急激に進化する科学技術、高まる社会不安と緊張、続発する企業犯罪やトラブルなど、近年の経済環境は、まさに激動、混沌の状況にあります。存続と成長を志す企業組織にとって、このような時代をどうとらえ、今後に向けてどう舵を切っていくべきなのでしょう?
一つの考え方として、実に明確に来るべき時代を描いている本『メガトレンド2010』をご紹介しましょう。
著者パトリシア・アバディーン氏は、1982年に『2000 黄金世紀への予告』を出版しており、その中で、いち早く「情報化社会」の誕生について述べています。
本の中では、1960年~70年のどこかで微妙な大変化が起こり、富の源が、土地や資産から、情報に移っていったと発表したのでした。この考え方は、当時はまだ異論があり受け入れられなかった考えですが、1990年代よりハイテクの時代の流れとあいまって、現在では、110兆円の産業となって花開いており、その予測の正しさが証明されました。
アバディーン氏は、『メガトレンド2010』において、今現在では、その「情報の時代」も既に終わりを告げ、密かにただならぬ変革が進行し、新しい時代が始まろうとしていると主張しています。
その変革とは、価値の源泉が「情報」から「意識」へと変わる変化であり、「人間の意識」が、資本、エネルギー、テクノロジーと同じ、又はそれ以上にビジネスにとって貴重なものとなってきていると考えているのです。
本書によると、資本主義は、人間の貪欲さや野心、競争心を原動力として大成功を収めてきたわけであるけれども、1990年代より、世界的な同時株安の傾向、企業の会計疑惑、数多くの企業犯罪、環境破壊、石油と医療費の高騰、格差の拡大などの経済動向や、テロ、戦争、国家間の緊張、など、きわめて不安定で不確実な社会動向を受けて、そのようなむき出しのエゴイズムが、社会の中で見直されるようになり、次第に受け入れられなくなってきていると同時に、環境に配慮し、企業倫理を尊ぶ会社が注目され、売上を伸ばし、高い収益性を確保し、株価も上昇するといった傾向が出てきていると報告されています。
かつて経済誌において「社会を気遣う投資家は、心根の優しい間抜けで、平均にも満たない収益しか上げられない」と書かれていたように、従来までは、企業の収益性や競争優位性、成長力が尊ばれており、社会的な配慮のない時に強欲で強引に振舞う企業こそが収益性を高め最終的には生き残ると信じられていたわけですが、このような考えは、実は的外れな勘違いであり、現実には、社会を気遣う高い意識を持った企業こそが、現在では高収益企業となっており、逆に、労働搾取、環境への無理解など、悪いイメージや反感を持たれるような経営スタイルの企業は、収益性が悪化し、成長が鈍化していると報告されているのです。
今後もこの「企業の社会的責任」と「ビジネスにおける精神性」が重視される傾向はより一層強くなり、これからの10~20年で、むき出しのエゴによる「欲望の資本主義」から、啓発された利己心による「意識の高い資本主義」にシステムは変化を遂げることになるだろうと予測しています。
<参考文献>
「メガトレンド2010」ゴマブックス 著者パトリシア・アバディーン