元気と勇気と信頼の回復のために

16人の勇者 12. ➉覇王

第12章 ➉覇王

覇王は、力とテクノロジーによって世界を統一しようとする覇者です。
科学・制度・技術を用いて世界規模の課題を解決しようと志します。

この混乱と無秩序に満ちた世界を、
暴力と搾取が横行し、人々が恐怖と苦悩の中で生きるこの社会を、
自らの力によって正さなければならないと確信しています。

覇王は、この世に真の平和をもたらせるのは、自分しかいないと信じています。

人々は弱く、迷い、欲望に流されます。
民主主義も、善意も、理想論も、結局は争いを止められません。
だからこそ、自分が持つ卓越した力とテクノロジーと支配構造で世界を統一し、秩序を打ち立てるしかない。
それが覇王の信念なのです。

覇王は非常に優秀です。
・数手先を読み、資源を大胆に集中させ、一気に勝負を決めます。
・群を抜いた科学技術やテクノロジーで多くの問題を予見し、解決します。
・わずかな違和感も見逃さず、裏切りの芽は徹底的に摘み取ります。
・誰も下せない決断を恐れることなく下し、圧倒的な実行力で現実を変えます。
・敗北から学び、決して諦めず、何度でも立ち上がり、逆襲します。
・人の能力を見抜き、適材適所に配置し、巨大な組織を自在に動かします。
・国家や企業、文明全体を俯瞰し、長期的な戦略を描きます。

だから、人は従います。
だから、巨大な組織が生まれます。
だから、国は豊かになり、秩序は保たれ、栄華を極めるのです。

しかし、そんな完璧に見える覇王にも、誰にも見せることのない弱さがあります。
それは、自分の弱さを認められないこと、ありのままの自分で人と向き合えないことです。
覇王は世界を征服しようとします。
しかし本当に征服したいのは、誰にも知られたくない自分自身の弱さなのかもしれません。
その隠された傷を起点として、覇王という壮大なドラマが展開されていくことになります。

⑴光の側面
覇王は、圧倒的な統率力を持っています。

巨大な組織をまとめ、国家を動かし、歴史を変え、文明を築く力を持っています。
その決断は速く、意志は金剛のように強く、迷いはなく、困難から逃げません。
誰も決められないことを決め、誰も背負えない責任を背負います。

覇王は混乱を嫌います。
秩序を築き、資源を集め、技術を発展させ、巨大な国家や企業を築き上げます。
未来を先取りした科学技術で、魔法のように現実を分析し、劇的に変えます。
その力は、他を凌駕して、圧倒的です。

覇王の権力の源泉は、圧倒的な力(武力、科学力、技術力、財力、能力、…)です。
彼が用いるのは単なる暴力ではなく、「予測可能で合理的なテクノロジー」でもあります。
それによって数手先を読み、資源を集中させ、実際に国を豊かにし、無秩序を排していく。
その威厳の前では、多くの人が畏れ、従います。
世界は統一され、秩序が生まれ、繁栄が訪れるのです。

⑵ 影の側面
覇王は、あらゆる手段を弄して人心を、そして未来をマネジメントしようと試みます。
・プロパガンダ、宣伝広告、マーケティング、ブランド戦略…。
・情報収集、情報統制、教育、法律、ルール設定、買収と企業統治、…。
持てる力やテクノロジーの全てを駆使して、世論を誘導し、自分がそう思ってほしいように人々が思ってもらえるように巧妙に操作します。
不確実性を完全に排除するために、人間の心さえもデータやアルゴリズムのようにマネジメントしようと試み、意図的にヒットやムーブメント、“はやりすたりを作っていくのです。

理想を定め、計画を練って実践し、現実を変えていく…。マネジメントは、世界の不確実性に対処するための唯一の本質的な手段であり、未来を拓こうとする者たちにとっての必要なツールですが、扱い方によっては、危険な武器ともなります。

人身のぬくもりを失い、良心を失ったマネジメントは、時に冷たく、残酷で、支配操作的です。
なりふり構わない、時に悪意を隠さない、法的な問題だけがその制約となるような、時に法的に問題が起こる危険性をもいとわない操作的な方法は、もはやマネジメントとは言えません。
それは、陰謀であり、謀略であり、人を穴に陥れる悪意のある罠です。
それは、詐欺的であり、暴力的であり、犯罪的です。
それは、人の心を貶める呪いであり、洗脳であり、黒魔術になり果ててしまうのです。

