A.マズローは、欲求階層説という理論を発表し、そのなかで、人間の欲求は、低次から高次へと階層をなしており、低次の欲求が満足されると、1階層上の欲求が発現してくると言う仮説を提示した。
もっとも基盤となる低次の欲求は、『生理的欲求』であり、生き残りたいというサバイバルの欲求である。おもに、食欲、性欲、睡眠欲などにかかわる欲求といえる。
生理的欲求が満たされたならば、次に発現してくる欲求が『安全欲求』である。単に生き残るだけではなく、生存が保証されたい、安定的に安全でありたいという欲求で、衣食住の安定とかかわる欲求である。
安全欲求が満たされたならば、次に発現してくる欲求が『社会的欲求』である。社会の一員でありたい、仲間外れにされたくないという欲求である。
社会的欲求が満たされたならば、次に発現してくる欲求が『自我の欲求』である。単に社会の一員であるだけではなく、社会の中でひとかどの人間になりたい、他の人たちよりも尊敬を集める人間でありたいという欲求である。
マズローは、以上の欲求には、共通した要素があると考えた。それは、それらの欲求が、ある前提を基盤として起こっているということである。その前提とは、「私には、何かが欠けている。欠けている何かを得なければ生存の危機にさらされる。万難を排して欠けている何かを手に入れなければならない。」という自己認識である。そのような特徴から、マズローは、以上の欲求をDeficiency(欠乏)の頭文字をとってD動機(欠乏動機)と名付けた。
D動機(欠乏動機)とは、生存の危機を起因とした、不安や恐怖に焚きつけられた渇望といえよう。
一方、マズローは、人間の欲求は、D動機だけではなく、まったD動機とは性質の異なる欲求も存在すると主張した。(続き)
<関連記事>
<関連プログラム>