第11章 ⑨武将
武将は、人を率い、仲間を育て、組織を勝利へ導く勇者です。
戦士は、自ら戦います。
達人は、自らの技を極めます。
しかし、どれほど優れた戦士や達人であっても、一人で成し遂げられることには限界があります。
より大きな使命を果たすためには、多くの仲間と力を合わせなければなりません。
武将は、チームを作り、組織を束ねて、一丸となって未来を拓くのです。
武将は、自分が一番強ければよいとは考えません。
仲間一人ひとりの力を見抜き、それぞれが最も力を発揮できる場所へ導きます。
人を育て、人を信じ、人を生かし、組織全体を一つの生命体のように動かしていきます。
武将が目指すのは、自分一人の勝利ではありません。
仲間と共に勝利することなのです。
⑴ 光の側面
武将は、大局を見る人です。
目の前の一勝一敗ではなく、全体の流れを見ています。
目先の利益よりも、未来を考えます。
誰を育て、誰に任せ、誰を支えるべきかを見極めます。
武将は、自分が輝くことよりも、仲間が輝くことを喜びます。
仲間の成功を、自分の成功として受け止めることができます。
また武将は、責任を引き受ける人でもあります。
失敗すれば、自分の責任。
成功すれば、仲間の功績。
その姿勢が、人々の信頼を集めます。
武将の周りには、自然と優秀な人材が集まり、互いを高め合う強い組織が育っていくのです。
⑵ 影の側面
しかし武将にも影があります。
責任が重くなればなるほど、人を信じることが難しくなります。
失敗を恐れるあまり、すべてを自分で管理しようとします。
部下に任せられず、細かなことまで口を出すようになります。
やがて仲間は萎縮し、自ら考えなくなります。
また、成果への執着が強くなると、人を目的ではなく手段として見るようになります。
組織を守るためと言いながら、実は地位や権力を守っていることもあります。
さらに闇が深まると、武将は暴君へと堕ちます。
人を信頼できず、命令だけで人を動かし、恐怖によって組織を支配します。
仲間は協力者ではなく駒となり、組織は命を失ってしまいます。
⑶ 恐れるもの
武将が恐れるものは、敗北だけではありません。
仲間を失うことです。
自分の判断一つで、多くの人の人生が変わります。
だから武将は、決断する孤独を背負います。
間違えることを恐れます。
裏切られることを恐れます。
期待を裏切ることを恐れます。
その恐れが強くなりすぎると、人を信じることができなくなり、組織は次第に硬直していきます。
武将は、完全な確実性など存在しないことを受け入れ、それでも仲間を信じて決断する勇気を学ばなければなりません。
⑷ 課題
武将の課題は、勝ち続けることではありません。
仲間のために、自ら体を張ることです。
武将は、多くの部下を率い、大きな組織を動かします。
命令を下し、戦略を立て、組織を勝利へ導くこともできます。
しかし、それだけでは、人は心からついてきません。
人は、権威には従います。
しかし、愛する人のためには、自ら進んで命を懸けることができます。
真の武将は、自分の利益よりも部下を守ります。
自分の名誉よりも仲間の成長を喜びます。
そして、危険な時ほど、自ら最後尾ではなく先頭に立ちます。
部下に命を懸けることを求める前に、まず自らが部下のために命を懸ける覚悟を持つのです。
その姿を見た時、人は命令に従うのではありません。
心から信頼し、自らの意思でその人についていこうと決意するのです。
組織を支えるものは、権力ではありません。
制度でもありません。
まして恐怖でもありません。
組織を本当に支えるものは、愛です。
愛とは、甘やかすことではありません。
仲間の可能性を信じ、守り、育て、共に使命を果たそうとする覚悟です。
愛なき組織は、早晩滅亡します。一時は栄えることがあっても、決して永く栄えることはありません。仲間はもはや互いを信頼できなくなり、責任を押しつけ合い、挑戦を恐れ、やがて内側から崩れていきます。
反対に、愛ある組織は困難によって強くなります。
仲間は互いを支え合い、一人では到底成し遂げられない使命を共に実現していきます。
武将が、自らの勝利よりも仲間の命を大切にし、そのために自ら体を張ることができるようになった時、統率は支配から愛へと変わります。
その時、武将は、組織を率いる人から、人々に希望を与える存在へと成長します。
そして、武将は、自らの命を懸けて人々を守る覚悟をもった勇者への道を歩み始めるのです。