月別アーカイブ: 2009年8月

体験学習とは? 体験学習の学習プロセス

 体験学習は、先生の講義や理論モデルから学ぶと言うよりは、体験から学ぶ方法であり、通常の場合、まず、チーム活動や個人ワークのような”実習(structured experiences)”と呼ばれる体験エクササイズを実施します。
 各種の実習は、さまざまなレパートリーがあり、楽しく熱中して参加できるように工夫されています。たとえばチーム活動のような実習を実施すると、チームコミュニケーションは一気に活性化し、文句なく楽しいことが多いので、メンバーの参加度合いは増し、凝集性は高まることが多いといえましょう。
 しかし、ややもすると、このような刺激的な実習の側面だけをとらえて体験学習と呼ばれることが多いのですが、単に体験だけでは、本当の意味での学習にはつながらないと私どもは考えております。
 体験学習は、単に体験で終わるのではなく、体験したあとに、体験プロセスをじっくりと丁寧にふり返り、観察していくことを通して、普段は隠れて見えることがない人間関係の中で起こっているさまざまなことがらに光を当てて、思い込みではなく、関係性の真相やありのままのリアリティを理解していくことを試みる学習方法なのです。ですから、どちらかと言うと、刺激的で興奮する学習方法ではなく、粛々と淡々と内面や関係性をみつめ理解を深めていく方法であり、その学習がうまく行くときは、たいていの場合、静かで穏やかな雰囲気になることが多いのです。
 その具体的なプロセスは、以下のとおりです。

①体験
  体験学習の場合には、まずは、体験することから学習が始まります。具体的には、グループワークやエクササイズなどの実習を体験します。

②観察
日常の生活では、体験の連続で、体験をふりかえることは、特別な場合を除いて少ないと言えますが、体験学習の場合には、丁寧に体験を観察していきます。また、忙しい日常生活の中では、あらかじめどう行動すべきか、どう考えるべきか、などといった自分なりの仮説や正解、態度をもって体験とかかわりますが、体験学習の場合には、そのような自分の中に既に構築されているメンタルモデルをひとまず保留して、体験したことを習慣となった反応パターンで解釈し、良い悪いを判断し、どうすべき(だった)かの結論を即座に下してしまうのではなく、起こった出来事や体験したことを、ありのままに丁寧に観察していくことになります。
われわれは、さまざまな知識を身につけており、いろんなことが分っているつもりでいますが、おおよそ人間関係について、より良いあり方、生き方、そうあるための方法、などについてよくよく考えてみると、本当のことは何も分っていないと言えるのではないでしょうか。体験学習では、わかったつもりになるのではなく、謙虚に現実を観察し、ありのままの姿をよく探求することを徹底的に行っていくことを通して、隠されている真相や真実を学んでいこうと試みる学習方法でもあるのです。
具体的には実習の後で、実習中に体験した様々な事柄(自分の感情、感覚、思考、など)を言語化し、紙に書いていきます。その際、体験をふりかえりやすくするために設計された一定の書式(プロセス観察シート)を使うこともあります。

③分析
   観察した事柄をさらに探求し、起こった出来事の原因を分析していくステップです。
体験したことは、②の観察を通して光が当てられて、それだけでも大変価値のあるふりかえりをすることができるのですが、ただ、人間の認識にはバイアス(偏向)がかかっており、事実をありのままに理解しているとは限りません。例えば、前述のとおり、自分の実感では「太陽が動いている」のですが、現実は、「地球が動いている」のです。特に、人間関係のような複雑な現象を理解する場合には、誤解や思い込みが多く、真実を知るためには個人だけの認識ではなく、多くの視点から観察したデータを持ち寄ることが大事となります。
ですから、本当のことを理解していくために、メンバーそれぞれが体験をふりかえった観察データを公表し分かち合います。この分かち合いを通して、ありのままの現実や本当のことを理解していく事が出来るようなるのです。

④仮説化
①~③までのプロセスを経て明らかになった現実の出来事について、「なぜその様な事になったのか?」について自分なりに仮説化します。ここで統合された仮説は、間違いがない真実とは限りませんが、今の時点では体験から導き出された宝であり、価値ある叡智と言えましょう。
なお、この仮説化の一助として、一般的に認知されている理論などを解説する”小講義”がなされる場合もあります。
導き出された仮説は、次の実習で検証したり、実践してみて、更に深く探求し理解していくことが出来ます。また、より良いと思える方法を次の実習で試みて行くことができるので、実習を繰り返すうちに、個人として、チームとして成長を実感して行くことができるでしょう。
このように、実践や試みを通して学習し、成長を図ることができるので、体験学習方式による方法は、ラボラトリーメソッド(実験室メソッド)とも呼ばれています。

