企業と人材記事 シリーズ「成功する体験学習の進め方」第4回目「球団ジャガーズ」
2006年9月20日号より6回にわたり「成功する体験学習の進め方」をテーマに産労総合研究所出版の「企業と人材」誌に連載しました。
※以下に掲載している記事は、一部抜粋となります。
球団ジャガーズ
産労総合研究所「企業と人材」2006年12月20日号掲載分
<験学習の進め方>
体験学習を実施する際には、具体的には、以下のステップが必要となります。
<第1ステップ 準備>
体験学習の場合、研修が成功するかどうかは、その準備にかかっていると言っても過言ではありません。資料、プログラム内容、会場、環境設定、音楽、リラックスし、楽しめる雰囲気の演出、参加メンバーの特徴やニーズなど、事前に検討できる事は、充分に考え、準備しておく事が重要です。
<第2ステップ 実習の目的と概要の解説>
実習を行う目的と概要をできる限り解りやすく解説するステップです。
この段階では、目的に関しては、トレーナーとメンバーの合意が為される事が必要であり、概要説明に関しては、大まかな流れを参加メンバーが理解し、自然に実習に入っていけるように解説することがポイントです。
<第3ステップ 実習の実施>
実習を実施するステップです。
事前準備に従って運営するのが基本ですが、参加メンバーの学習の状況によっては、時間配分など柔軟に対応する必要があります。
<第4ステップ プロセス分析>
実習を通して体験したことを観察し、分析していくステップです。
体験学習方式では、まさに学びや気づきを促し、整理する大変重要なステップであるといえましょう。
具体的には、所定のプロセス分析シートに個人で記入し、用紙に記入したことをグループで発表しあいます。
<第5ステップ 小講義>
体験を通した気づきや学びを一般化する援助をするために行います。
一般化は、実習で体験した事を、自分の生活や仕事に応用するために大変重要です。
また、事前に準備しておいた内容に基づいて解説することも大事ですが、実際に起こった実習での出来事を交えて話すと、より効果的です。
実習「球団ジャガーズ」
体験学習の実際を理解していただくために、今回は、私の会社より出版している体験学習実習集"パワーコミュニケーション"に収録されている一つの実習である「球団ジャガーズ」を公開いたします。
体験学習の進め方の一つのサンプルとして参考にしていただければ幸いです。
この実習は、グループメンバーが断片的な情報を持ち寄り、情報を整理統合して課題を解決していく実習です。
課題を解決するためには、コミュニケーション、リーダーシップ、問題解決法、などのさまざまな要素がうまく作用してく必要があり、それらが機能しないと、なかなか解決することができません。体験的には、正解が出る可能性は50%程度と言えましょう。
実習中は、メンバー相互のコミュニケーションやチームワークが活発になり、グループとしてのエネルギーや凝集性が高くなることが多く見受けられます。
メンバー個人としても、チーム活動に対する参加度合いが高まることが多く、問題解決への意欲、他のメンバーへの関心、集中の度合いが高まるプロセスを促進することが良く起こります。
問題が解決できたかできなかったかに関わらず、体験を通して気づくこと、学べることは多く、コミュニケーションやチームワークの効果的なあり方についてよい学びの場を提供できる実習です。
今回は、実習運営の方法やノウハウのすべてを公開いたします。皆さんの研修のお役に立てることを願っておりますので、どうぞご活用ください。
なお、ご活用の際には、著作権の帰属は明記していただくようお願い申し上げます。
実習「球団ジャガーズ」の概要
<ねらい>
@コミュニケーションを活性化するためのウォーミングアップ
A効果的なコミュニケーションに必要な要素を学ぶ
<構造>(65分)
1.導入(5分)
2.実習「球団ジャガーズ」の実施(30分)
3.プロセス分析(30分)
<グループの人数>
1グループにつき最適人数6名〜8名。前後2名程度の増減は問題ない。
