コミュニケーションは、パフォーマンスに大きな影響を与えると言われています。
では、なぜ、そのような生産性の向上や創造性をもたらすのでしょう。
社会心理学上で、この問題を上手に説明する理論で、「四つの懸念」(ジャック・ギブ)という理論があります。
この理論では、人の「出会い」は、まさに未来を拓く「可能性」を意味することであり、すばらしい出来事でありますが、しかし、同時に、「出会い」は、「懸念(不安や疑いなどの総称)」をももたらし、それは、どんな人数や文化、集団でも避けることはできないされています。
ギブは、チームの人間関係の実践研究をとおして、人間にはどのような懸念が発生するのかを調査しました。
具体的データを集め、仕分けした結果、以下のような4種類の懸念に分類できたので、この理論は、「4つの懸念」と呼ばれています。
<四つの懸念(J.ギブ)>
1.受容懸念
・そもそも私は受け入れられるのか?
・相手は私を非難攻撃するだろうか?
2.データ懸念
・言葉を選ばなくては・・・
・ここではどんな話題が通用するのか?
・私はどのように振舞えばいいのだろうか。
3.目標懸念
・この対話の目的、目標は何か?
・自分の目的や目標は競合しないか?
4.統制懸念
・相手は私を強制するだろうか?
・私は、支配されないだろうか?
・誰が仕切るのだろう?
・またどのように仕切るのだろう?
J.ギブによると、数々のグループの調査分析により、グループの成長は、懸念の解消のプロセスと等しいとされています。
つまり、当初グループに強くあった懸念が解消されていくにつれて、信頼関係やメンバーの自由度が増し、チームとしての生産性や創造性が開発されていくと考えたのです。
この理論では、チームのもともと持っている生産性や創造性はとても大きいのですが、その懸念が足を引っ張り、チームのもともとの力を麻痺させる阻害要因となっていると考えられます。
チームの生産性や創造性の源は、チームの外にあるのではなく、チームの中、既に今ここにまどろんでおり、ただ、その懸念がチームの足を引っ張り、チーム力の発揮を阻害していると考えられるのです。
ですから、私たちが、チームの潜在性を開発し、チームの創造性や生産性を高めるために必要なことは、チームの外にある新たな特別なものを取り込むことや不自然にりきんで特殊なことをするというよりはむしろ、懸念(誤解や不信)を解消すること、お互いに肩の力を抜くことこそ重要な要素であると言えましょう。
その際、懸念を解消するための方法は、いろいろあるけれども、本質的で最も効果的なな方法がコミュニケーションであるといえるのです。
なぜならば、懸念は、相互理解をすること以外には、解消されることはないからです。
信頼関係は、取り繕ったり、テクニックを使ったりして作り上げるものではなく、コミュニケーションを通して懸念が解消されれば、自然に起こることであり、信頼関係が起これば、チームの閉ざされていた潜在能力の扉が開かれ、本来のチーム力が開花し、高いパフォーマンスを遂げることにつながっていくと言えましょう。
このように、コミュニケーションは、懸念の解消を促進し、信頼関係を育成することを通して、私たちが本来持っている素晴らしい可能性を引き出し、チームの生産性や創造性を高めることにつながると言えるのです。