元気と勇気と信頼の回復のために

体験学習とは? 体験学習の留意点

体験学習は、Tグループをベースにして応用した学習方法です。
 現実的に長期の研修ができない企業や組織の事情を背景に、もっと短時間で効果的な方法をという現場のニーズに応える形で、主に、Tグループにおける午後一番で実施される構造化された実習を元にしたGセッションを中心として構成しなおし実施するようになったプログラムが、体験学習へと発展していったのです。
 体験学習は、単なる知識による学習ではなく、体験を通して人の内面に触れ合う、ハートに響く学習方法でもあります。そのあり方によっては、人の人生に大きな影響を与えるような素晴らしい気づきや学びを提供することもできますが、反面、人の心に関わることでもあり、前述の歴史上の失敗もあり、その運営には、非常に慎重な姿勢と注意深さが必要であると考えております。私どもでは、南山短期大学前副学長の星野欣生先生に以前私が教えていただいた哲学をもとに、体験学習の運営上の留意点を以下のように考えております。

1.ともに学ぶ
・ファシリテーターは、権力者ではなく、学習者とともに学ぶ存在であり、学習の援助者、促進者である。
・参加メンバーの言動、気持ち、あり方は、参加メンバーが主体的に自由に決定するのであって、ファシリテーターは、その主体性と自由を尊重すべきで、決して強制したり、支配しようとしてはならない。
・主役(主体)は、参加メンバーであって、ファシリテーターではない。

2.操作しない
・気づかせたいことに向けて誘導したり、罠にかけるようなことはしない。
・作為、不自然さ、小細工などは、最終的にメンバーに伝わることが多く、共感されない。

3.評価しない 
・評価は、前提として”あるべきモデル(正解、価値)”を基準としているので、評価することは、結果的にそのモデルを相手に押し付けることにつながってしまうが、体験学習の場合は、体験を通してメンバーが自由にあり方を探求する場であるので、押し付けはすべきではない。
・期待や評価をすることは、結果的にメンバーを支配することにつながってしまい、メンバーの自分らしいあり方を探求する可能性をつぶしてしまう。
・「答や正解はファシリテーターサイドが持っている」という思い込みは、厳に慎むべきである。人間関係のことは分からないことが多く、だからこそ謙虚に体験から学ぶ必要があると言えよう。

4.個性の尊重
・メンバーの個性は最大限尊重すべきであって、決して虐待したり、粗末に扱うべきではない。
・違いは、好ましいことであって、矯正すべきものではない。
・体験学習のねらいは、個性的で自分らしい生き方を後押しすることであって、画一的な生き方や態度を教え込むことではない。