また、覇王は、自分自身の力に酔い、コントロールできない存在が許せなくなります。
天地自然の不確実性、時代の流れ、世界で起こる出来事をも自分の都合で操ろうとする。
まさに覇王のエゴは肥大し、神をも目指すようになってしまうのです。
こうなるともはや覇王は覇王ではなく、最も守るべきものであった人間性を失い始め、堕天使へと堕落してしまうことになります。

⑶ 恐れるもの
覇王が恐れるものは、無秩序、制御不能、そして停滞です。

覇王は、世界をより良くしたいと願っています。だからこそ、混乱を嫌い、秩序を築こうとします。責任を果たすために、あらゆる状況を把握し、制御しようとします。そして、停滞こそが敗北の始まりと恐れ、改革と成長を推し進めます。

しかし、この恐れが強くなりすぎると、秩序は管理へ、管理は支配へと変わります。本来、人々を守るために築いた体制が、人々を縛る檻になってしまうのです。

また、覇王の欠点は、心を開けない事、正直になれない事、愛してると決して言えない事でもあります。
覇王は、世界を支配し、人を動かし、完璧なまでの強さを得ることができた存在ですが、そういう存在に値しない自分であることを一番よく知っているのは自分です。
実は、覇王は、自分には自信がないのです。自分の心を支配することはできないし、心の中の敵を滅することもできないし、絶望を拭い去ることもできません。
正直に語り、抱きしめ合うことは、鎧をまとった覇王には不可能であり、かといって、愛されたいという渇望は決してなくなることはありません。愛し愛されたい心の飢餓を脅しと暴力で押し殺して、強さに邁進することによって忘れようとするのです。
実は、覇王は、権力や武力、財力をはぎ取ったら、ひそかに見下し、さげすんでいた下々の者たちと何も変わりがないことを知っており、それが暴露されてしまう事を最も恐れているのです。

人が手に入れることができないほどの権力と富を得た覇王ですが、その代償として、人として最も大切な成長を封印してしまってきたのです。

覇王は、心を開くことができません。
弱音を吐けません。
助けを求められません。
涙を見せられません。

脅すことはできても、「ありがとう。」が言えません。
そして、「大っ嫌いだ」とは言えても、「愛している。」の一言だけは、どうしても口にできないのです。
「私も愛している」と言ってくれる可能性は極めて低く、そして愛は、支配では得られないことを知っているからです。

だから覇王は、愛されるより、恐れられることを望みます。
尊敬されるより、服従されることを望みます。
信頼するより、支配することを望みます。
覇王は、愛よりも恐怖を人生の基軸として選んだのです。

しかし、恐怖によって得られるのは、忠誠ではありません。
沈黙であり、服従であり、諦めです。
人は命令には従っても、心までは差し出しません。

覇王は世界を征服することはできます。
しかし、一人の人間の心を命令で愛させることはできないのです。

⑷ 課題
覇王の課題は、さらに強くなることでも、権力を得ることでも、豊かになることでもありません。
それらの力は、有限であり、必ず頭打ちになるのが宿命です。

覇王の課題は、そうした偶像に頼るのではなく、真実に心を開くこと=自分自身を信じることです。
自分の中に愛し、愛される可能性があること、そして、愛は、実は恐怖とはくらべものにならないほどの偉大なる力が内在しているということに少しでも気づくことができたら、その時を境に、覇王の宇宙は劇的に変わっていくことでしょう。

自分のありのままを受け入れ、愛し、信じることができれば、自分の中の痛みや葛藤、恥や恐れ、自己嫌悪や絶望に光が入り、次第に闇が力を失い、平和を取り戻し始めます。
同時に、恐れとは異なる真の勇気、知恵、元気を取り戻し始め、その光は、徐々に覇王の帝国に反映し始めるはずです。

メンバーのハートは鼓動し始め、目の輝きが明るさを取り戻し、
分離感が癒され、心が開かれ、情熱と叡智が交流を始め、
現状の課題と問題点が、うそや隠し事、偏見を経ることなく、そのありのままが分かり、対処され始め、
今までは想像もしなかったような全く新しいアイデアや工夫が、 日常のあらゆる仕事の場面で創造され、実践されて、あっという間に現実が変わっていく。
結果的に、生産性と創造性は、想像を超えて高まり、奇跡的な成長を遂げていくことになるのです。

覇王が心を閉ざしたままでは、どれほど巨大な帝国を築いても、やがて内側から崩れていきます。愛なき組織は、早晩滅亡するからです。

覇王が、鎧を脱ぎ、鉾を納めて、一人の人間として心を開くことができた時、初めて本当の王への道が開けてくるのです。