新しい時代の問題解決方法

 2009年 11月21日NHKの追跡!A to Zにおいて、「 なぜ増える?”ゴミ屋敷”トラブル」と題して、ごみ屋敷の問題を取り上げていましたが、その中のごみ問題に対する問題解決の方法としてユニークな事例が報道されていましたので、こちらで紹介します。

 事例は、豊中市のソーシャルワーカー勝部麗子の試みであり、勝部さんは、今まで50件以上のごみ屋敷問題を解決してきたとのことです。

 勝部さんによると、ごみ屋敷問題は、単に問題を起こしている人を説得してごみをかたずけるだけでは本質的な問題解決にはならないと考え、ごみ問題を起こしている人の元気と社会的な絆の回復を伴う必要があると活動を展開されています。

 番組の最中に紹介された問題解決の方針は、以下の2つがあります。

1.人任せの苦情は受け付けない

2.節度あるおせっかい

 

 私が特に感心したのは、1の人任せの苦情は受け付けないという方針です。この方針の背景には、「問題は、問題を起こしている本人だけにあるのではなく、地域全体の問題でもある。」という考え方があるとのことで、「問題を解決するためには、本人に変わってもらうだけではなく、地域全体が変わる必要がある。」という方向性を持っているとのことです。

 私たちは、ややもすると、問題が起これば、その問題を自分とは切り離し、分析し、取り除いたり交換したりして解決を図ろうとしますが、勝部さんの方針は、そうではなく、問題が起これば、自分もその問題の一部であり、自分も含めて解決に向けて変わっていく必要があると考えるのです。

 人と人との関係性が薄まってしまった現代社会では、他人に対して基本的に温かい関心を持つことは少なくなりましたね。ましてや、「隣がごみ屋敷」のような境遇に置かれたら、その迷惑は計りしれませんので、どうしても問題を起こしている人を「困りもの」「敵」「加害者」「悪」として裁き、非難攻撃する立場になってしまいます。その心境はよくわかりますし、私もそうするだろうと思いますが、ごみ屋敷問題を起こす人たちの心理状態に共通してあるものは「寂しさ」であり、近所の敵意や攻撃は、こうした寂しさを助長してますます問題を深みにはめてしまうという悪循環につながってしまいます。

 勝部さんは、問題を起こしている人を非難したり叱ったりするのではなく、味方になって応援したいという意向を言い続け、信頼関係をはぐくむというアプローチをとります。 そして、ごみ捨てに合意してもらったとしても、一気に解決するのではなく、一部屋一部屋期間をおいてゆっくりと解決していくそうです。そのプロセスの中で、絆をはぐくみ、問題を起こしている人の社会復帰を促し、元気の回復を応援していくのです。

 本当に意識の高い愛のある問題解決方法だと私は思います。なかなか出来ることではありません。その活動に本当に頭が下がります。

 こうした活動を通して解決できたごみ屋敷は、それ以降は、ごみ屋敷化することはないとのことです。厄介な問題、時には、自分に火の粉が降りかかる困った隣人を、敵視して排除しようとするのではなく、自分も含めた全体として問題をとらえ、ともに成長を計る。厄介者を悪として裁き、正義の立場から戦うのではなく、ともに問題解決を計る仲間としてとらえ、高い意識と愛を持って解決に当たる。まさに21世紀的な問題解決の方法なのだろうと思います。私自身とても勉強をさせていただいたなぁと思いました。できるかどうかは別として、そのような方向性がきっとより建設的で効果的な方法なのだろうという理解のもとで、一つの大切な目標としたいと思います。

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