元気と勇気と信頼の回復のために

16人の勇者 14.⑫反逆者

第14章 ⑫反逆者

反逆者とは、自分がこれまで服従してきた権威を裏切り、かろうじて残っていた自分自身の小さな良心の炎を人生の玉座に据えた人です。

その瞬間、反逆者は「裏切り者」というレッテルを貼られます。
しかし、彼が裏切ったのは恐怖であって、真実ではありません。
むしろ、それまでは偽神に屈服し、自分自身の良心を裏切り続けていたのです。
反逆者とは、その厳しい真実に気づき、初めて自分の良心に忠誠を誓った人なのです。

⑴ 光の側面
反逆者は、自分を取り戻す人です。
恐怖の中で自分を見失い、長い年月、自分自身ではない何かに従って生きてきました。
権威、テクノロジー、世間、組織、常識、成功、名誉、あるいは誰かの期待。
それらは、自分を守り、安心を与えてくれる神のように思えました。

しかし、どれほど従っても心は満たされません。
従えば従うほど、自分らしさは失われ、心の奥底では、小さな違和感が渦巻いてきました。
財を得、権威は身につき、部下はたくさんできましたが、友達は一人もできませんでした。
反逆者は、その小さな違和感をもみ消すことはできませんでした。

最初は、かすかな疑問にすぎません。
「本当にこれでいいのだろうか。」
「私は、本当にこれを信じているのだろうか。」
「これは、本当に正しいことなのだろうか。」
その小さな内面のささやきに耳を澄ませるところから、反逆者の旅は始まります。

反逆者は、これまで絶対だと信じていた権威や価値観から少しずつ距離を置き始めます。
一歩離れて眺めてみることで、それまで神だと思っていたものが、実は偽神だったことに気づき始めるのです。

偽神は巧妙です。
善意や正義、伝統や常識という美しい衣をまとい、人々に服従を求めます。
卓越した科学技術を駆使して完璧な管理の檻のシステムを構築します。
恐怖を利用して支配し、本来であれば望まない罪を背負わせます。
人々を分断し、互いに争わせることで力を奪い、成長を阻害します。
さらに、ルールや制度までも巧妙に利用して、構造的な搾取を生み出します。

反逆者は、笑顔の仮面の下に隠された邪悪な欺瞞や科学技術の美名に隠された小賢しさと悪意に気づき、確信し、抜き差しならないところまで追い込まれます。
そして、ついに、裏切者の名を着せられることを覚悟のうえで、自分の良心に従う決意をするのです。

反逆者の心は複雑です。偽神に対する不信、怒り、そして、偽神に仕えてしまった自分への嫌悪、恥、世界観の崩壊。
強烈な恐怖と混乱と痛みにあがらってまでも、一歩踏み出す決断をしたのは、真実に生きたいという願いからです。

もちろん、その決断には代償があります。
裏切り者と呼ばれ、理解されず、孤立し、時に容赦ない攻撃を受けるのです。

それでも反逆者の決意は揺らぎません。
反逆者は、恐怖に従うことをやめます。
人生の玉座に消えかかっていた自分の良心を据えた時、
そのとき人は、初めて自分の人生を生き始めます。

反逆者とは、他人に勝つ人ではありません。
自分を失わせていた恐怖に勝ち、自分自身を取り戻した人なのです。

⑵ 影の側面
反逆者は、偽神の欺瞞に気づいた人です。
だからこそ、その欺瞞に対する怒りも人一倍強くなります。

裏切られた悲しみ。
利用されてきた悔しさ。
欺かれてきた怒り。

反逆者の偽神に対する怒りは正義の怒りであり、偽神の邪悪さを暴露し、くさびを打ち込む原動力にもなります。
それらは決して間違った感情ではありません。

しかし、糾弾する偽神は、自分とは無関係の存在ではありません。
かつて偽神は、自分自身でもありました。そして今もなお、その種は自分の中に息づいています。
自分だけが潔白で、偽神だけが邪悪なのだという認識は、幼い二元論であり、真実ではありません。
偽神にも、そこへ至る痛みや恐れがありました。
その一切を顧みることなく、一方的に悪と断じて裁くならば、それは正義ではありません。
偽神を裁く心そのものが、新たな偽神を自分の中に生み出してしまうこともあるのです。
その時、裁き、非難攻撃する者の玉座に据えられているものは、決して良心ではなく、正義の名を借りた偽神なのです。

実は、偽神とは、権力者のことではありません。
本当の偽神とは、人生の玉座に座り、自分こそが主人であると思い込んでいる自分であり、狭い了見のままで思い通りに世界を支配しようとするエゴです。
神になろうとする偽神は外にもいます。
しかし最も巧妙な偽神は、自分自身の中に住んでいます。

反逆者は、偽神を倒す人ではありません。
偽神の巧妙さを見抜き、自分の中にある偽神の暴走を許さない人、偽神からの自由を獲得する人なのです。

⑶ 課題
反逆者の課題は、自由であり続けることです。

反逆者は偽神を人生の玉座から降ろしましたが、偽神は、だからと言って簡単にあきらめません。
偽神は、とてつもなくしぶといのです。
あらゆる姿に身を変え、あらゆる手を尽くして、人生の玉座を奪い返そうとします。

・昨日まで戦っていた権力。
・自分が掲げる正義。
・仲間からの賞賛。
・人々の期待。
・成功した自分自身。
そのどれもが、いつしか良心に代わって玉座を奪い取るかもしれません。

だから反逆者は、一度反逆すれば終わりではありません。
何度でも立ち止まり、自分の心を見つめる必要があるのです。

今、人生の玉座に座っているのは、本当に良心に基づくのだろうか。
そう問い続けるのです。

良心は、大声では語りません。
恐怖や怒りのように人を支配することもありません。
静かに、しかし確かに、「こちらだ」と語り続けます。

その小さな声を聞き続けるためには、謙虚さが必要です。
反省する勇気が必要です。
そして、自分もまた間違える存在であることを忘れない度量が必要です。

反逆者は、誰かを倒すことで完成する人ではありません。
偽神が自分の中によみがえろうとするたびに、それに気づき、何度でも良心へ帰り続ける人なのです。

 

【16人の勇者シリーズ】
第1章 16人の勇者へようこそ ―二つの軸と一枚の地図
第2章 ①自然児・隠遁者 A.自然児
第3章 ①自然児・隠遁者 B.隠遁者
第4章 ②放浪者
第5章 ③一匹狼
第6章 ④職人
第7章 ⑤暴君
第8章 ⑥戦士
第9章 ⑦求道者
第10章 ⑧達人
第11章 ⑨武将
第12章 ➉覇王
第13章 ⑪魔法使い
第14章 ⑫反逆者
第15章 ⑬勇者
第16章 ⑭仙人
第17章 ⑮国王
第18章 ⑯賢者
第19章 勇者としての成長
第20章 勇者として生きる