複数グループで実施できる。
<会場のレイアウト>
下図のように、グループごとに机2つを向かい合わせて島をつくりその周りに着席する。
<準備物>
○課題用紙×人数
○情報カードセット×グループ数
※「球団ジャガーズ情報カード」をコピーし、点線で切り、名刺大のカードに貼り付けて作成する。
○プロセス観察シート×人数
○模造紙 1枚×グループ数
○マジックセット(数色あるのが望ましい) 1セット×グループ数
○壁に張り出すためのガムテープ、又はマグネット
○小講義資料「効果的なコミュニケーションのポイント」×人数
実習「球団ジャガーズ」運営の手順
1.導入(5分)
@ねらいと課題の解説
課題用紙を配布して、実習名、ねらい、課題を解説する。
※実習名とねらいは、別に板書するか、あらかじめ模造紙に書いておいて提示してもよい。
(注)企業と人材誌には、ここに課題用紙が記載されていますが、ここでは割愛しております。
A質疑応答
課題とルールの解説の後で質疑応答を受ける。
Bマジックと模造紙のセッティング
グループにマジックセットと模造紙を配布する。
2.実習「球団ジャガーズ」の実施(30分)
@開始の宣言
実習の開始を宣言して、開始する。
A終了の宣言
開始後30分で終了し、作品(模造紙)を壁に張り出すよう指示する。
※経験的に地図を完成できるチームは、50%程度である。ようすを見て、延長すべきだと判断した場合は、10分程度までは、延長可能である。
※作成した模造紙は、例えどのような内容であれ、みんなで作った作品であるので、敬意を持って大切に扱うこと。
※作品を張り出した後で、作品の内容を発表する時間を持ってもよい。
B正解発表
以下のマトリックスを提示し、正解を発表する。
(注)企業と人材誌には、ここに正解が記載されていますが、ここでは割愛しております。
※できたできないに関わらず、チームの健闘を称えて、拍手を促してもよい。
※必要に応じて、実習中は見られなかったメンバーの情報カードをオープンにして、正解と見比べるように促してもよい。
※この時点では、できなかったチームが、大変悔しがっていることが多いので、ゆっくりと時間をとって、クールダウンしたい。(時には休憩を入れてもよい)
3.プロセス分析(30分)
@個人記入(10分)
プロセス分析シートに、感じたことや気づいたことを自由に記入するように指示する。
その際、感じ方に正解や不正解などないことを説明し、感じたことを自由にありのままに記入することが大切であることを説明する。また、記入したことは、全て発表しなくてもよいことも加えて説明するとよい。
A発表(20分)
記入したことを発表する。その際、一人の人が全項目を発表していくのではなく、1項目について全員が発表し、一巡したらその次の項目をといった方法がプロセスを理解しやすい。
※ここで発表される内容は、個人の内面で感じたことであり、その人にとっては真実で大切な感じ方であることを説明し、聴く方は真剣に聴くように指示する。
※他のメンバーの発表を聴く際に、自分と感じ方が違っていても、それを正しいであるとか正しくないと判断するのではなく、そのような視点や感じ方があるのだと受け入れてみるように指示する。
※発表者は、例えプロセス分析シートに記入したことであったとしても、この時点で発表しづらいこと、オープンにしたくないことについては、発表しなくても良いことを説明する。
※グループ内発表が終了したら、グループの代表者に、プロセス分析のまとめを発表する時間を持っても良い。
4.小講義
実施後、必要に応じて、小講義を行うと良い。
実習のねらいの設定や実際に起こったプロセスによって、小講義の内容は変わってくるが、ここでは、一つのサンプルとして「効果的なコミュニケーションのポイント」が提示されている。
(注)企業と人材誌には、ここに研修教材となる情報カード「球団ジャガーズ」とプロセス観察シート(ふりかえり用紙)、小講義資料「効果的なコミュニケーションのポイント」が記載されていますが、ここでは割愛しております。