元気と勇気と信頼の回復のために

メンター養成講座を担当しました(20090710)

東京の番組制作プロダクションT社で、メンター養成講座を担当しました。
 メンターとは、語源は、古代ギリシアの盲目の吟遊詩人ホメロスの叙事詩「オデュッセイア(The Odyssey)」の中に描かれている「メントル(Mentor)」と言う賢者に由来しています。
 オデュッセイアは、イタカ島の王である英雄オデュッセウスがトロイア戦争に参加した後、エーゲ海を10年間に渡り放浪してついに故郷のイタカ島に帰還する冒険叙事詩です。物語の中で、王が、息子のテレマコスの教育を託したのが、親友メントールであり、メントールは、テレマコスの良き支援者 ・理解者・指導者となり、帝王学を身につけさせ、テレマコスの日となり陰となり、テレマコスの成長を援助することになります。
 その指導者、支援者としてのあり方が、見事であり、偉大であることにちなんで、現在では、支援者や助言者などの役割を果たす人を総括的に「メンター」と呼んでいます。

 現在の「メンター」を分かりやすく身近な例でたとえていえば、昔は、良く近所にいた、子供たちをほめたりしかったりする面倒見のよい(口うるさい?)おじさんやおばさんがいましたが、まさにそのようなおじさんやおばさんが、現代版のメンターのイメージといえるのだろうと思います。

 メンター制度は、もともとは、非行少年少女たちの支援を目的として、年長者が1対1で定期的に少年少女と合い、対話して、彼ら彼女らの生活、心理、生きかたを支援していく方法として試みられたものですが、1980年代後半以後、薬物中毒、妊娠、退学・落第、引きこもり、暴力団への関与、などの青少年問題に対応するために主にアメリカにおいて大きなムーブメントが起こり、現在では、一般的に広く民間ボランティアを中心とする広範な社会運動として取り入れられています。

 一方、企業においても、現在活躍している人たちには、メンターとして面倒を見てくれた存在が、かなり多くの割合で存在し、企業社会の中で、輝くためには、メンターの存在が欠かせないものであることが、各種の研究で明らかになってきました。
 また、新入社員などの未熟練者をいち早く戦力とするためにも、優れた教育方法が必要であり、そのためには、単に機能的なことを指導するだけではなく、キャリアを含めた総合的な支援をするほうが、最終的には、モチベーションなどの問題も含め、企業にとっても効果的であることが次第に明らかになるようになり、現在では、そのような総合的な個人の成長を支援できるメンター制度を取り入れる企業が増えてきました。

 今回のT社での研修は、こうした、後輩指導にあたるメンターを養成する講座を今回開催する運びになりました。メンバーは13名、1日という短い時間でしたが、メンバーに恵まれて、充実した場となったのではないかと感じております。講座の内容は、①メンター、メンタリングの意味と重要性を学ぶ ②メンターの役割を学ぶ ③メンタリングの基盤となる考え方、哲学を学ぶ ④メンタリングの場で使える実践ツール(ノウハウ)の使い方を学ぶ の4点です。
 1日の講座にしては、内容が盛りだくさん過ぎて、とても忙しいプログラムになってしまいました。受講されたメンバーには、せわしない思いもさせてしまったのではないかと心配しています。ただ、お伝えした内容は、とても実践的で現場での強い武器になるものばかりですので、現場でご活用いただけることを心から願っております。

 メンタリングは、本来は、自然発生的に起こることが望ましいのですが、人間関係が希薄化している現在、人為的に制度として取り入れることが大切だと思います。経費はほとんどかからずに、大きな成果を生み出す方法でもあり、今後も組織の戦略的な手法としてどんどん活用されていくと思います。組織の中に、対話を生み出し、パフォーマンスに大きなインパクトを与える方法を、弊社なりに今後とも広げていきたいと願っております。