ブログを始めるにあたり

これまで、自分の経験を人に伝えることを避けてきたように思います。ずっと昔から、自分の感じていること、考えていることは人にはわかってもらえないだろうと感じていたからかもしれません。しかし、連日報道される、コロナウィルスの感染、また毎年のように発生する深刻な豪雨被害を目にして、いよいよ、私たちが生きていく未来は過去の延長線上にはないのだなと痛感した時、いまこそ一旦立ち止まり、私が歩んできた人生を振り返り、その時々で私が観たこと、感じたこと、取り組んできたことを、言葉に残したいと考え始めていました。

そのような中、長年大変お世話になっているヴィーナスアソシエイションの手塚さんご夫妻のお宅を訪問して、いつものように、おいしいお食事をご馳走になっていた時、「大西さんの経験をブログに書いてみてはどうか」と勧められました。手塚さんは、これまで一貫して、自らの理念

「人は、断じて欠点だらけの無力な存在ではない。自分らしく輝いて生きるに値する充分なちからと能力を兼ね備えており、その可能性は想像をはるかに超えて大きい。」

を信じ、その理念の普及に人生をかけて取り組んでこられた本物の人です。私のような者は、手塚さんの前に出ると、いつもタジタジになってしまうのですが、この日はちょっと違いました。自分の経験を文字で残したいと考え始めていたから。早速、手塚さん「やります」とお返事したところ、ヴィーナスアソシエイツさんのH.Pに私のブログを開設していただきました。

さあ、あとは私が書き始めるだけ。では、ブログのテーマを何にするか、です。

私は、これまで約25年間、「人事」という仕事をしてきました。「人事」はやりたくてやったわけではなく、当時勤めていた会社の役員の方に、なかば無理やりやらされたものです。それを、25年もやることになってしまいました。私が考える「人事」の仕事とは、経営の重要戦略である人材に関する様々な機能を担います。教科書的な堅苦しい言葉で言えば、採用→配置・労務→育成→評価→処遇のサイクルをムリ・ムラ・ムダなくスムーズに回す知見と仕事能力が求められます。

演劇の世界に例えると、経営者がスポンサーや監督で、役者さんが従業員、人事は脚本を書いたり、舞台効果が高まるように演出したりするような仕事です。役者さんは、表現者として与えられた役割を懸命に果たそうとします。そして、脚本家や演出家は、演劇が目指すゴールに到達できるように、スポンサーや監督の意向を理解して、役者さんに良いパフォーマンスをしてもらえるように導きます。

そして、脚本家や演出家の人事は、役者さんである従業員の見えない場所で、日々、スポンサー、監督である経営者から発せられる生々しい言葉のシャワーを浴び、その期待に応えようとします。そのようなことを繰り返しながら、人事は、自分は経営者にはなれないけれど、だんだんと、理想の経営とはなにか、ということを考え始めます。目の前のリアルな経営者と、架空の経営者像を比較してギャップを冷静に分析したり、うれしくなったり、またある時は落ち込んだりします。そんな一喜一憂に疲れると感情のボリュームを弱める努力もするのですが、なかなか割り切れないことが多い。それは何故かというと、人事を拝命する人は、従業員という仲間のために役に立ちたい。その人たちがハッピーに仕事をしてもらいたいと心底願う心優しい人が多いからだと思うのです。労使の利害が対立する時、経営者は人事に経営のために働くことを求めます。しかし、人事も所詮は雇用される従業員なのです。だからこそ、会社の持続的な発展のために、経営者、従業員双方にとって最善の方法を模索しますし、非常に深い思いから発せられる訴えもします。実現が難しくても、ひたすら良い経営をしていただきたいとの祈りを深くします。

私はこれまで、国内外、上場非上場、業種が異なる19の会社で所属して異なる経営者に仕えてきました。日本は転職回数は不利な社会ですが、延べ20名の経営者の下で人事の仕事を担った私だからこそ語ることができる知見があるのではないかと思います。今振り返ると、私は常に一生懸命で、強い思いをベースに行動して来ましたので、周囲の仲間からするとその仕事ぶりはやや強引に映ったかもしれません。本来、組織人としては失格だと思います。しかし、その時々に生じた人事のテーマに真っ向勝負したからこそ、月日は流れても、その時々の経営者の選択、発した言葉、行動は今も深く、耳と瞼に刻まれています。それら、楽しかったこと、悲しかったこと、怒り、憤りなど様々な感情が蘇る思い出を「或る人事担当者の回想録」としてブログにしたためることにしました。また、その時々に取り組んだ具体的な人事施策(人事制度設計や人材開発の取り組み等)ついても、出来る限り整理して書き出したいと思います。多くの、経営者の皆さん、人事の志を一にする仲間に読んで頂けるような面白いものを書きたいと思います。

最後に、私に様々な仕事の機会と生き方の影響を与えて下さった経営者の皆さんへの感謝を込めて。

1 thought on “ブログを始めるにあたり

  1. 李建昌

    ブログの開設をおめでとうございます。
    大西さんの経験や他人の事を重んじる温かい心が、
    この場を通して世の光と地の塩として役割を果たすことを願います。

    返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)