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人と組織を進化させるチェインジエージェントとなる①

産労総合研究所「企業と人材」誌に2007年12月号に執筆した記事「人と組織を進化させるチェインジエージェントになる」の原稿を数回にわたってご紹介します。文字数を削除する前のオリジナル文章です。

<人と組織を進化させるチェインジエージェントになる①>
筆者は、ヒューマンスキルトレーニングに特化した教育コンサルタント会社を経営している。筆者の展開するプログラムのテーマは、「元気と勇気と信頼の回復」である。人や組織を活性化し、パフォーマンスを高めるための方法は、技能トレーニング、工夫された問題解決の方法、人事考課等の制度的アプローチなど、さまざまな方法やツールがあるけれども、根底にある”自己信頼”や”メンバーとの信頼関係”が欠如した状態では、どんなにすばらしいテクノロジーも本来の機能を発揮しないだろうし、逆に、信頼関係は、確かに難しいが、もし本当に育成することができるのであれば、すべてが変わっていく可能性があると考えている。
 筆者は、「人は確かに完璧ではないかもしれないが、決して無力ではない。その可能性と潜在性は、想像をはるかに超えて大きい」という哲学を持っており、その可能性を開く鍵となるものが教育であるという信念の元で、研修を展開している。
 筆者が置いているそのような基盤、考え方に基づいて、同士である教育スタッフにメッセージを送りたい。

1.メンタルヘルスの立場が必要不可欠な職場の現状
 リストラ、成果主義、など、近年の社会情勢や労働環境の急激な変化を受けて、働く人たちのストレスと心の問題が深刻化している。
 厚生労働省の労働者健康状況調査によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがある」労働者の割合は、近年徐々に増加し、2002年では61.5%に達した。
 社会経済生産性本部が2006年に実施した「メンタルヘルスの取り組み」に関するアンケート調査によると、6割以上の企業でこの3年間に「心の病」が増加傾向にあると回答しており、心の病のため1ヶ月以上休業している従業員のいる企業の割合は、74.8%と、過去2回の調査結果である2002年の58.5%、2004年の66.8%を超えて大幅に増加し、とうとう7割台に突入している。
 自殺者数も9年連続で3万人を超えるという異常事態となっており、日本は、いまやメンタル不全社会へと突入しているといえよう。

 こうした心の健康問題の多発を背景に、日本の勤労者のモチベーションも極度に低下している。米国調査会社ギャラップによる「職場への帰属意識や仕事への熱意」に関する意識調査(2005年3月)によると、日本人の仕事に対する忠誠心や熱意は、「非常にある」9%、「あまりない」67%、「まったくない」24%となった。14カ国の同様な調査との比較によると、「非常にある」の9%は、シンガポールに並んで最低であり、最も高い米国(29%)の3分の1以下だったことが分かった。
 
 さらに、このような背景のもとで、日本のパフォーマンスレベルも低下しており、財団法人 社会経済生産性本部の「労働生産性の国際比較(2006年版)」によると、日本の労働生産性(2004年)は59,651ドル(798万円)で、OECD加盟の30カ国の中で第19位であり、主要先進7カ国間では最下位となった。

 以上のデータから判断すると、日本の職場の現状は、贔屓目にもうまく行っているとは言い難い状況であり、輝きと創造性に満ちているというよりはむしろ痛みと苦悩に満ちた状況にあるといえるだろう。実際のところ、われわれが直面し変えていこうとしている現状は、決して甘くはないのだ。