管理者研修を担当しました(20090807)

 大手家電子会社の管理者研修を担当しました。会場は、神奈川県の戸塚、人数は24名、平均年齢がおおよそ40代後半のメンバーのみなさんでした。
 今回の研修の狙いの体系は以下のとおりです。

(テーマ) 「組織活性化の要としての力強いマネージャーとなるために」

(ねらい)
   ①力強く輝くリーダーとなるためのリーダーシップ哲学=自信と誇りの重要性を学ぶ。
   ②リーダーの役割を学び、リーダーとしての自分を振り返る。
   ③部下の力を引き出しチームを活性化する方法を学ぶ。
   ④組織の問題解決能力を高めるために必要な要素を学ぶ。

 今回のメンバーの役職は、課長であり、すでに、現場の陣頭指揮をとっている、組織のかなめとして力強いリーダーシップをすでに発揮されているマネージャーの皆さんです。しかし、成長には限界はなく、より大きく深く広く成長する可能性に向けてのヒントを得てもらうことが今回の研修のテーマであり、企画の意図でした。

 私とも年齢が近い方が多く、苦労も共通のものを持っているようで、私としては、共感しやすい同士のような感覚で研修に携わることができました。メンバーは、全員男性で、実際にかかわってみると、穏やかで静かな中にも情熱をハートにもっているジェントルマンたちでした。決して器用ではないけれども、人を大切にしたいという志を持ち、挑戦されている姿勢がよくわかります。今回の研修では、
・コミュニケーションを大切にして人を大切にしようとする姿勢は、未来を拓く強力な基盤となること。 
・会社のメンバーは、けっこういい奴であり、力と魅力にあふれる存在であること。
・リーダーとしてもっともっと輝き成長していく可能性があること。
・リーダーとして成長していくための指針と方法
・困難な時代であっても、このメンバーであれば、大丈夫だということ。
そんなことを実感できた1日でした。

 私自身も、素晴らしいメンバーとご一緒できて、さわやかであり、幸せな気持ちになりましたね。社内コミュニケーションの一環として、教育センター長が、研修後に懇親会の場を用意してくださったのですが、その懇親会がまた楽しく、こんな素敵な出会いに感謝した次第です。
 厳しい時代ですが、信念と誠実さをもって立ち向かえば、恐れるものなどきっとないのです。ともに健康に頑張りましょう!

歯科医院でリーダーシップ研修を担当しました

 九州のS歯科医院でリーダーシップ研修を担当しました。当医院では、ずいぶん前から定期的に研修を実施しており、今回は、2年ぶりの担当となりました。こうして何度も講座を開こうとされていることは、まさに、経営陣やスタッフの勉強意欲が強く、人の成長を大切にしたいというヴィジョンの現れでもあり、大変光栄でもあり、またその誠実さに頭の下がる思いです。
 今回の研修テーマやねらいの体系は以下のとおりです。

<テーマ>「経営センスを学び、より主体的に成長する魅力的なリーダー、そして組織となる」

<ねらい>
 ?主体的に輝くリーダーに必要な自尊心について学ぶ
 ?マンネリから抜け出し、クリエイティブな風土を作るための考え方を学ぶ
 ?ストレス耐性を高める手法を学ぶ
 ?経営センスを学び、より主体的に組織に関わる方法を探究する

<カリキュラム>
午前中 自尊心について 自律訓練法 変化の理論

午後  アトランティックプロジェクト

 S歯科医院は、すでに本当に良いチームであり、信頼感をベースにした風土、主体的で意欲的なスタッフ、人を大切に一生懸命で誠実な経営陣がそろっている日本でも珍しいくらいのクオリティの高い組織であると私は感じております。
 今回は、もう教えることなどないけれども、より大きく成長していけるためのきっかけづくりができればと願い、講座を担当いたしました。
 実際に実施してみて、いつも当医院では感じることですが、本音であり自然であり温かいメンバーと関わっていると、とっても幸せな気持ちになってきます。こんな雰囲気を医院でも出しているのでしょう、地域で一番の人気医院である理由がよくわかります。今回のプログラムでは、そんな現状をよくわかると同時に、より成長していくためのポイントを明確にすることができたのではないかと実感しております。
 こうした素敵な医院で研修を担当できますこと、とても光栄に思っていると同時に、深く感謝しております。本当にありがとうございました。今後も、この素敵な輝きを大切にしていただいて、もっともっと自分も患者さんも幸せにするパワースポットになってほしいと願った次第です。