを深め、ついに小梧体験を得ます。満足と喜びとともに、他者にもこの救いを捧げたいと願います。
しかし、ふと、寺院や制度などの安全な枠組みの中で、守られながら得ることができた学びであることに気づきます。愛や信頼は上手に扱えるけれども、敵意や悪意には全く無防備であり、守ってくれる構造がなければ、他人を救うどころか自分すら救うことができないことに気づくのです。
逃げまどってきた世界の無秩序さ、理不尽さ、そこかしこにいるドラゴンと向き合い、踵を返して立ち向かっていきます。
そして、自分の学んだ秘儀で他者に貢献すべく、荒波の嵐に船をこぎ出し、さらなる成長に向かうことになるのです。
⑶現実の中をバランスをとって真っ直ぐ進む道。
①自然児・隠遁者→⑥戦士→⑬勇者→⑯賢者
世界の不確実性に対して、こころざしを定め、強い意志と粘り強さで実行し、現実を変えていきます。
また、家族との愛ある豊かな信頼、仲間との裏の無い正直な関係、固く強く育まれる絆をもとに、自分の中の勇気、愛、自尊心という美徳を育んでいきます。
紆余曲折はありますが、困難があっても逃げずに戦います。
たとえ失敗し、敗北しても、言い訳せず、人のせいにせず、反省し、成長し、より強くなって障害を乗り越えます。
自分の理想に向けて、日々努力を重ね、鍛錬し、強くなります。
自分の中の弱さを見捨てず、癒し、手放していきます。
強く優しい軸をぶらさずに、自分と他人、社会を救うべく、成長の旅を進めていきます。
③勇者の人生にドラゴンはつきもの
世界中のどのような神話を探しても、ドラゴンが存在しない英雄譚は存在しません。英雄にとって、ドラゴンに象徴される痛みや苦しみ、耐え難い困難はつきものなのです。
人も同じであり、この世で生きる限りは、痛みや苦しみ、困難を避けることはできません。うまく逃げ切る方法は存在しないし、たとえ逃げ切れたとしても、成長をすることができないので、勇者にはなれません。
16人の勇者マップでは、困難や痛みは、避けるべき不幸とは考えていません。むしろ、それらと直面して立ち向かい、乗り越えるからこそ、勇者は、成長を遂げていくことができるのだと考えています。
人は、困難にであい、もがき苦しみ、対処法を考え抜いて、自分を鍛えて成長し、壁を乗り越えることで成長していきます。
怪獣がいるから表に出たくないとだだをこねるヒーローは存在しません。
勇者は、たとえ自分が傷つき倒される恐れがあったとしても、愛する者たちを守るために剣をとって果敢にドラゴンに立ち向かうのです。
ついには勝利を得、勇者として成長を遂げ、いつか自分のように悩み苦しんでいる者たちを救うのです。
痛みや苦しみがあるからと言って怯んではいけません。道がないからと言って待っていてはいけません。人には十分な勇気がまどろんでいます。それを使うかどうかは、ひとえにあなたの選択なのですから。
④勇気こそが成長を促す
マップを旅するために必要なものは、技術、知識、資格、スキルなど、さまざまなものがありますが、中でも、最も大切なものは、勇気であると言えます。
勇者は、自分を取り巻く世界にも、自分の内面にも、不確実でコントロール不能なさまざまなやっかい事、不安や恐怖が付きまとっています。
やっかい事に対しては、知識や技術で対処することができますが、圧倒される恐怖や不安に対しては、逃げずに立ち向かうためには何よりも勇気が必要です。
成長とは、ある意味で、恐怖を克服していくことでもあります。勇者は、さまざまな勇気を学び体得して、恐怖を乗り越え、成長していくのです。
⑤新しい挑戦こそが自分の中の未知なる偉大さを引き出す
人は、ややもすると日常に埋没しがちです。そこは文句や不満はあれども、安心できる領域であり、ストレスなく快適に過ごすことができる小部屋です。狭く限定された領域を出て、英雄としての成長に踏み出すために、いろいろな形で誘いを受けますが、快適な小部屋に固執する場合は、全ての働きかけを拒絶し、自分の部屋に引きこもります。しかし、そうした態度を続ける事は、決して自然なことではありません。人には、もっともっと大きく偉大なる可能性がまどろんでいて、その可能性を実現させることこそが、人の究極の使命だからです。
狭く限定された快適ゾーンを抜け出すには勇気が必要です。なぜならば、小部屋の外には、思いもよらない危険があるからです。しかし、日常に埋没していた時には見えなかった自分の新たな可能性が顔をのぞかせるときは、思いもよらない危険に直面した時です。どうすればよいのか分からずにもがき苦しむときこそが、自分の新しい側面を引き出すチャンス、英雄としての成長へのチャンスなのです。
だからと言って、やみくもに大それた危険に立ち向かうべきではありません。準備が整ってない課題に挑戦することは、無謀であって自然ではありません。それは、パニックゾーンと呼ばれる危険な領域であり、決して満足のできる成功には至りません。むしろ、必要の無い傷を受けて、長く苦しむことでしょう。
挑戦は、程よいリスクに挑戦することが大切です。しっかりと目を開いて自分の人生を注意深く見つめたならば、聞こえてくる誘いの声、提示されてくる課題は、みな、こうした程よいリスクへの挑戦であるものです。人生に訪れるさまざまなイベントこそが、こうした今の自分にとってちょうどよい程度の挑戦への誘いでもあります。だからこそ、人生のもろもろの出来事を嫌ったり拒否したりせずに、誠実に向き合い、困難から逃げずに学び、準備を整えて乗り越えていこうとすることが大切なのだと言えましょう。
