2005年5月13日の朝日新聞の朝刊に、米国調査会社ギャラップによる「職場への帰属意識や仕事への熱意」に関する意識調査の結果が掲載されていました。
調査は、2005年の3月に電話番号から無作為に選んだ千人を対象に実施され、03~04年にすでに実施されていた他国の同様の調査データと合わせると、14カ国の仕事や帰属意識に関する意識を比較、分析することができるとのことです。
調査結果によると、日本人の仕事に対する忠誠心や熱意が、
「非常にある」 9%
「あまりない」 67%
「まったくない」24%
となっており、「非常にある」の9%は、調査した14カ国のうち、シンガポールに並んで最低であり、最も高い米国(29%)の3分の1以下だったことが分かりました。
このデータによると、日本人の多くが、職場に反感や不満を感じており、会社に対する満足度は、世界の中でも最低クラスであると言えましょう。
弊社では、ES(従業員満足)が、企業の成長と存続にとってきわめて重要な要素であると考えております。よく、企業戦略の柱として、多くの企業でCS(顧客満足)を訴えていますが、私どもは、顧客満足主義を主張する大前提として、働く従業員が仕事や職場に満足し、自信と誇りをもって仕事に従事できている必要があると考えているのです。
だいたい、自分自身の今の仕事に満足していない人が、その仕事を通して他人に満足を提供しようとしても無理があると思いませんか?もしそのような努力をしたとしても、敏感な最近のお客様にとっては、無理がばればれであり、うそっぽいので、決して購買にはつながらないでしょう。
そのような視点から考えると、今回のこのようなデータは、最近の日本の経営に何か大きな間違いがあることを証明しているのではないでしょうか?
もちろん、従業員の問題もあるだろうとは思いますが、このような風土を作り上げてしまった経営スタッフの責任は否めません。ある意味、謙虚に、自分たちのマネジメントの方向性、施策、哲学をもう一度見直してみる必要があるのではないでしょうか。
弊社では、従来のような「あめとムチ」による管理志向は、管理されるほうのうつを生み、生産性や創造性を生み出すことはないと考えております。それが通用したのは、情報がリーダーに集約していた過去の権威主義の時代であり、さまざまなことがオープンとなり、公開される現代では、もはや機能しません。未だに「あめとムチ」で頑張っている組織もあるのでしょうが、それが通用するという信念があるからこそと思いますが、よく現実をご覧になると良いと思います。
そのような方法で、従業員は、輝いていますか?新しく魅力的なアイデアや商品は、生み出されていますか?ファンになってくれるお客さんは増えていますか?
現実に、伸びている組織や企業は、決して従業員を虐待しません。尊重し、お互いに理解する努力をいとわずに、ともに協力し合える体制を作る努力を惜しまない会社こそが、飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びているのは、間違いのない事実です。
もはや、人は、脅されたからといって仕事をするものではないし、にんじんをぶら下げられたからといって、それだけで本気を出すものではありません。人は、パンのみにて生きているわけではないのです。
「あめとムチ」による管理は、「それが通用するはず」と思っているのは、単なる思い込みであって、現実ではありません。先日のJR西日本の事故にも象徴されるように、その方針を強めれば強めるほど自らの首を絞めることになるでしょう。
米国では、そのことにとっくに気づいており、最先端の経営学やコンサルタントは、組織における人間性や愛の重要性を説いており、その成果を上げております。
弱肉強食で、適者生存が謳われる市場至上主義の米国においても、単なる取引や契約ではなく、人の情熱や信頼、愛が組織の存続や成長に絶対不可欠であることを理解し、その対策をとり、パフォーマンスにつなげているのです。
日本の企業も、いつまでも、旧時代の遺物にしがみついてはいけません。
今こそ、もともとあった日本のよきスピリットを生かし、信頼と情熱に基づいた、明るさと楽しさと冒険に満ちた経営に切り替えていく必要があります。
人は、本気を出せば、本当にすごいことができるものです。
その可能性と潜在性を信じて、人を大切にする、お互いに理解を深め合い、協力し合える体制を作っていこうではありませんか。