【成果主義の弊害の事例】 モチベーション3.0 ダニエル・ピンク著より引用
ダン・アリエリーも含めた四人の経済学者たちは、インドのマドゥライに仕事場を構え、外発的動機づけが成果に及ぼす影響を研究した。・・・彼らは八七人の参加者を集め、何種類かのゲームをしてほしいと頼んだ。たとえば、的に向かってテニスボールを投げるとか、・・・インセンティブの影響を調べるために、あるレベルの成績を達成した場合の報酬として、被験者に対して三種類の金額を提示した。
参加者の三分の一は、目標成績を達成した場合に、四ルピーという少額の報酬を与えられる
(・・・アメリカのおよそ五〇セントに相当)、もう三分の一の参加者は、四ルピーだ(およそ五ドルに相当)、残りの三分の一は、四00ルピーというたい一ん高額な報酬を呈られることになっていた。
どのような結果が出ただろうか、報酬金額の違いは、目標の達成具合を反映していたのだろうか?答えはイエスだ。だが、その答えの中身はあなたの予想に反しているかもしれない。中問の四0ルピーを提示された人たちは、四ルピー提示された人たちよりも成績が悪かった。では、四00ルピーという、高額のインセンテイブを提示されたグループはどうだ一たのだろうか?このグループの成績は最悪だった。ほとんどすべてのゲームで、少額の報酬グループにも中問の報酬クループにも、後れをとっていた。・・・・
このように一見矛盾する結論に達したのは、アメリカの研究者だけではなかった。ノーベル経済学賞を11人輩出しているロンドンスクール・オブ・エコノミクスの学者が、二〇〇九年、五一社の成果主義の給与体系を分析した。その結果、「経済的なインセンティブは、全体的な成績に悪影響を与えるおそれがある」という結論に達した。