服従の心理

 人は、理不尽なことであっても、権威の命令であれば、服従してしまい、通常では絶対に行わないような問題行動であっても実行してしまうことがあります。この傾向を、米国心理学者ミルグラムは、「服従の心理」と名づけ、取り返しのつかない失敗をしてしまう落とし穴であると警鐘を鳴らしています。

<ミルグラムの実験(1960年~1963年)>
 この実験は、人間が権威の命令にどれだけ従ってしまうかを調べるために実施されました。

 「電気ショックという体罰を与えることで、生徒の記憶力がアップするかを調べる」と言う名目のもとに、被験者は、先生役となり、生徒に電気ショックを与える役割を担当し、生徒が設問に間違えるとスイッチを入れてショックを与え、次第に電圧を上げて罰の程度を高めていかなければなりませんでした。

 生徒役はサクラであり、どんどん間違えた答を出しますので、被験者は、どんどん電気ショックの電圧を上げていかなければなりません。もちろんサクラ役である生徒は、実際には電気ショックは与えられてないのですが、苦しむ様子は、分かる仕組みになっていました。

 苦しみ方には、レヴェルがあって、120ボルトになると苦痛を訴え、150ボルトでは「ここから出してほしい」と絶叫する。300ボルトになると、壁を叩いたり、すさまじい悲鳴をあげて、330ボルトになると、もはや壁を叩かなくなり、ついに無反応になると言った反応をすることになっています。この実験では、どの程度まで命令に従って、被験者がスイッチを押すのかを試されたのです。

  ミルグラム博士は、実験を始める前に精神科の医者たちに実験の結果を予測してもらっており、その予測では、200ボルト以上の電気ショックを与える人はほとんどいないし、ましてや450ボルトに達するほど残虐な人は1,000人に一人しか存在しないと仮説のもとでこの実験がなされたのです。

 しかし、結果は、驚くべきものでした。教師役の被験者のうち、300ボルト以上の電気ショックを与えた人が40人中31人(約80%)で、450ボルトに達した人は、40人中25人と、全体の60%以上にもなったのです。 要するに、権威者からの命令であれば、80%の人が、重傷を負わせる可能性のある苦痛を他人に与えることを拒否できないという結果であり、死をも強いることを拒否できない人が60%もいたということを意味しています。

 実験に参加した人たちは普通の善良な市民だったのですが、彼らの多くは、自分の思いとは別に、権威ある教授の命令には逆らえずに、ただ命令に服従してしまったのです。

   この実験から、私たちに影響を与える権威の力は、絶大であり、それに反対の意見を表明することは、極めて困難を要することが分かります。私たち人間は、いかに洗脳されやすく、権威や権力の言いなりになってしまう可能性が高いかということがわかります。

 歴史上、不健康な精神を持った権力者のもたらした悲劇には枚挙にいとまがありません。これも、単に性格の悪いいかれた権力者だけの問題ではなく、それに安易に従ってしまった私たち市民の責任でもあるかもしれません。もしかしたら、そんな権威者にNOといえたならそんな悲惨な歴史を避けることができたのかもしれないのですから。

 安易に権威に従ってしまう傾向は、根本的には自分に対する自信のなさに起因すると思います。自分の体験を大切にして、自分が感じたことや気づいたこと、ひらめいたアイデアを信じることができるのならば、それが権威者の言うことと違っていても、自分が間違えていると思い込んでしまわずに、自分の感じ方を選ぶことができるからです。

 だからこそ、権威を他人や他の本・偶像に置くのではなく、自分の内面に置く必要があるのだと私は思います。青い鳥は遠いどこかにいるのではなく、自分の内面にこそあるのですから。

 こんな私であっても、世界中で一番頼りになる存在、世界中でたった一人の存在、永遠の宇宙の歴史の中でたった一回の存在、かけがえのない限りなく価値のある存在、そんな存在を信じて大切にすること、そんなシンプルなことが地球から悲劇を取り除くための最善の方法なのかもしれません。

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