人事諸制度には、さまざまな施策があるが、分離感の視点で見直してみると、本来の意図とは違った効果や副作用が見えてくる。たとえば、能力主義、成果賃金制度について。両施策は、本来、従業員の働きに見合った正当な報酬を提供することによって、従業員のモチベーションを高めようとする試みである。しかし、分離感の視点からみると、成果賃金制度は、従業員の一体感を壊し、分離感を高め、結果的に生産性を低下させる強烈な副作用がある。他者よりも仕事をしていることを証明することを通して自分の評価が決まるので、他者は、協力者というよりはライバルとなる。協力と競争は2者択一であり、一般的に言われているように両方を上手になんて器用なまねはできない。いったん競争が始まれば、関係性は、親愛から警戒へ、分かち合いから取引へ、協力から戦いへ、信頼から裏切りへと大きく変容していく。結果的に、組織の中で、より多くの隠し事、うそ、ごまかし、陰謀、策略がまかり通り、より小賢しく悪辣なやり方が勝利する質の悪い狂気の風土となる。従業員は、不信、怒り、孤独、疎外感、など多くのストレスを抱えるようになり、結果的に生産性に悪影響を及ぼすだけではなく、社会から糾弾されるようなトラブルを起こすなど、組織的な機能不全に陥るのだ。
一方、幸運にも一体感をはぐくむことができた会社は、奇跡的ともいえる成長を遂げる実績を次々と上げている。(続く)
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